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第一章

電撃婚

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勝手に探るような真似して、やはりマズかったんだろうか?

今さら考えても仕方のないことで頭を悩ませ始めた遥翔を横目に、八神はニヤリとほくそ笑んだ。

依舞稀に出張のことを電話で伝える、と遥翔が行った時、これは面白いと八神は思った。

だからこそ八神は遥翔にとどめを刺した。

「自分でゲットしていない番号に何の価値があるんですか?勝手に調べられるなんて、女性にとってみれば間違いなくドン引きってやつです。確実に今後、信頼関係は築けませんね」と。

今までどの女にも、邪魔になるからと理由で自分の仕事の話をすることがなかった遥翔が、自分から出張することを伝えようとしている。

それどころか、暇さえあれば依舞稀を想いスマホの画面を見つめ、何度も通話ボタンを押そうかと指を彷徨わせている。

そんなありえない光景を、少しでも自分が楽しむために。

現に遥翔は今、今までに見たことのない表情で八神を見つめている。

まるで『どうしたらいいんだ』とでも言いたいかのように。

「どういたらいいんだ!」

……言った。

八神は吹き出しそうになるのを必死に堪え、溜め息で誤魔化すように遥翔に背を向けた。

「どうもこうも。何もしなくて結構です。帰ったらまた、自分の思うように行動してください」

「それだけでいいのかよ」

「あ、一言だけ、緒方さんに聞いたらいいですよ……」

八神が発した言葉を、遥翔は疑わしそうな眼をして聞いていた。
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