ここからは私の独壇場です

桜花シキ

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第11幕 父の面影

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 アヴェリアを預言者の代償から解放したら、自分の想いを伝えよう。そう決心したフォリオは、何度突っ返されようが、毎日のように父である国王の元を訪ねていた。
 理由はもちろん、国王のみが閲覧を許された「禁じられた書庫」に隠された内容を教えて欲しいというものだった。

 今日も軽くあしらわれ、とぼとぼ自室へ戻る。

(何か企んだところで、アヴェリアに予知されてしまえば、どうせ止められる。だったら、正面突破するしかない!)

 そもそも、コソコソと作戦を練って行動するというのは苦手だ。認めてもらえるまで何度でもお願いしに行こうと、フォリオは気合いを入れ直す。

「そんなに気合いを入れて、どうされたのですか?」
「アヴェリアを救うために、これからも頑張ろうと思って」
「あらあら」

 そこまで話して、ふと我に返る。

「……ア、アヴェリア!?」
「そうですが、どうされました?」

 面白そうに、アヴェリアは微笑む。まさかの本人が目の前にいることを認識し、一気に恥ずかしさが込み上げた。

「な、なんでここに……」
「国王陛下に神託を伝えるべく参りました」
「また王位継承のこと?」
「いいえ、今回は違います」

 一瞬身構えたが、王位継承とは異なる件でアヴェリアはやってきた。
 しかし、国の一大事ではあるようで、急いで謁見の場を設けてもらったらしい。
 そこでようやく、彼女の背後に立つ青年の姿を捉えた。何度かブラウローゼ公爵家で会っているし、フォリオにとってはかつて自分を狙って襲ってきた相手だ。

「キリー、だっけ?」
「俺なんかの名前を覚えて頂けて、恐縮です」

 言葉遣いこそ若干荒っぽさが残るものの、訓練を積まされたのか、王族への礼儀作法が身についていた。

「今回の件、彼にも同席してもらった方がよいと思い、連れてきたのです」

 キリーを連れてくる意味。それは、かつて煙霧盗賊団スモッグ・ギャングの首領であったことと関係ある。
 話の詳細は王の間ですると言われ、フォリオは迷わずアヴェリアについて行った。

「フォリオ、何度来たところで話すことはないーーと、アヴェリア嬢だったか」
「ご無沙汰しております、陛下。そこで殿下とお会いしまして。一緒に聞いて頂いても構いませんか?」

 戻ってきた息子に苦言を呈するつもりだったが、すぐ後ろからアヴェリアが現れたことで言葉を飲み込む。

「アヴェリア嬢がよいのなら、構わない。この国の未来に関わる予言をしてくれるそうだな」
「はい。その件に関して、元煙霧盗賊団スモッグ・ギャングの首領、キリーも同席させて下さいませ」

 今回の予言に関する重要人物なのだろうと、国王は許可した。
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