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第4幕 悪魔に魅入られた少女と預言者の乙女
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悪魔に魅入られた人間というのは、数は多くないものの、どの時代にも一定数存在していた。
その力は個人によって異なり、悪魔の力を使っていることすら無自覚な人間がほとんどである。
しかし、稀に悪魔との相性がよく、強い力をもった人間が現れることがある。そうした人間は、必ず周囲の環境を引っ掻き回す。主に、精神への干渉という形で。
「アリア・デイモン男爵令嬢。彼女が、フォリオ殿下に長らく付き纏うことになる悪い虫ですわね?」
「流石はアヴェリア。こんなに早く突き止めるなんてね」
夢の中で、アヴェリアはいつものように神と対話していた。
見事言い当てた彼女に対して、神は手を叩く。
「君の言う通り、あの少女こそ悪魔に魅入られた娘。それも、とびきり強い悪魔と契約している。周りの人間に干渉する力も強いだろう」
さあ、これからどうする? と神は問いかける。
「今すぐにどうにかできる問題ではありませんわ。まだ、デイモン男爵令嬢が悪さをしたわけではありませんし」
一度会っただけの相手だが、なかなか手強そうな少女だったとアヴェリアは記憶している。
「フォリオ殿下の運命の相手が現れるまでに、デイモン男爵令嬢の情報を収集し、然るべき時に悪事を暴いてさしあげますわ」
確実にアリアがフォリオに悪影響を与えないようにするためには、慎重に動いた方がいい。
いずれ来たる断罪の時が楽しみであるように、アヴェリアはほくそ笑んだ。
しかし、アヴェリアに与えられた預言者としての使命は、悪い虫を排除することではなく、王太子フォリオの運命の相手を見つけることだ。
運命の相手よりも、アリアの方に興味が向いているアヴェリアに対して、神はひとつの助言をする。
「それとね、アヴェリア。デビュタントに参加していた少女の中に、王太子の運命の相手がいたんだよ」
そう悪戯っぽく囁く神に、驚くでもなくアヴェリアは冷静に対応する。
「誰か、と聞いても教えてはくれないのでしょう?」
「それを探すのが、君の使命だからね」
神の暇潰しに付き合ってやると決めた時から、悲しみも怒りも別に湧いてこない。
どうせ逃げられない運命ならば、思う存分この状況を楽しんでやろうと考えていた。
「ヒントをいただけただけでも十分です。必ず見つけ出して、使命を全うしてみせますわ」
「ふふ、期待しているよ」
そこで体が浮くような感覚に陥り、現実の世界へと引き戻される。
ふっ、と夢から醒めたアヴェリアは、早速デビュタントの参加者リストを確認するのだった。
その力は個人によって異なり、悪魔の力を使っていることすら無自覚な人間がほとんどである。
しかし、稀に悪魔との相性がよく、強い力をもった人間が現れることがある。そうした人間は、必ず周囲の環境を引っ掻き回す。主に、精神への干渉という形で。
「アリア・デイモン男爵令嬢。彼女が、フォリオ殿下に長らく付き纏うことになる悪い虫ですわね?」
「流石はアヴェリア。こんなに早く突き止めるなんてね」
夢の中で、アヴェリアはいつものように神と対話していた。
見事言い当てた彼女に対して、神は手を叩く。
「君の言う通り、あの少女こそ悪魔に魅入られた娘。それも、とびきり強い悪魔と契約している。周りの人間に干渉する力も強いだろう」
さあ、これからどうする? と神は問いかける。
「今すぐにどうにかできる問題ではありませんわ。まだ、デイモン男爵令嬢が悪さをしたわけではありませんし」
一度会っただけの相手だが、なかなか手強そうな少女だったとアヴェリアは記憶している。
「フォリオ殿下の運命の相手が現れるまでに、デイモン男爵令嬢の情報を収集し、然るべき時に悪事を暴いてさしあげますわ」
確実にアリアがフォリオに悪影響を与えないようにするためには、慎重に動いた方がいい。
いずれ来たる断罪の時が楽しみであるように、アヴェリアはほくそ笑んだ。
しかし、アヴェリアに与えられた預言者としての使命は、悪い虫を排除することではなく、王太子フォリオの運命の相手を見つけることだ。
運命の相手よりも、アリアの方に興味が向いているアヴェリアに対して、神はひとつの助言をする。
「それとね、アヴェリア。デビュタントに参加していた少女の中に、王太子の運命の相手がいたんだよ」
そう悪戯っぽく囁く神に、驚くでもなくアヴェリアは冷静に対応する。
「誰か、と聞いても教えてはくれないのでしょう?」
「それを探すのが、君の使命だからね」
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どうせ逃げられない運命ならば、思う存分この状況を楽しんでやろうと考えていた。
「ヒントをいただけただけでも十分です。必ず見つけ出して、使命を全うしてみせますわ」
「ふふ、期待しているよ」
そこで体が浮くような感覚に陥り、現実の世界へと引き戻される。
ふっ、と夢から醒めたアヴェリアは、早速デビュタントの参加者リストを確認するのだった。
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