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エピローグ
神に愛された宮廷魔導士
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「ご当主、どこに行っちゃったんでしょうねぇ」
「今はイディオがファブラス伯爵家のご当主だよ」
「そうでしたね。お嬢様改め、この国の未来の王妃様」
魔王を倒して少しは落ち着きを取り戻すかと思いきや、目まぐるしく環境は変わっていった。
お養父様が姿を消したことでイディオが正式にファブラス伯爵家の当主になった。
私も、先延ばしにしていた妃教育が始まり、忙しい日々を送っている。
第一王妃シェリル様と、第二王妃レーナ様が手取り足取り教えてくださっているので、遅れを取り戻すには十分だった。
たまに、二人が何やらバチバチ火花を散らしていることもあるが、それは本当に稀なこと。世間の噂とは裏腹に、仲のよいお二人に見えた。
結婚式の日取りも、そろそろ決めなくてはならない。
私が正式に王太子妃となったとしても、宮廷魔導士として仕事は続けていけることになっている。
魔獣たちは、魔王が倒されてからぱったり姿をみせなくなった。
宮廷魔導士たちの在り方も、魔獣討伐に捧げてきた今までと違い、これから変わっていくだろう。
大魔導士ヴァン様の跡を継ぐ……と、大それたことは言わないけれど、これからのエルメラド王国のために私が貢献できることといったら、やはり魔法に関することしか思い浮かばなかった。
今日は、王妃教育の合間を縫って、ファブラス伯爵家に里帰りしてきていた。
今も昔も、変わらず私を歓迎してくれる場所。
二度目の人生は、ここから大きく変わった。それは、お養父様との出会いなくして語ることはできないだろう。
「お養父様のことだから、きっと大丈夫だよ」
「それは否定しませんけどねぇ」
お養父様の本来の姿は、きっと人間とは異なるものだ。その存在を理解しようとしても難しい、私たちが神と呼ぶような何か。
今頃どうしているのかは分からないけど、お養父様なら大丈夫だという確信があった。
一緒にいることはできなくても、どこからか見守っていてくれると信じて。
私は宮廷魔導士として、そしてグランディール様の伴侶として、この国を守っていく。二度目の世界でようやく、止まってしまっていたあの日の先へ進むことができる。
一度は魔王によって破壊された世界。時間を巻き戻したのは、お養父様だった。
私を養子に迎えたのは、どういう思いがあってのことだったのだろうか。今になって考えてみても、その答えを確かめる術はない。
私には実の両親がいるし、距離感としては父子のそれとは違ったかもしれない。でも、一緒に過ごした約十五年の月日は、大切な思い出として胸に残っている。
謎の多い人だったし、何を考えているのかも分からないことが多かった。
だけど、私はお養父様に愛されていた。それだけは確かだったと、そう思えるのだ。
「今はイディオがファブラス伯爵家のご当主だよ」
「そうでしたね。お嬢様改め、この国の未来の王妃様」
魔王を倒して少しは落ち着きを取り戻すかと思いきや、目まぐるしく環境は変わっていった。
お養父様が姿を消したことでイディオが正式にファブラス伯爵家の当主になった。
私も、先延ばしにしていた妃教育が始まり、忙しい日々を送っている。
第一王妃シェリル様と、第二王妃レーナ様が手取り足取り教えてくださっているので、遅れを取り戻すには十分だった。
たまに、二人が何やらバチバチ火花を散らしていることもあるが、それは本当に稀なこと。世間の噂とは裏腹に、仲のよいお二人に見えた。
結婚式の日取りも、そろそろ決めなくてはならない。
私が正式に王太子妃となったとしても、宮廷魔導士として仕事は続けていけることになっている。
魔獣たちは、魔王が倒されてからぱったり姿をみせなくなった。
宮廷魔導士たちの在り方も、魔獣討伐に捧げてきた今までと違い、これから変わっていくだろう。
大魔導士ヴァン様の跡を継ぐ……と、大それたことは言わないけれど、これからのエルメラド王国のために私が貢献できることといったら、やはり魔法に関することしか思い浮かばなかった。
今日は、王妃教育の合間を縫って、ファブラス伯爵家に里帰りしてきていた。
今も昔も、変わらず私を歓迎してくれる場所。
二度目の人生は、ここから大きく変わった。それは、お養父様との出会いなくして語ることはできないだろう。
「お養父様のことだから、きっと大丈夫だよ」
「それは否定しませんけどねぇ」
お養父様の本来の姿は、きっと人間とは異なるものだ。その存在を理解しようとしても難しい、私たちが神と呼ぶような何か。
今頃どうしているのかは分からないけど、お養父様なら大丈夫だという確信があった。
一緒にいることはできなくても、どこからか見守っていてくれると信じて。
私は宮廷魔導士として、そしてグランディール様の伴侶として、この国を守っていく。二度目の世界でようやく、止まってしまっていたあの日の先へ進むことができる。
一度は魔王によって破壊された世界。時間を巻き戻したのは、お養父様だった。
私を養子に迎えたのは、どういう思いがあってのことだったのだろうか。今になって考えてみても、その答えを確かめる術はない。
私には実の両親がいるし、距離感としては父子のそれとは違ったかもしれない。でも、一緒に過ごした約十五年の月日は、大切な思い出として胸に残っている。
謎の多い人だったし、何を考えているのかも分からないことが多かった。
だけど、私はお養父様に愛されていた。それだけは確かだったと、そう思えるのだ。
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