恋恣イ

金沢 ラムネ

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四月五日

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「ほんと、昨日は死ぬかと思ったのよ・・・」
 げっそりとした祭が出会い頭から捲し立ててきた。
「聞いてよ!昨日ふらふらになりながら学校行ったら授業中に寝るんじゃない!って怒られて、黒板で問題解かされるは、部活もサボろうと思ってたのに校門の前で顧問に捕まって、たるんでる!なんて言ってめちゃくちゃな練習させるのよ!いや確かに万全の状態なら余裕のよっちゃんだけど、昨日はほんとにしんどかったのよ―――!!」
 私には自業自得のようにも聞こえてしまったが、昨日は学校を休んでしまった挙句、一日中寝ていた自分には何も言う権利はないと考え、どうにか慰めようと思った時だった。
「いや、自業自得でしょ」
 思わず心の声が出てしまったのかと焦ったが、振り向けば真水がいた。
「はぁ~~~?何が自業自得なんですか~~?というか私は華火に話してたんであって、真水に話したわけじゃないんですけどぉ~~~?」
「そんだけでかい声で話してればこのクラス中の人に聞こえるんですぅ~~!自分の恥を自分で大発表会してるからわざわざツッコんであげたんでしょ~~~?むしろ感謝してもらって良いかしらぁ~~??」
「意味がわかりませ~ん!どぉぉして感謝しないといけないんですか~~?わざわざ自分から話に割って入り込むなんて、かまってちゃんなのぉ~~??友達いないんですかぁぁ~~??」
「自分で自分の恥が理解出来ないなんてかわいそぉ~!無知ってことも自覚出来てないのかしら~~?昨日あんなに私にベタベタしてきたのは、どちらの祭さんでしたっけぇ?一人じゃ教室移動も出来ない赤ちゃんだったから覚えてないでちゅかねぇ?あ、もしかして数少ない友達を私に取られるんじゃないかって焦ってるんですかぁ~~?健気デスネ~~」
 ガンを飛ばすとはこういうことか、と私は二人を観察していた。だがふと気づき、華火は二人の間に入る。
「二人とも落ち着いて。今すごい注目の的になっちゃってる」
 二人は周りを見回すとクスクスと笑い声や動画を取っている者までいた。
「「なぁぁに見てん(の)じゃ~~!!」」
 二人の息の合った言葉にクラス中が笑っていた。華火にとってこういった日常は無性に新鮮で、眩しく、温かく感じた。

 授業は進み、お昼休みとなった。華火、祭、真水の三人で昼食を食べていた。
「そういえば昨日お休みだったけど、もう大丈夫なの?」
「うん、昨日一日寝たら良くなったからもう大丈夫だよ」
 真水には函嶺との契約もあり、一昨日のことを正直に話すことも出来ず、ごまかしながら風邪を引いたと偽った。そのためか真水は風邪を引いたときに食べると良い物だったり、日常的に取り入れた方がいい健康運動の仕方などを教えてくれた。お風呂も体調がちゃんと戻るまではシャワーが良いとか。華火は風邪を引いていたわけではないのだが、ありがたくアドバイスを聞いていた。
「そんなことよりどうして、今日も、真水が、一緒なの・・・」
 祭はしびれを切らしたように口を開いた。
「・・・みんなでご飯食べたほうが美味しいかなって」
 少しご機嫌を伺うように祭を見る。
「いや、良くないとかじゃないけど・・・」
「そうそう、華火ちゃんが誘ってくれたんだから祭は文句言わない。みんなでご飯食べましょう。ま、祭は華火ちゃんを独占できなくて残念って、顔に書いてあるけどね~」
「違うし!真水うっさい!」
 祭は真水にいじられて少し顔が赤くなっていた。
「やっぱり二人が揃うと賑やかで楽しい」
 二人とは対照的に華火はニコニコしていた。

「そういえば華火ちゃん、忍冬さん今日もお休みみたいよ」
 忍冬さん。忍冬矜、千歳華火の幼馴染である女の子。
「そうなんだ。でも入院してるんだよね。いつ頃から学校に来れるようになるんだろうね・・・」
 華火は曖昧な言葉を繋ぐ。
「忍冬さんって、忍冬矜さん?美人だよなぁ。え、てか入院してるの?」
 どうやら祭も忍冬矜と面識があるらしい。同じ学校、同じ学年なのだから当然なのかもしれないが。
「そうよ。昨日話したじゃない・・・ってそうか、祭は私が渡した情報に意識がいってたか」
「あぁ、あれだろ?華火に少し聞いたよ、眠り姫の噂のことでしょ?それと忍冬さんと何が関係してんの?」
 真水は先日華火に伝えた内容を話しつつ、新たな情報を加えてくれた。
「忍冬さんはどうやらここから三駅ほど離れた総合病院に入院してるそうよ。部屋までは分からなかったけど、お見舞いに行けば入れてくれると思うわ。何故眠り姫の噂が立ったのかは調査中だけど、彼女が意識不明なのは間違いないみたい」
「意識不明・・・。どうやって調べたの?」
「内緒よ」
 真水はウインクをする。
「真水ちゃんかっこいい」
「昔からこいつは秘密主義なのよ」
 どこか諦めたかのような顔を祭はしていた。

「華火ちゃん、今日空いてない?一緒に忍冬さんのお見舞いに行きましょう?」
「え、お見舞い?」
「そう。これ以上は実地調査よ。それに何かあった時は幼馴染の華火ちゃんがいてくれれば私も安心だしね」
 これが最善よ!と言わんばかりの顔である。
「華火?」
 急に黙ってしまった華火を心配してか、祭が声をかける。
「ごめん、私気に障ること言っちゃったかしら?」
 真水までも申し訳なさそうな顔をしていた。
「ううん、大丈夫。お見舞い、行こうか」
 私はどこかずっと不安だった。
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