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第五章

反撃の刃

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依舞稀の語りは、遥翔にとっても愉快である。

八神と顔を合わせながら『順調だ』とでも言うかのようにほくそ笑んだ。

対する辰巳は形勢逆転され言葉も出ない。

「つまり何が言いたいかと言うと、私はいつでも辰巳彩葉に対して訴えを起こせる立場にいるということです」

依舞稀はそう言うと辰巳の反応を待った。

「緒方っ……」

言い返すこともできず、怒りでわなわなと唇を震わせ顔を赤らめる辰巳を眺め、依舞稀は勝ちを確信した。

「ご自分の立場が大切ならば、人の粗を探す前にもっとご自分の娘の教育をされた方が賢明だと思います」

「緒方、どの立場からこの私に説教しているんだ」

最後の負け惜しみを吐く辰巳に、にっこりと微笑みながら一言返した。

「『桐ヶ谷』の人間の立場から、ですかね」

あれだけ遥翔の立場を利用したくないと思っていた依舞稀が『桐ヶ谷』の名前をするりと口にしてしまうほど、辰巳の態度はあまりにも傲慢で愚かであった。

「先ほどから『緒方』と連呼されてますが、私はもう緒方ではありませんよ?その言葉の意味、お考えください」

そうはいったものの、依舞稀には何の力も権限もない一社員だ。

だからなんだと言われてしまえば立つ手がない。

それでも依舞稀は精一杯強がって見せた。

辰巳は様々なことを天秤にかけ、考えをまとめているように見える。

強気で攻めるだけではなく、自分の非は認めた方が引き下がりやすいだろう。

そう思った依舞稀は「処分済みとは言っても、私にも落ち度があったことは認めます。申し訳ありませんでした」と一言付け加えた。
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