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第14章 学園に咲く乙女
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ファシアス王立学園。王国内のみならず、国外からも多くの王族や貴族が通う名門。
地位だけでなく、高いレベルの学力やその他の能力を求められるこの学園の門をくぐるためには、厳しい試験をクリアしなくてはならない。
その試験を首席で通過したのは、今代の預言者であるアヴェリア・ブラウローゼ。予言の力でずるをしたのではないかと陰で囁く者もいたが、彼女と親しい人であれば、紛れもなく彼女自身の実力であると口を揃えて答えるだろう。
次席で合格した、この国の王太子候補フォリオ・ファシアスも、心から彼女のことを尊敬していた。
(僕も努力してきたけど、まだアヴェリアには敵わないな)
悔しさもあるが、それでこそアヴェリアだと誇らしくもあった。
今日は、いよいよ入学式当日。
首席として、新入生代表挨拶を任されているアヴェリアが、名前を呼ばれて壇上に立つ。
成長したアヴェリアは、ますます美しさを増している。周囲の男子生徒のみならず、女子生徒までもを虜にし、誰もが見惚れているようだった。
(悪魔の魅了の力であっても、アヴェリアの魅力には敵わないだろうな)
学園に到着して早々に、フォリオはアリア・デイモン男爵令嬢と鉢合わせたことを思い出す。
何かと理由をつけて、一緒に会場まで行かないかとしつこかったのだが、軽くあしらってここまでやってきた。それでもまだついてこようとしていたが、シエナとアヴェリアが合流したことで、渋々引き下がったのだった。
(アリア嬢が僕に接触しようとしているのは、相変わらずのようだ。アヴェリアの忠告をしっかり聞いておかないと)
フォリオ本人のことを好いているのか、王族の地位に目が眩んでいるのか、アリアは昔からフォリオに付き纏っていた。
アヴェリアの予言の力でこれまで回避してきていたが、学園では寮に入り、これまで以上に接触する機会も多くなる。
悪魔の魅了する力は、成長と共に強くなっていくと言われている。これまで大丈夫だったから、これからも大丈夫だという保証はない。
天使の祝福を受けているシエナとなるべく一緒にいるように、というアヴェリアの忠告には素直に従っておくべきかもしれないと、フォリオは考える。
凛とした声で、アヴェリアは代表挨拶を読み上げる。
その瞬間、今まで考えていた難しいことがすっと頭の片隅に置かれ、彼女から目が離せなくなった。
(アヴェリア、必ず一緒に卒業しよう)
最初は、入学することさえ諦めていた様子だったアヴェリア。しかし、本人も困惑する中、今日という日を迎えることができた。
解決しなければならないことはたくさんあるけれど、フォリオにとって大切なことは、今も昔も変わっていない。
一途に、彼女のことを想っていた。
地位だけでなく、高いレベルの学力やその他の能力を求められるこの学園の門をくぐるためには、厳しい試験をクリアしなくてはならない。
その試験を首席で通過したのは、今代の預言者であるアヴェリア・ブラウローゼ。予言の力でずるをしたのではないかと陰で囁く者もいたが、彼女と親しい人であれば、紛れもなく彼女自身の実力であると口を揃えて答えるだろう。
次席で合格した、この国の王太子候補フォリオ・ファシアスも、心から彼女のことを尊敬していた。
(僕も努力してきたけど、まだアヴェリアには敵わないな)
悔しさもあるが、それでこそアヴェリアだと誇らしくもあった。
今日は、いよいよ入学式当日。
首席として、新入生代表挨拶を任されているアヴェリアが、名前を呼ばれて壇上に立つ。
成長したアヴェリアは、ますます美しさを増している。周囲の男子生徒のみならず、女子生徒までもを虜にし、誰もが見惚れているようだった。
(悪魔の魅了の力であっても、アヴェリアの魅力には敵わないだろうな)
学園に到着して早々に、フォリオはアリア・デイモン男爵令嬢と鉢合わせたことを思い出す。
何かと理由をつけて、一緒に会場まで行かないかとしつこかったのだが、軽くあしらってここまでやってきた。それでもまだついてこようとしていたが、シエナとアヴェリアが合流したことで、渋々引き下がったのだった。
(アリア嬢が僕に接触しようとしているのは、相変わらずのようだ。アヴェリアの忠告をしっかり聞いておかないと)
フォリオ本人のことを好いているのか、王族の地位に目が眩んでいるのか、アリアは昔からフォリオに付き纏っていた。
アヴェリアの予言の力でこれまで回避してきていたが、学園では寮に入り、これまで以上に接触する機会も多くなる。
悪魔の魅了する力は、成長と共に強くなっていくと言われている。これまで大丈夫だったから、これからも大丈夫だという保証はない。
天使の祝福を受けているシエナとなるべく一緒にいるように、というアヴェリアの忠告には素直に従っておくべきかもしれないと、フォリオは考える。
凛とした声で、アヴェリアは代表挨拶を読み上げる。
その瞬間、今まで考えていた難しいことがすっと頭の片隅に置かれ、彼女から目が離せなくなった。
(アヴェリア、必ず一緒に卒業しよう)
最初は、入学することさえ諦めていた様子だったアヴェリア。しかし、本人も困惑する中、今日という日を迎えることができた。
解決しなければならないことはたくさんあるけれど、フォリオにとって大切なことは、今も昔も変わっていない。
一途に、彼女のことを想っていた。
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