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episode 1

入籍は突然に

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とんでもないハプニングがあった結婚式ではあったけれど、何とか無事に式を乗り越えた私は、幸せの象徴であるウエディングドレスを脱いで自分の服に着替えた。

さすがに式場スタッフの制服を着るわけにはいかない。

式場のフロアには、まだ蒼空側の関係者が残っているからだ。

「片づけは私達がやっておくから、由華は何も気にせずに花嫁として帰った方がいいわ」

控室で杏にそう言われ、私は申し訳なく杏と有馬さんに頭を下げた。

「今日は本当に大変申し訳ありませんでした」

自分の身勝手な振る舞いで、二人にも式場スタッフにも、多大な混乱と迷惑をかけたことは重々承知している。

「大丈夫よ。月城様の体裁を守ってあげたかったんでしょ?」

杏はそう言って微笑んでくれるけれど、有馬さんはずっと不満を隠そうともしない表情でこちらを見ていた。

「そもそも花嫁に逃げられるような態度をするからこんなことになったんだろう?体裁だかなんだか知らないが、その尻拭いをどうして菱崎がしなきゃならないんだ。本当ならば月城様がご来賓の方々に頭を下げて、式を中止するのが本当だろう?」

「それはまぁ……そうなんですが……」

「百歩、いや千歩譲って結婚式だけは認めたとしてもだ。あろうことは新郎の親の勢いに圧されて婚姻届けにまでサインしてしまうなんて、いったい自分の人生をなんだと思ってるんだっ」

有馬さんの強い言葉に、私は何一つ言葉を発することができない。

確かに誰から見ても、こんな形での偽装結婚なんて間違っていると思うから。

それは自分でも十分わかってはいるのだけれど、説明できない何かが私の中にあったのだ。
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