58 / 94
第10幕 お茶会の乙女
57
しおりを挟む
アヴェリアとシエナが約束を交わした数日後。
ブラウローゼ公爵家の庭園で、アヴェリアとシエナ、そこにフォリオとパトリックを加えて、お茶会が開かれていた。
理由はもちろん、今後の作戦遂行のためにも、シエナと二人の親睦を深めておく必要があるからだ。
事情を説明し終わると、フォリオは以前聞いたことがあったため、さほど驚くこともなく受け入れた。
パトリックは、悪魔に魅入られた令嬢と、天使の祝福を受けた令嬢の話に驚き、しばらく考えを巡らせているようだった。
「アリア嬢が、私たちを狙っているという根拠は?」
「デビュタントで、フォリオ殿下のことを確実に狙っておりました。かなり目立ちたがり屋のようですし、王太子候補ともなれば、接触を図ってくる可能性が高いです」
「え、僕狙われてたの?」
きょとんとした顔で、フォリオは自分を指差す。
「あれだけあからさまだったのに、気づいておられなかったのですか?」
「だって、興味がなかったし……」
デビュタントの時はアヴェリアばかりに目がいっていて、他の令嬢のことなど気にも留めていなかった。
それが功を奏して、アリアの魅了にはかからなかったようだが、フォリオの婚約者を探しているアヴェリアとしては、もう少し他の令嬢たちに興味をもってもらいたいものだ。
「とにかく、デイモン男爵令嬢には、今後お気をつけくださいませ」
二人とも、今度は力強く頷く。
「どうしてもデイモン男爵令嬢と同じ空間にいなくてはならない場では、できる限りシエナ様と一緒に行動してください」
「そんなこと、お願いしてもいいのかい?」
心配そうなパトリックの問いかけに、シエナは意気込む。
「お二人が魅了されてしまえば、ファシアス王国の未来に関わります。それに、アヴェリア様のお役に立てるのなら、いくらでも協力いたしますわ!」
フォリオとパトリックを守るというより、アヴェリアの役に立てるということの方が、彼女にとっては重要な様子だった。
知らず知らずのうちに、シエナの心を掴んでしまったのだろうと、パトリックは苦笑する。
それから、パトリックはアヴェリアに視線を移した。
シエナを自分たちに紹介したのは、アリアのことだけではないだろう。勘のいいパトリックには、シエナを自分たちの婚約者候補として考えているのだと分かった。話の各所から、シエナの素晴らしいところアピールを感じる。
事実、シエナは侯爵令嬢であり、身分は申し分ない。公爵令嬢であるアヴェリアが預言者である以上、候補として挙げられる令嬢の中では、最も高貴ともいえる。
それに加えて、天使の祝福を受けているというのが真実であれば、国のためにも守らねばならない人材だ。
本当に自分かフォリオ、どちらかの婚約者にはなる可能性が高いのではないかと、パトリックは真面目な顔になる。
預言者の代償を何とかするまでは、婚約者を定めるつもりはない。
だが、アヴェリアや国王は、使命や国のために、早く相手を見つけようとするだろう。
これは強敵を連れてきてくれたな、と頭が痛くなるのだった。
ブラウローゼ公爵家の庭園で、アヴェリアとシエナ、そこにフォリオとパトリックを加えて、お茶会が開かれていた。
理由はもちろん、今後の作戦遂行のためにも、シエナと二人の親睦を深めておく必要があるからだ。
事情を説明し終わると、フォリオは以前聞いたことがあったため、さほど驚くこともなく受け入れた。
パトリックは、悪魔に魅入られた令嬢と、天使の祝福を受けた令嬢の話に驚き、しばらく考えを巡らせているようだった。
「アリア嬢が、私たちを狙っているという根拠は?」
「デビュタントで、フォリオ殿下のことを確実に狙っておりました。かなり目立ちたがり屋のようですし、王太子候補ともなれば、接触を図ってくる可能性が高いです」
「え、僕狙われてたの?」
きょとんとした顔で、フォリオは自分を指差す。
「あれだけあからさまだったのに、気づいておられなかったのですか?」
「だって、興味がなかったし……」
デビュタントの時はアヴェリアばかりに目がいっていて、他の令嬢のことなど気にも留めていなかった。
それが功を奏して、アリアの魅了にはかからなかったようだが、フォリオの婚約者を探しているアヴェリアとしては、もう少し他の令嬢たちに興味をもってもらいたいものだ。
「とにかく、デイモン男爵令嬢には、今後お気をつけくださいませ」
二人とも、今度は力強く頷く。
「どうしてもデイモン男爵令嬢と同じ空間にいなくてはならない場では、できる限りシエナ様と一緒に行動してください」
「そんなこと、お願いしてもいいのかい?」
心配そうなパトリックの問いかけに、シエナは意気込む。
「お二人が魅了されてしまえば、ファシアス王国の未来に関わります。それに、アヴェリア様のお役に立てるのなら、いくらでも協力いたしますわ!」
フォリオとパトリックを守るというより、アヴェリアの役に立てるということの方が、彼女にとっては重要な様子だった。
知らず知らずのうちに、シエナの心を掴んでしまったのだろうと、パトリックは苦笑する。
それから、パトリックはアヴェリアに視線を移した。
シエナを自分たちに紹介したのは、アリアのことだけではないだろう。勘のいいパトリックには、シエナを自分たちの婚約者候補として考えているのだと分かった。話の各所から、シエナの素晴らしいところアピールを感じる。
事実、シエナは侯爵令嬢であり、身分は申し分ない。公爵令嬢であるアヴェリアが預言者である以上、候補として挙げられる令嬢の中では、最も高貴ともいえる。
それに加えて、天使の祝福を受けているというのが真実であれば、国のためにも守らねばならない人材だ。
本当に自分かフォリオ、どちらかの婚約者にはなる可能性が高いのではないかと、パトリックは真面目な顔になる。
預言者の代償を何とかするまでは、婚約者を定めるつもりはない。
だが、アヴェリアや国王は、使命や国のために、早く相手を見つけようとするだろう。
これは強敵を連れてきてくれたな、と頭が痛くなるのだった。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?
宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。
そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。
婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。
彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。
婚約者を前に彼らはどうするのだろうか?
短編になる予定です。
たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます!
【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。
ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる