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第五章
反撃の刃
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何が妻だ。
自分の妻の管理もろくにできていない若造が、なにをバカなことを言っているのだろうか。
自分の娘を全く教育できていない男はそう思った。
「副社長はご存じないんでしょうが重大な問題が発生したのです。さすがに当事者である緒方さんの前で話すわけには……」
「桐ケ谷だ」
「……は?」
「緒方じゃない。桐ケ谷だ」
「……ああ、そうでしたなぁ」
辰巳はそっぽを向いて気のない返事をした。
今まで見たこともない、名前も知らないような女に対して『桐ケ谷』など呼べるはずもないだろう。
そもそも自分の娘をこの男に差し出そうと思っていたというのに。
社長が引退し、この男と自分の娘が結婚すれば、自分は事実上このホテルのトップになれる。
血も涙もない傲慢な男ではあるが、この際そんなことはどうでもいいのだ。
とにかくこのホテルで自分の地位を確立するためには、娘を差し出すのが一番手っ取り早い。
そのために娘の見た目を磨き遥翔に勧めてきたというのに。
彩葉には見向きもせずにこんな女にコロッと騙されるとは。
なんだかんだ言われていても、所詮は先の見通しの甘いガキだったのだ。
この女が自分の計画を大きく狂わせたのは気に入らないが、この件を大きくできれば逆転できるかもしれない。
娘からこの情報を聞いたときは驚いたが、このチャンスは逃せない。
「その彼女が大きな問題を起こしてるんですよ。多くの従業員が混乱しているとか」
敢えて辰巳は依舞稀を『桐ケ谷』とは呼ばず、憎たらしく口角を上げてそう言った。
自分の妻の管理もろくにできていない若造が、なにをバカなことを言っているのだろうか。
自分の娘を全く教育できていない男はそう思った。
「副社長はご存じないんでしょうが重大な問題が発生したのです。さすがに当事者である緒方さんの前で話すわけには……」
「桐ケ谷だ」
「……は?」
「緒方じゃない。桐ケ谷だ」
「……ああ、そうでしたなぁ」
辰巳はそっぽを向いて気のない返事をした。
今まで見たこともない、名前も知らないような女に対して『桐ケ谷』など呼べるはずもないだろう。
そもそも自分の娘をこの男に差し出そうと思っていたというのに。
社長が引退し、この男と自分の娘が結婚すれば、自分は事実上このホテルのトップになれる。
血も涙もない傲慢な男ではあるが、この際そんなことはどうでもいいのだ。
とにかくこのホテルで自分の地位を確立するためには、娘を差し出すのが一番手っ取り早い。
そのために娘の見た目を磨き遥翔に勧めてきたというのに。
彩葉には見向きもせずにこんな女にコロッと騙されるとは。
なんだかんだ言われていても、所詮は先の見通しの甘いガキだったのだ。
この女が自分の計画を大きく狂わせたのは気に入らないが、この件を大きくできれば逆転できるかもしれない。
娘からこの情報を聞いたときは驚いたが、このチャンスは逃せない。
「その彼女が大きな問題を起こしてるんですよ。多くの従業員が混乱しているとか」
敢えて辰巳は依舞稀を『桐ケ谷』とは呼ばず、憎たらしく口角を上げてそう言った。
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