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第6章 宮廷魔導士編
37 覚悟(エル視点)
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宮廷騎士。
推薦を頂いて、私はその夢を叶えた。あの後、試験を受けて合格したアルランデ様とは同期だ。
これで、ルナシアさんのそばで戦うことができる。そう意気込んでいた矢先。
(魔人の出現……想定よりだいぶ早い)
しかも、ルナシアさんが宮廷魔導士に就任した直後とは。幸先が悪い。
(ギャロッドが、またよからぬことを考えていないか心配ですね)
魔人の出現もさることながら、かつてルナシアさんのことを魔王呼ばわりした男だ。
そう考えていると、いてもたってもいられなくなった。
「あれ、エルさん、そんな怖い顔をして一体どこに……」
「ちょっとルナシアさんのところへ」
「宮廷魔導士の方々は、緊急招集がかかっていたはずですから、休み時間まで待ったらいかがですか?」
アルランデ様に諭され、少し気持ちが落ち着く。
「それもそうですね……ふう」
「そんなに取り乱して、どうされたんですか?」
「魔人の話は聞きましたよね? 宮廷魔導士の方々が招集されたのも、その作戦会議だと思います」
「なるほど。ルナシアさんのことが心配なんですね」
がっしりした体格に似合わず、ほんわりした表情に思わず力が抜けてしまう。アルランデ様は、ギャロッドがかつてしてきた行いを知らないから、私が心配していることは魔人の他にもあるのだということまでは知らないはずだ。
……せっかくなら、仲間は多い方がいい。ギャロッドがルナシアさんに、また何かしようと目論んでいるのなら、目撃者が複数いるに越したことはないだろう。
「アルランデ様、ちょっと休憩時間に付き合っていただけませんか?」
◇◇◇◇
「えっと……ついて来たのはいいのですが、これは些か気が引けるというか……」
今、私とアルランデ様はテラスが見える茂みに隠れて様子を窺っている。ルナシアさんは、ひとりで難しい顔をしていた。ああ、きっと色々な不安を抱えているに違いない……。双眼鏡で様子を見ながら、今すぐにでも飛び出して声をかけたい衝動に駆られる。
しかし、我慢だ。ギャロッドに怪しい動きがないか確かめにきたのだから。
「しっ、お静かに。ほら、誰か来ました」
隣でもごもごしているアルランデ様を黙らせ、じっと観察する。
(やはりギャロッド、貴様!!)
ルナシアさんの元に現れたのは、憎きギャロッド・ノア・ランドロフ。今度は何を仕出かす気だ。
いつでも飛び出せるように構え、様子を窺う。
「ちょっと、エルさん!? どうして殺気立ってるんですか?」
怯えるアルランデ様を無視して、私はギャロッドの一挙一動を見逃すまいと目を見開く。
しかし、一向に何も起こらない。
何やら少し言葉を交わしてから、ギャロッドは去って行った。その後を追うように戻って行ったルナシアさんの表情も……なぜか安堵していたように見えた。
「えっと……そろそろ休憩時間も終わりますし、僕たちも戻りましょうか?」
「ええ……そうしましょうか。付き合っていただいて、ありがとうございました」
「何がしたかったのか、いまいち分からなかったのですが、解決しましたか?」
「まだ、なんとも。ただ、今日のところはこの辺で引き上げることにします。アルランデ様、可能であればギャロッドの様子をそれとなく観察しておいてください。怪しい動きがあれば、すぐに知らせてください」
その言葉に、はっとアルランデ様は目を見開く。
「もしや、何か重要な任務が……?」
「ええ、とても重要なことです」
少し考えてから、アルランデ様は目を輝かせて力強く返事をした。
「任せてください! その重要なミッション、僕もお手伝いさせて頂きます!!」
「心強いです。よろしくお願いしますね」
(流石エルさん……宮廷騎士になってまだ日が浅いのに、きっととても重要な任務を任されているんだ。そのお手伝いができるなんて、なんて光栄なことなんだろう)
なぜかとてもキラキラした目を向けられて困惑するが、仲間が増えたのはいいことだ。
ルナシアさん、今度はギャロッドなんぞに負けませんのでご安心を。あなたの平穏はお守りいたします!!
推薦を頂いて、私はその夢を叶えた。あの後、試験を受けて合格したアルランデ様とは同期だ。
これで、ルナシアさんのそばで戦うことができる。そう意気込んでいた矢先。
(魔人の出現……想定よりだいぶ早い)
しかも、ルナシアさんが宮廷魔導士に就任した直後とは。幸先が悪い。
(ギャロッドが、またよからぬことを考えていないか心配ですね)
魔人の出現もさることながら、かつてルナシアさんのことを魔王呼ばわりした男だ。
そう考えていると、いてもたってもいられなくなった。
「あれ、エルさん、そんな怖い顔をして一体どこに……」
「ちょっとルナシアさんのところへ」
「宮廷魔導士の方々は、緊急招集がかかっていたはずですから、休み時間まで待ったらいかがですか?」
アルランデ様に諭され、少し気持ちが落ち着く。
「それもそうですね……ふう」
「そんなに取り乱して、どうされたんですか?」
「魔人の話は聞きましたよね? 宮廷魔導士の方々が招集されたのも、その作戦会議だと思います」
「なるほど。ルナシアさんのことが心配なんですね」
がっしりした体格に似合わず、ほんわりした表情に思わず力が抜けてしまう。アルランデ様は、ギャロッドがかつてしてきた行いを知らないから、私が心配していることは魔人の他にもあるのだということまでは知らないはずだ。
……せっかくなら、仲間は多い方がいい。ギャロッドがルナシアさんに、また何かしようと目論んでいるのなら、目撃者が複数いるに越したことはないだろう。
「アルランデ様、ちょっと休憩時間に付き合っていただけませんか?」
◇◇◇◇
「えっと……ついて来たのはいいのですが、これは些か気が引けるというか……」
今、私とアルランデ様はテラスが見える茂みに隠れて様子を窺っている。ルナシアさんは、ひとりで難しい顔をしていた。ああ、きっと色々な不安を抱えているに違いない……。双眼鏡で様子を見ながら、今すぐにでも飛び出して声をかけたい衝動に駆られる。
しかし、我慢だ。ギャロッドに怪しい動きがないか確かめにきたのだから。
「しっ、お静かに。ほら、誰か来ました」
隣でもごもごしているアルランデ様を黙らせ、じっと観察する。
(やはりギャロッド、貴様!!)
ルナシアさんの元に現れたのは、憎きギャロッド・ノア・ランドロフ。今度は何を仕出かす気だ。
いつでも飛び出せるように構え、様子を窺う。
「ちょっと、エルさん!? どうして殺気立ってるんですか?」
怯えるアルランデ様を無視して、私はギャロッドの一挙一動を見逃すまいと目を見開く。
しかし、一向に何も起こらない。
何やら少し言葉を交わしてから、ギャロッドは去って行った。その後を追うように戻って行ったルナシアさんの表情も……なぜか安堵していたように見えた。
「えっと……そろそろ休憩時間も終わりますし、僕たちも戻りましょうか?」
「ええ……そうしましょうか。付き合っていただいて、ありがとうございました」
「何がしたかったのか、いまいち分からなかったのですが、解決しましたか?」
「まだ、なんとも。ただ、今日のところはこの辺で引き上げることにします。アルランデ様、可能であればギャロッドの様子をそれとなく観察しておいてください。怪しい動きがあれば、すぐに知らせてください」
その言葉に、はっとアルランデ様は目を見開く。
「もしや、何か重要な任務が……?」
「ええ、とても重要なことです」
少し考えてから、アルランデ様は目を輝かせて力強く返事をした。
「任せてください! その重要なミッション、僕もお手伝いさせて頂きます!!」
「心強いです。よろしくお願いしますね」
(流石エルさん……宮廷騎士になってまだ日が浅いのに、きっととても重要な任務を任されているんだ。そのお手伝いができるなんて、なんて光栄なことなんだろう)
なぜかとてもキラキラした目を向けられて困惑するが、仲間が増えたのはいいことだ。
ルナシアさん、今度はギャロッドなんぞに負けませんのでご安心を。あなたの平穏はお守りいたします!!
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