神に愛された宮廷魔導士

桜花シキ

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第5章 学園編(四年生)

35 卒業パーティー3

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「あっ、ルナ、お兄ちゃん!」
「姉上、はしゃぎすぎると転んでしまいますよ」
「もう、ハインは私のこと子ども扱いしすぎだよ~」

 エルたちの後からやってきたのは、グレース様と、そのエスコートをする弟のハイン様だった。
 仲良さそうに言葉を交わしつつ、私たちの前にやってくる。
 二人とも、今日はベージュに金の縁取りがされた衣装に身を包んでいる。エルメラド王家の象徴であるエメラルドグリーンはワンポイント程度に抑えられているようだ。私やグランディール様と被らないように、という王家側の配慮を感じる。

「お兄ちゃん、ルナ、本当におめでとう! ルナと姉妹になれるのが嬉しいよ~」

 真っ先にグレース様からは、そんな言葉をかけられた。

「先輩のエスコートをする機会が、もうなさそうなのが残念です。どうですか、今からでも?」
「ハイン」
「ははは、冗談ですよ、兄上」

 グランディール様とハイン様の間で、見えない火花が散った気がした。

「僕も、姉上とお呼びしないといけませんかね。ふふっ、まだ気が早いか」

 私が結婚したら、この二人とも、妹弟きょうだいになるのか。流石に気は早いけれど。

「お二人と妹弟きょうだいになれたら、私も嬉しいです」
「今日、正式に婚約発表だもんね。頑張って!」

 小声でグレース様からエールを送られる。そう言われると、忘れていた緊張が蘇る。
 そんな私の肩に、ポンと手が乗せられた。温かさが伝わってくる。見上げれば、グランディール様が微笑んでいた。

「大丈夫だ。私がそばにいる」

 その言葉に、緊張がほぐれていく。彼と一緒であれば、大丈夫。不思議とそう思えた。

「あ~、もうお腹いっぱいです。姉上、席に移動しましょう」
「えー、もう少し話しててもいいじゃない」
「それは後でごゆっくり。さ、行きましょう」

 半ば強引に連れていかれるようにして、グレース様はハイン様と一緒に自分の席へ移動していった。
 まだパーティーの料理は出てきていないのに、お腹いっぱいとは、はて?

「私たちも、そろそろ移動するとしよう。ルナシア、君は卒業生代表挨拶もあったな」

 グランディール様の言葉に頷く。
 光栄なことに、卒業生を代表して挨拶を述べることになっている。とはいえ、ある程度形式は決まっているので、それに沿って話せば良いだけなのだけれど。
 以前もやったことだが、今回はその後に婚約発表も控えている。心境は少し変わっていた。

「もう、卒業なのですね」
「ああ、長いようで、あっという間だった」

 卒業。それは、魔王が現れるまでのカウントダウンが始まったことを意味する。
 二度目の卒業式。私の隣には、グランディール様がいる。
 この先の未来がどうなるのかは、誰にも分からない。それでも、ここまでの選択に後悔はなかった。
 グランディール様と顔を見合わせる。
 この先、どんな未来が待ち受けているとしても、その時に最善だと言える選択をしよう。

「私たちも、行こうか」

 差し出された手をとり、歩き出した。
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