5 / 63
episode 1
入籍は突然に
しおりを挟む
自分の婚約者が視線で私達の関係性の説明を求めているというのに、蒼空ときたら全く吉崎様を見ていない。
なんとなく昔の面影のある表情を見せるものだから、私は心の中で溜め息をついた。
「吉崎様。月島様と私は小学校時代からの幼馴染なんですよ。ずいぶんとお会いしてなかったのですが、まさかこんなところで再会するなんて思ってもみませんでした」
どうして私が説明しなければならないんだと思いながらも、吉崎様をいつまでも怪訝な顔にさせておくわけにはいかないと、私はざっくりとした説明をした。
別に過去に何かあったわけでもないのだから、事細かに説明しなくとも問題はないだろう。
私はそう判断したのだが、吉崎様は私には目もくれず、「蒼空さん、そうなの?」と蒼空の腕に手を回しながら上目遣いに聞き返した。
「そうですよ」
蒼空はさらりと温度のない声で答える。
これが自分の婚約者に対する態度なのかと、私は少し気になった。
「蒼空さんの知り合いなら、もっといろいろアドバイス貰いましょうよ。人数もプランも、本当は私、こっちの方がいいと思うのよね」
「いえ、それだけは変更なしで。他は由香さんの好きにしてかまわないので」
「どうしてそんなに小さく纏めようとするの?一生に一度のことなんだから、盛大にしたいっていう女心、わからない?」
「ではプランは引き上げてもらってもかまいません。人数だけは最小で頼みます」
「そこを最小にしてしまったら、全然盛大にならないって言ってるの!結婚式はある意味女の戦場なのよ?これでマウンティングされることだってあるんだから」
突然始まった二人の言い合いに、私は事が落ち着くまで口を挟まないことにした。
なんとなく昔の面影のある表情を見せるものだから、私は心の中で溜め息をついた。
「吉崎様。月島様と私は小学校時代からの幼馴染なんですよ。ずいぶんとお会いしてなかったのですが、まさかこんなところで再会するなんて思ってもみませんでした」
どうして私が説明しなければならないんだと思いながらも、吉崎様をいつまでも怪訝な顔にさせておくわけにはいかないと、私はざっくりとした説明をした。
別に過去に何かあったわけでもないのだから、事細かに説明しなくとも問題はないだろう。
私はそう判断したのだが、吉崎様は私には目もくれず、「蒼空さん、そうなの?」と蒼空の腕に手を回しながら上目遣いに聞き返した。
「そうですよ」
蒼空はさらりと温度のない声で答える。
これが自分の婚約者に対する態度なのかと、私は少し気になった。
「蒼空さんの知り合いなら、もっといろいろアドバイス貰いましょうよ。人数もプランも、本当は私、こっちの方がいいと思うのよね」
「いえ、それだけは変更なしで。他は由香さんの好きにしてかまわないので」
「どうしてそんなに小さく纏めようとするの?一生に一度のことなんだから、盛大にしたいっていう女心、わからない?」
「ではプランは引き上げてもらってもかまいません。人数だけは最小で頼みます」
「そこを最小にしてしまったら、全然盛大にならないって言ってるの!結婚式はある意味女の戦場なのよ?これでマウンティングされることだってあるんだから」
突然始まった二人の言い合いに、私は事が落ち着くまで口を挟まないことにした。
0
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
自信家CEOは花嫁を略奪する
朝陽ゆりね
恋愛
「あなたとは、一夜限りの関係です」
そのはずだったのに、
そう言ったはずなのに――
私には婚約者がいて、あなたと交際することはできない。
それにあなたは特定の女とはつきあわないのでしょ?
だったら、なぜ?
お願いだからもうかまわないで――
松坂和眞は特定の相手とは交際しないと宣言し、言い寄る女と一時を愉しむ男だ。
だが、経営者としての手腕は世間に広く知られている。
璃桜はそんな和眞に憧れて入社したが、親からもらった自由な時間は3年だった。
そしてその期間が来てしまった。
半年後、親が決めた相手と結婚する。
退職する前日、和眞を誘惑する決意をし、成功するが――
極道に大切に飼われた、お姫様
真木
恋愛
珈涼は父の組のため、生粋の極道、月岡に大切に飼われるようにして暮らすことになる。憧れていた月岡に甲斐甲斐しく世話を焼かれるのも、教え込まれるように夜ごと結ばれるのも、珈涼はただ恐ろしくて殻にこもっていく。繊細で怖がりな少女と、愛情の伝え方が下手な極道の、すれ違いラブストーリー。
俺の妖精すぎるおっとり妻から離縁を求められ、戦場でも止まらなかった心臓が止まるかと思った。何を言われても別れたくはないんだが?
イセヤ レキ
恋愛
「離縁致しましょう」
私の幸せな世界は、妻の言い放ったたった一言で、凍りついたのを感じた──。
最愛の妻から離縁を突きつけられ、最終的に無事に回避することが出来た、英雄の独白。
全6話、完結済。
リクエストにお応えした作品です。
単体でも読めると思いますが、
①【私の愛しい娘が、自分は悪役令嬢だと言っております。私の呪詛を恋敵に使って断罪されるらしいのですが、同じ失敗を犯すつもりはございませんよ?】
母主人公
※ノベルアンソロジー掲載の為、アルファポリス様からは引き下げております。
②【私は、お母様の能力を使って人の恋路を邪魔する悪役令嬢のようです。けれども断罪回避を目指すので、ヒーローに近付くつもりは微塵もございませんよ?】
娘主人公
を先にお読み頂くと世界観に理解が深まるかと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる