14 / 72
3
12.花言葉
しおりを挟むお風呂も済ませて今日の日記を書く……。ん?なーんか今日忘れてる気がするぞ。なんだっけな……光くんに何か話そうと思ったような気がする。まぁ忘れるくらいだから、大したことはないだろう。日記を書き進めようとペンを持った瞬間に、ノックの音がする。これは、光くんだな。
「はーい。……やっぱり光くんだ!」
「ノックの音でわかるんか?すごいなぁ」
まぁねと得意げに返事をすれば、部屋の中に招き入れる。
「夜分にごめんなぁ、渡したいものがあって……」
光くんは紳士だなぁと思う。お風呂を上がって部屋に戻ったら、そんなに夜遅くなくても、夜分にと必ず謝る。お育ちがいいのだろうか。
それより……何をくれるんだろう!光くんは部屋に入ってきた時から、左手を後ろに回して何かを隠している。美味しいものか!
「これ……」
差し出されたのは1枚の紙だ。よく見ると綺麗な青い色で薔薇が描いてある。
「綺麗……。」
「この前のお礼。なかなか描く時間無くて、遅くなってごめんなぁ。気に入ってくれると嬉しいわ」
街にお出かけした時に、絵のプレゼントをしてくれると光くんは言っていた。お互い忙しいし自由時間はあるけれど、他にもやりたいこともたくさんあるだろうに……貴重な時間をこの絵の為に使ってくれたんだと思うと胸が熱くなる。
「すごく綺麗!ありがとう!青い薔薇ってなかなか無い発想だね、初めて見た」
「……柚子ちゃん、青薔薇の花言葉って知っとる?」
青薔薇の花言葉?存在しない花に花言葉なんてあるのだろうか……。少し考えるけど思い浮かばないでいると、光くんは言葉を紡いだ。
「青薔薇って絶対咲くことはないって言われてん。せやから花言葉は[不可能]。……でもちょっと前に別の大陸で青薔薇が発見されて花言葉が変わったんよ」
「何に変わったの?」
「何個かあるみたいやけど、[夢叶う][賞賛]っていう意味になったそうや」
へぇ、なんて返事をしてもう一度絵を見る。夢の叶う花か……。
「いつか見てみたいなぁ」
「……柚子ちゃん、花に興味あるん?食べ物にしか興味ないんかと……」
「失礼な!柚子だって、食べ物じゃないものに興味だって……あったり、なかったりするんだ!」
「そかそか、それはごめんな」
なんて光くんは笑っている。食べ物以外に興味のない女子だ、と思われたことがちょっと恥ずかしい。
夜分にごめんな、と光くんが退出すると部屋が急に静かになった。やっぱりお話すると楽しい人だなぁ……、豊富な話題に人懐っこい笑顔、端々に現れる気遣い、このお屋敷にはなかなかいない貴重な人材だ。大事にしないとな。
王歴235年6月18日
光くんから青い薔薇の絵を貰った。
青薔薇の花言葉は、「不可能」から「夢叶う」になったらしい。知らなかった!
いつか本物を見てみたいなぁ。絵はベッドの横に飾ることにした。いい感じ!
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢は反省しない!
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。
性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
拝啓、大切なあなたへ
茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。
差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。
そこには、衝撃的な事実が書かれていて───
手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。
これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。
※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる