ここからは私の独壇場です

桜花シキ

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第15章 学園に舞う乙女

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「あはははっ! 天使の知り合い? 勿論いるとも。でも、手を貸してくれる酔狂なやつはいないだろうな!! なにしろ私は嫌われているからね」

 自分で言っていて悲しくないのだろうか、とアヴェリアは心の中で独りごちる。

「天使も、悪魔も、人間だって、わたしはすべてを把握しているけど、それだけだ。仲良くしようなんて考えたこともない」
「そうでしょうね。いつだって、あなたは自分の興味あることでしか動きませんもの」

 預言者たちに力を貸し与え、人間たちからは崇められてこそいるが、それは慈悲によるものではない。単なる暇つぶしである。

「よく分かっているじゃないか」
「そういう存在ですもの。私だって、あなたに天使の友がいるとは思っていませんわ。ただ、紹介だけしてほしいのです。説得は私が致します」
「ふむ……まぁ、君がしようとしていることは面白そうだから、手伝ってあげようじゃないか」

 パチン、と神は指を鳴らすような仕草をした。
 すると、次の瞬間、アヴェリアの目の前に純白の羽を背に生やした青年が降り立った。
 柔らかな金髪を揺らしながらアヴェリアの前に舞い降りた青年は、深い青の瞳を不愉快そうに細めた。

「突然呼び出すとは、どういうつもりだ」

 低い声で、青年は神を問い詰める。この様子だと、許可も何も取らぬままに呼び出したのだろう。

「無礼をお許しください。私は、今代の預言者アヴェリア・ブラウローゼと申します。大天使様とお見受けいたしますが」

 纏う雰囲気が只者ではない。おそらく、高位の天使であると当たりをつけた。
 美しいカーテシーで礼をとるも、フンと鼻を鳴らされてしまう。

「貴様に名乗るつもりはない」
「彼はミハエル。シエナに祝福を授けている天使の中では、最も高位の天使さ」
「おい! 勝手なことを……」

 話す気のない男に代わり、神が勝手にペラペラと喋り始めた。ミハエルと呼ばれた天使は更に苛立つ。

「ミハエル様。今、私の身近に悪魔に魅入られた令嬢がいるのです。どうか、その魔の手から人々を守るべく、お力を貸しては頂けないでしょうか?」
「誰が、こいつのお気に入りの言うことなど聞くものか」

 心の底から神の存在を嫌っているらしく、ミハエルは頑なに断った。

「相手はルシフェルだ。君だって気になっていたくせに」
「その名を出すな!! 元はといえば、貴様が人間に力を与え、預言者なんぞを生み出したことが原因だというのに!!」

 ルシフェル。その名を聞いた途端に、ミハエルの語気はますます強まった。

「申し訳ありませんが、ルシフェルというのは?」
「アリアに憑いている悪魔の名さ。あれは並の天使が簡単に倒せるような相手じゃない」

 アヴェリアたちが話すのを聞きながら、ミハエルは拳を強く握りしめていた。
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