21 / 94
第4幕 悪魔に魅入られた少女と預言者の乙女
20
しおりを挟む
悪魔に魅入られた人間というのは、数は多くないものの、どの時代にも一定数存在していた。
その力は個人によって異なり、悪魔の力を使っていることすら無自覚な人間がほとんどである。
しかし、稀に悪魔との相性がよく、強い力をもった人間が現れることがある。そうした人間は、必ず周囲の環境を引っ掻き回す。主に、精神への干渉という形で。
「アリア・デイモン男爵令嬢。彼女が、フォリオ殿下に長らく付き纏うことになる悪い虫ですわね?」
「流石はアヴェリア。こんなに早く突き止めるなんてね」
夢の中で、アヴェリアはいつものように神と対話していた。
見事言い当てた彼女に対して、神は手を叩く。
「君の言う通り、あの少女こそ悪魔に魅入られた娘。それも、とびきり強い悪魔と契約している。周りの人間に干渉する力も強いだろう」
さあ、これからどうする? と神は問いかける。
「今すぐにどうにかできる問題ではありませんわ。まだ、デイモン男爵令嬢が悪さをしたわけではありませんし」
一度会っただけの相手だが、なかなか手強そうな少女だったとアヴェリアは記憶している。
「フォリオ殿下の運命の相手が現れるまでに、デイモン男爵令嬢の情報を収集し、然るべき時に悪事を暴いてさしあげますわ」
確実にアリアがフォリオに悪影響を与えないようにするためには、慎重に動いた方がいい。
いずれ来たる断罪の時が楽しみであるように、アヴェリアはほくそ笑んだ。
しかし、アヴェリアに与えられた預言者としての使命は、悪い虫を排除することではなく、王太子フォリオの運命の相手を見つけることだ。
運命の相手よりも、アリアの方に興味が向いているアヴェリアに対して、神はひとつの助言をする。
「それとね、アヴェリア。デビュタントに参加していた少女の中に、王太子の運命の相手がいたんだよ」
そう悪戯っぽく囁く神に、驚くでもなくアヴェリアは冷静に対応する。
「誰か、と聞いても教えてはくれないのでしょう?」
「それを探すのが、君の使命だからね」
神の暇潰しに付き合ってやると決めた時から、悲しみも怒りも別に湧いてこない。
どうせ逃げられない運命ならば、思う存分この状況を楽しんでやろうと考えていた。
「ヒントをいただけただけでも十分です。必ず見つけ出して、使命を全うしてみせますわ」
「ふふ、期待しているよ」
そこで体が浮くような感覚に陥り、現実の世界へと引き戻される。
ふっ、と夢から醒めたアヴェリアは、早速デビュタントの参加者リストを確認するのだった。
その力は個人によって異なり、悪魔の力を使っていることすら無自覚な人間がほとんどである。
しかし、稀に悪魔との相性がよく、強い力をもった人間が現れることがある。そうした人間は、必ず周囲の環境を引っ掻き回す。主に、精神への干渉という形で。
「アリア・デイモン男爵令嬢。彼女が、フォリオ殿下に長らく付き纏うことになる悪い虫ですわね?」
「流石はアヴェリア。こんなに早く突き止めるなんてね」
夢の中で、アヴェリアはいつものように神と対話していた。
見事言い当てた彼女に対して、神は手を叩く。
「君の言う通り、あの少女こそ悪魔に魅入られた娘。それも、とびきり強い悪魔と契約している。周りの人間に干渉する力も強いだろう」
さあ、これからどうする? と神は問いかける。
「今すぐにどうにかできる問題ではありませんわ。まだ、デイモン男爵令嬢が悪さをしたわけではありませんし」
一度会っただけの相手だが、なかなか手強そうな少女だったとアヴェリアは記憶している。
「フォリオ殿下の運命の相手が現れるまでに、デイモン男爵令嬢の情報を収集し、然るべき時に悪事を暴いてさしあげますわ」
確実にアリアがフォリオに悪影響を与えないようにするためには、慎重に動いた方がいい。
いずれ来たる断罪の時が楽しみであるように、アヴェリアはほくそ笑んだ。
しかし、アヴェリアに与えられた預言者としての使命は、悪い虫を排除することではなく、王太子フォリオの運命の相手を見つけることだ。
運命の相手よりも、アリアの方に興味が向いているアヴェリアに対して、神はひとつの助言をする。
「それとね、アヴェリア。デビュタントに参加していた少女の中に、王太子の運命の相手がいたんだよ」
そう悪戯っぽく囁く神に、驚くでもなくアヴェリアは冷静に対応する。
「誰か、と聞いても教えてはくれないのでしょう?」
「それを探すのが、君の使命だからね」
神の暇潰しに付き合ってやると決めた時から、悲しみも怒りも別に湧いてこない。
どうせ逃げられない運命ならば、思う存分この状況を楽しんでやろうと考えていた。
「ヒントをいただけただけでも十分です。必ず見つけ出して、使命を全うしてみせますわ」
「ふふ、期待しているよ」
そこで体が浮くような感覚に陥り、現実の世界へと引き戻される。
ふっ、と夢から醒めたアヴェリアは、早速デビュタントの参加者リストを確認するのだった。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?
宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。
そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。
婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。
彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。
婚約者を前に彼らはどうするのだろうか?
短編になる予定です。
たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます!
【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。
ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる