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第14章 学園に咲く乙女
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王立学園には、ここの生徒なら誰でも利用可能なテーブル席が、中庭にいくつも準備されている。
貴族たちの交流の場でもある王立学園では、授業以外での生徒同士の交流が非常に大切だ。卒業後の人脈がここでできることも珍しくない。
入学式直後から、中庭には多くの生徒たちが押し寄せていた。後輩たちの顔を見にきた先輩たちもいるようだ。
アヴェリア、フォリオ、パトリック、ハルサーシャ、そして誘われたシエナの5名は、運良く席を確保することに成功し、お茶会という名の話し合いを始めていた。
「まずは入学おめでとう、シエナ嬢」
パトリックに祝いの言葉をかけられ、シエナはありがとうございますと微笑む。
(シエナ様、ますます美しくなられて……殿下たちと並んでも、まったく霞まぬ姿は流石ですわ)
カップを傾けながら、どこか誇らしくアヴェリアは思う。
フォリオ、パトリック、ハルサーシャは、それぞれ方向性は違うが整った顔つきをしている。
パトリックは凛としていて、どこか人を寄せつけない雰囲気を纏うミステリアスな人物。
ハルサーシャは鍛え抜かれた健康的な身体が眩しい、太陽のような笑顔が特徴的な人物。
(フォリオ殿下は……可愛らしいお方、でしょうか。そんなことを思っては、不敬にあたるかしら?)
こうしてこのメンバーが揃うことは珍しいため、アヴェリアはついつい観察してしまう。
「そんなに情熱的に見つめられると、照れてしまうぞ。俺としては嬉しいが」
その様子をハルサーシャに気づかれ、アヴェリアはごめんなさいと美しく微笑んだ。
「うむ、ますますアヴェリア嬢は美しさに磨きがかかったな」
「ハル様にそういっていただけるとは、光栄です」
「いや、貴女の隣に座ることができる俺の方が光栄だな」
いつでも彼は、感情をストレートに伝えてくる。そばで見ていたシエナは、キラキラした瞳で二人のやりとりを見守っていた。
「フォリオ様、お二人はどういった関係なのですか?」
「えっと……」
「ハルは、アヴェリア嬢に求婚したんだよ」
「まぁ!!」
シエナの質問に言い淀んだフォリオに代わって、パトリックが答える。
小声でひそひそやり取りしているのは、アヴェリアたちにも丸分かりだ。
コホン、とひとつ咳払いをして、アヴェリアは本題に入る。
「今日、皆様に集まっていただいたのは、デイモン男爵令嬢の件です」
アヴェリアの同級生として、ファシアス王立学園に入学したアリア。昔から、フォリオによく付き纏っていた。
その目的がフォリオ自身なのか、王族の地位なのか。そこまでははっきりしていないが、成長したことで魅了する力も強まっているだろう。
天使の祝福を受けているシエナにも同席してもらって、再度3名の王子たちに念押しするつもりだった。
しかし、思わぬ来客がある。
「私も混ぜてくださぁい」
甘ったるい声で割り込んできたのは、アリア・デイモン男爵令嬢その人だった。
貴族たちの交流の場でもある王立学園では、授業以外での生徒同士の交流が非常に大切だ。卒業後の人脈がここでできることも珍しくない。
入学式直後から、中庭には多くの生徒たちが押し寄せていた。後輩たちの顔を見にきた先輩たちもいるようだ。
アヴェリア、フォリオ、パトリック、ハルサーシャ、そして誘われたシエナの5名は、運良く席を確保することに成功し、お茶会という名の話し合いを始めていた。
「まずは入学おめでとう、シエナ嬢」
パトリックに祝いの言葉をかけられ、シエナはありがとうございますと微笑む。
(シエナ様、ますます美しくなられて……殿下たちと並んでも、まったく霞まぬ姿は流石ですわ)
カップを傾けながら、どこか誇らしくアヴェリアは思う。
フォリオ、パトリック、ハルサーシャは、それぞれ方向性は違うが整った顔つきをしている。
パトリックは凛としていて、どこか人を寄せつけない雰囲気を纏うミステリアスな人物。
ハルサーシャは鍛え抜かれた健康的な身体が眩しい、太陽のような笑顔が特徴的な人物。
(フォリオ殿下は……可愛らしいお方、でしょうか。そんなことを思っては、不敬にあたるかしら?)
こうしてこのメンバーが揃うことは珍しいため、アヴェリアはついつい観察してしまう。
「そんなに情熱的に見つめられると、照れてしまうぞ。俺としては嬉しいが」
その様子をハルサーシャに気づかれ、アヴェリアはごめんなさいと美しく微笑んだ。
「うむ、ますますアヴェリア嬢は美しさに磨きがかかったな」
「ハル様にそういっていただけるとは、光栄です」
「いや、貴女の隣に座ることができる俺の方が光栄だな」
いつでも彼は、感情をストレートに伝えてくる。そばで見ていたシエナは、キラキラした瞳で二人のやりとりを見守っていた。
「フォリオ様、お二人はどういった関係なのですか?」
「えっと……」
「ハルは、アヴェリア嬢に求婚したんだよ」
「まぁ!!」
シエナの質問に言い淀んだフォリオに代わって、パトリックが答える。
小声でひそひそやり取りしているのは、アヴェリアたちにも丸分かりだ。
コホン、とひとつ咳払いをして、アヴェリアは本題に入る。
「今日、皆様に集まっていただいたのは、デイモン男爵令嬢の件です」
アヴェリアの同級生として、ファシアス王立学園に入学したアリア。昔から、フォリオによく付き纏っていた。
その目的がフォリオ自身なのか、王族の地位なのか。そこまでははっきりしていないが、成長したことで魅了する力も強まっているだろう。
天使の祝福を受けているシエナにも同席してもらって、再度3名の王子たちに念押しするつもりだった。
しかし、思わぬ来客がある。
「私も混ぜてくださぁい」
甘ったるい声で割り込んできたのは、アリア・デイモン男爵令嬢その人だった。
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