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第10幕 お茶会の乙女
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アヴェリアとシエナが約束を交わした数日後。
ブラウローゼ公爵家の庭園で、アヴェリアとシエナ、そこにフォリオとパトリックを加えて、お茶会が開かれていた。
理由はもちろん、今後の作戦遂行のためにも、シエナと二人の親睦を深めておく必要があるからだ。
事情を説明し終わると、フォリオは以前聞いたことがあったため、さほど驚くこともなく受け入れた。
パトリックは、悪魔に魅入られた令嬢と、天使の祝福を受けた令嬢の話に驚き、しばらく考えを巡らせているようだった。
「アリア嬢が、私たちを狙っているという根拠は?」
「デビュタントで、フォリオ殿下のことを確実に狙っておりました。かなり目立ちたがり屋のようですし、王太子候補ともなれば、接触を図ってくる可能性が高いです」
「え、僕狙われてたの?」
きょとんとした顔で、フォリオは自分を指差す。
「あれだけあからさまだったのに、気づいておられなかったのですか?」
「だって、興味がなかったし……」
デビュタントの時はアヴェリアばかりに目がいっていて、他の令嬢のことなど気にも留めていなかった。
それが功を奏して、アリアの魅了にはかからなかったようだが、フォリオの婚約者を探しているアヴェリアとしては、もう少し他の令嬢たちに興味をもってもらいたいものだ。
「とにかく、デイモン男爵令嬢には、今後お気をつけくださいませ」
二人とも、今度は力強く頷く。
「どうしてもデイモン男爵令嬢と同じ空間にいなくてはならない場では、できる限りシエナ様と一緒に行動してください」
「そんなこと、お願いしてもいいのかい?」
心配そうなパトリックの問いかけに、シエナは意気込む。
「お二人が魅了されてしまえば、ファシアス王国の未来に関わります。それに、アヴェリア様のお役に立てるのなら、いくらでも協力いたしますわ!」
フォリオとパトリックを守るというより、アヴェリアの役に立てるということの方が、彼女にとっては重要な様子だった。
知らず知らずのうちに、シエナの心を掴んでしまったのだろうと、パトリックは苦笑する。
それから、パトリックはアヴェリアに視線を移した。
シエナを自分たちに紹介したのは、アリアのことだけではないだろう。勘のいいパトリックには、シエナを自分たちの婚約者候補として考えているのだと分かった。話の各所から、シエナの素晴らしいところアピールを感じる。
事実、シエナは侯爵令嬢であり、身分は申し分ない。公爵令嬢であるアヴェリアが預言者である以上、候補として挙げられる令嬢の中では、最も高貴ともいえる。
それに加えて、天使の祝福を受けているというのが真実であれば、国のためにも守らねばならない人材だ。
本当に自分かフォリオ、どちらかの婚約者にはなる可能性が高いのではないかと、パトリックは真面目な顔になる。
預言者の代償を何とかするまでは、婚約者を定めるつもりはない。
だが、アヴェリアや国王は、使命や国のために、早く相手を見つけようとするだろう。
これは強敵を連れてきてくれたな、と頭が痛くなるのだった。
ブラウローゼ公爵家の庭園で、アヴェリアとシエナ、そこにフォリオとパトリックを加えて、お茶会が開かれていた。
理由はもちろん、今後の作戦遂行のためにも、シエナと二人の親睦を深めておく必要があるからだ。
事情を説明し終わると、フォリオは以前聞いたことがあったため、さほど驚くこともなく受け入れた。
パトリックは、悪魔に魅入られた令嬢と、天使の祝福を受けた令嬢の話に驚き、しばらく考えを巡らせているようだった。
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「デビュタントで、フォリオ殿下のことを確実に狙っておりました。かなり目立ちたがり屋のようですし、王太子候補ともなれば、接触を図ってくる可能性が高いです」
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二人とも、今度は力強く頷く。
「どうしてもデイモン男爵令嬢と同じ空間にいなくてはならない場では、できる限りシエナ様と一緒に行動してください」
「そんなこと、お願いしてもいいのかい?」
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フォリオとパトリックを守るというより、アヴェリアの役に立てるということの方が、彼女にとっては重要な様子だった。
知らず知らずのうちに、シエナの心を掴んでしまったのだろうと、パトリックは苦笑する。
それから、パトリックはアヴェリアに視線を移した。
シエナを自分たちに紹介したのは、アリアのことだけではないだろう。勘のいいパトリックには、シエナを自分たちの婚約者候補として考えているのだと分かった。話の各所から、シエナの素晴らしいところアピールを感じる。
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本当に自分かフォリオ、どちらかの婚約者にはなる可能性が高いのではないかと、パトリックは真面目な顔になる。
預言者の代償を何とかするまでは、婚約者を定めるつもりはない。
だが、アヴェリアや国王は、使命や国のために、早く相手を見つけようとするだろう。
これは強敵を連れてきてくれたな、と頭が痛くなるのだった。
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