ここからは私の独壇場です

桜花シキ

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第4幕 悪魔に魅入られた少女と預言者の乙女

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 デビュタント参加者のリストを確認していたアヴェリアだったが、あのパーティーで全ての令嬢たちと話したわけではない。

(あの中に、フォリオ殿下の運命の相手がいたことは確かですが、実際に話してみないことには分かりませんね)

 参加者リストにひと通り目を通してから、ふぅと息を吐いた。
 名前だけを見て顔が一致する令嬢は限られているし、どのような人物かまで把握するとなると更に難しい。

「これから、色々なパーティーに参加する必要がありますわね」

 幸いなことに、公爵令嬢であるアヴェリアの元には、デビュタント以降、多くの招待状が送られて来ていた。
 中には、婚約を目論む令息たちの親からの手紙もあったが、それらのほとんどは父や兄の手によって処分されている。

 人柄を知るには、直接会って話をするのが一番だ。
 アリア嬢のように、分かりやすく人格が判断できる相手もいるが、全員が全員そうではない。
 フォリオの運命の相手ともなれば、慎重に見極めなくてはならないだろう。今後、ファシアス王国を支えていく国母となる存在だ。

(当面は、デイモン男爵令嬢の動きを観察することと、デビュタントに参加していたご令嬢たちと会って話をする機会を作ることに専念しなければですわね)

 小さなティーパーティーでもいい。パーティーなんて名前がつかないような、個人的な訪問でもいい。
 デビュタントに参加していた令嬢と会う機会がある場所ならば、なるべく足を運ぶつもりでいた。

 早速、直近で開かれる誕生日パーティーの招待に応じることに決めた。
 相手は同い年のエインズワース侯爵家の令嬢で、特に悪い噂も聞かない。直接話したことはないが、デビュタントでちらりと顔を見た。
 アヴェリアやアリアばかりが注目を集めていたが、派手さこそないものの、将来美しく成長しそうな少女であると記憶している。家柄がいいにも関わらず、謙虚であることも好感が持てた。

「エインズワース侯爵家なら大丈夫だろう。侯爵は、私の学友でね。人柄は保証する」

 父に相談すれば、いつもアヴェリアの交友関係に厳しいにも関わらず、すんなりと了承の返事をもらうことができた。そんなところからも、アヴェリアはエインズワース侯爵令嬢への期待を高めていくのだった。

 しかし、エインズワース侯爵令嬢と親睦を深めることを目的としていた誕生日パーティーで、また彼女と出会うことになる。
 もはや因縁の相手なのだろうか。
 デイモン男爵令嬢も、エインズワース侯爵令嬢のパーティーに参加していた。
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