94 / 94
第16章 楽園で微笑う乙女
93
しおりを挟む
夢で大天使ミハエルと話した翌日。
エインズワース侯爵家から、急遽、シエナがブラウローゼ公爵家に訪問したがっているという旨の先触れが届いた。宛先は、もちろんアヴェリアに向けて。
すぐに了承の意を伝えると、程なくしてシエナがやってきた。
いつもの庭園へ通され、お茶が準備されるよりも早く、彼女は口を開いた。
「アヴェリア様、私、大天使様とお話しする夢を見たのです」
緊張した表情で、シエナはアヴェリアを見た。きっとアヴェリアが関係しているのではないかと予想して来たのだろう。勘の鋭さに、アヴェリアは口角を上げた。
「どのようなお話しだったのですか?」
「ええと……まず、私が大天使ミハエル様から、祝福を受けている人間であることを教えていただきました」
自分が天使の祝福を受けている可能性は、以前アヴェリアから聞かされていた。それが、まさか大天使の祝福だと知って、戸惑いを隠せないようだった。
「しかも、アリア様が強力な悪魔に魅入られているともお聞きしました」
「ええ。堕天してしまった、元大天使だそうですわね」
「やはり、あれはただの夢ではなかったのですね」
アヴェリアも夢の内容を知ってると分かり、シエナはあの夢がただの夢ではなかったことを確信した。
「では、私がこれから、その悪魔と対峙するために……聖女となるべく修行をせよというのも、現実のことなのですね」
真剣な眼差しで、アヴェリアを見つめる。
少し前に運ばれてきたお茶を一口ふくみ、アヴェリアはカップを戻した。
「申し訳ありません。私がお願いしたのです。シエナ様の同意も得ずに進めてしまったこと、心から謝罪いたします」
「そんな! 顔を上げてください!!」
深々と頭を下げるアヴェリアに、慌ててシエナは首を横に振る。
「私は嬉しいのです。ようやく、アヴェリア様のお役に立てる……私にしかできないことなのですよね?」
預言者は、未来を知ることはできても、悪魔に直接対抗できる力は持っていない。神も、人間に万能の力を与えたわけではなかったから。
「はい。これは、シエナ様にしか頼めないことです」
顔を上げたアヴェリアは、シエナを見た。彼女の表情を見て、少しだけ目を見開く。
そこには、恨みなど一つもないような、優しい微笑みを浮かべるシエナがいた。
「よかった。いつも助けていただいてばかりの私にも、アヴェリア様のお役に立てることがあって」
「シエナ様がしようとしていることは、世界を守ることにもつながります。お願いできますか?」
「もちろんです。必ず聖女の力を習得してみせます!!」
力強い言葉に、アヴェリアは感謝を伝えた。
エインズワース侯爵家から、急遽、シエナがブラウローゼ公爵家に訪問したがっているという旨の先触れが届いた。宛先は、もちろんアヴェリアに向けて。
すぐに了承の意を伝えると、程なくしてシエナがやってきた。
いつもの庭園へ通され、お茶が準備されるよりも早く、彼女は口を開いた。
「アヴェリア様、私、大天使様とお話しする夢を見たのです」
緊張した表情で、シエナはアヴェリアを見た。きっとアヴェリアが関係しているのではないかと予想して来たのだろう。勘の鋭さに、アヴェリアは口角を上げた。
「どのようなお話しだったのですか?」
「ええと……まず、私が大天使ミハエル様から、祝福を受けている人間であることを教えていただきました」
自分が天使の祝福を受けている可能性は、以前アヴェリアから聞かされていた。それが、まさか大天使の祝福だと知って、戸惑いを隠せないようだった。
「しかも、アリア様が強力な悪魔に魅入られているともお聞きしました」
「ええ。堕天してしまった、元大天使だそうですわね」
「やはり、あれはただの夢ではなかったのですね」
アヴェリアも夢の内容を知ってると分かり、シエナはあの夢がただの夢ではなかったことを確信した。
「では、私がこれから、その悪魔と対峙するために……聖女となるべく修行をせよというのも、現実のことなのですね」
真剣な眼差しで、アヴェリアを見つめる。
少し前に運ばれてきたお茶を一口ふくみ、アヴェリアはカップを戻した。
「申し訳ありません。私がお願いしたのです。シエナ様の同意も得ずに進めてしまったこと、心から謝罪いたします」
「そんな! 顔を上げてください!!」
深々と頭を下げるアヴェリアに、慌ててシエナは首を横に振る。
「私は嬉しいのです。ようやく、アヴェリア様のお役に立てる……私にしかできないことなのですよね?」
預言者は、未来を知ることはできても、悪魔に直接対抗できる力は持っていない。神も、人間に万能の力を与えたわけではなかったから。
「はい。これは、シエナ様にしか頼めないことです」
顔を上げたアヴェリアは、シエナを見た。彼女の表情を見て、少しだけ目を見開く。
そこには、恨みなど一つもないような、優しい微笑みを浮かべるシエナがいた。
「よかった。いつも助けていただいてばかりの私にも、アヴェリア様のお役に立てることがあって」
「シエナ様がしようとしていることは、世界を守ることにもつながります。お願いできますか?」
「もちろんです。必ず聖女の力を習得してみせます!!」
力強い言葉に、アヴェリアは感謝を伝えた。
0
お気に入りに追加
32
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?
宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。
そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。
婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。
彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。
婚約者を前に彼らはどうするのだろうか?
短編になる予定です。
たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます!
【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。
ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします
天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。
側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。
それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる