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開幕
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「話は聞かせて頂きましたわ!!」
よく通る少女の声が響き渡り、騒ついていたパーティー会場が一瞬で静まり返る。
赤い煌びやかなドレスに身を包み、バッとタイミングよく広げた扇子で口元を隠す。
わざとらしく感じられる仕草ですら、彼女が行うと一つの演劇を見せられているような美しく洗練された動き。
そこにいるだけで華となり、数多の人間が目を向けずにはいられない。まさしくスターとしての素質を持って生まれてきたといえるだろう。
「殿下の婚約者に貴女は相応しくありません」
ピシャリ、と閉じた扇子の先には、わなわなと拳を握りしめて肩を震わせる令嬢が立っていた。
「デイモン男爵令嬢、猶予を差し上げます。自分の口で、これまで貴女がしてきた悪事を話すつもりはありませんか?」
「よ、預言者様! 預言者様だ!!」
一旦は静まり返った会場も、今度は彼女の登場により再び騒がしくなる。
アヴェリア・ブラウローゼ。
古くから続く由緒ある公爵家の令嬢にして、預言者の力を持って生まれてきた十五歳の少女。
彼女は夢で神託を受けることにより、未来の出来事を預言できる。
しかしながら、ストレートに預言をするのでは面白くない。
特に、神託の内容が悪事を暴くものであったならば。
「身に覚えがありません。どうしてそんなことを仰るのですか? まさか、私が殿下と親しくしていることに嫉妬されたのですか?」
うるっ、と目を潤ませ庇護欲をそそろうとしてくるが、アヴェリアはピクリとも表情を変えない。
助けを求めるように振り向いた先に立っている彼は、ぷるぷると肩を震わせている。
自分のために怒ってくれているのだと思った男爵令嬢は、さっとその傍に駆け寄った。
しかし、その表情を見て目を白黒させることになる。
「で、殿下?」
彼は笑っていた。とても愉快そうに。
そして、うっとりした視線をアヴェリアに向けるのだった。
「ふふ……くくくっ……やっぱり君は最高だなぁ!」
「まったく……あなたという人は、もう少し待てないのですか」
呆れたように眉間を押さえるアヴェリアだったが、まぁ、いつものことかとすぐに表情を切り替える。
「すべてお芝居ということですわ。まんまと私の掌の上で転がされていたのですよ」
今日もアヴェリア劇場は絶好調だった。
よく通る少女の声が響き渡り、騒ついていたパーティー会場が一瞬で静まり返る。
赤い煌びやかなドレスに身を包み、バッとタイミングよく広げた扇子で口元を隠す。
わざとらしく感じられる仕草ですら、彼女が行うと一つの演劇を見せられているような美しく洗練された動き。
そこにいるだけで華となり、数多の人間が目を向けずにはいられない。まさしくスターとしての素質を持って生まれてきたといえるだろう。
「殿下の婚約者に貴女は相応しくありません」
ピシャリ、と閉じた扇子の先には、わなわなと拳を握りしめて肩を震わせる令嬢が立っていた。
「デイモン男爵令嬢、猶予を差し上げます。自分の口で、これまで貴女がしてきた悪事を話すつもりはありませんか?」
「よ、預言者様! 預言者様だ!!」
一旦は静まり返った会場も、今度は彼女の登場により再び騒がしくなる。
アヴェリア・ブラウローゼ。
古くから続く由緒ある公爵家の令嬢にして、預言者の力を持って生まれてきた十五歳の少女。
彼女は夢で神託を受けることにより、未来の出来事を預言できる。
しかしながら、ストレートに預言をするのでは面白くない。
特に、神託の内容が悪事を暴くものであったならば。
「身に覚えがありません。どうしてそんなことを仰るのですか? まさか、私が殿下と親しくしていることに嫉妬されたのですか?」
うるっ、と目を潤ませ庇護欲をそそろうとしてくるが、アヴェリアはピクリとも表情を変えない。
助けを求めるように振り向いた先に立っている彼は、ぷるぷると肩を震わせている。
自分のために怒ってくれているのだと思った男爵令嬢は、さっとその傍に駆け寄った。
しかし、その表情を見て目を白黒させることになる。
「で、殿下?」
彼は笑っていた。とても愉快そうに。
そして、うっとりした視線をアヴェリアに向けるのだった。
「ふふ……くくくっ……やっぱり君は最高だなぁ!」
「まったく……あなたという人は、もう少し待てないのですか」
呆れたように眉間を押さえるアヴェリアだったが、まぁ、いつものことかとすぐに表情を切り替える。
「すべてお芝居ということですわ。まんまと私の掌の上で転がされていたのですよ」
今日もアヴェリア劇場は絶好調だった。
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