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第Ⅲ章
第44話 神在月の出雲へ
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結局、予定の日を過ぎても清人たちは帰って来なかった。
13課組対室を空けたまま、直桜たちは出雲へ向かう運びとなった。
「大変なことになってそうだけど、俺たちも行っちゃって大丈夫なのかな」
不安を口走りながら、直桜は護と共に自分の部屋にいた。
「神倉さんからは行って来いとの指示ですし、行かない訳にもいきませんね」
護が苦笑交じりに応える。
直桜は机の引き出しに保管していた勾玉を取り出した。
「時期になると毎年これが届くんだ。いつの間にか目の届く範囲に置いてある感じなんだけどね。通行手形みたいな感じ」
麻の紐に通った大きな勾玉を、護がまじまじと見詰めた。
「これを持って部屋の扉を開くと着くよ。帰りも同じ扉に戻るから、変なとこから行くと大変なんだよね」
「あっさり行けちゃうんですね」
護が感心したように呟く。
「まぁ、そうなんだけど……」
直桜はじっとりとした視線を護に向けた。
護が訳の分からない顔で狼狽える。
「神様って、フランクな感じで話し掛けてくるしスキンシップも多めだから、気を付けて。というか、気にしないで。例えば俺がめっちゃ絡まれても、この前みたいに他の神様にキスしたりしないで」
ごにょごにょと口の中で話したようになってしまった。
ぱちくり、と瞬きをして、護が納得の顔をした。
「もしかして、この前、保輔君にしたこと、気にしてますか?」
「気にしてるよ。俺のはあくまで術だけど、護のは違うだろ。しなくても良かったわけだしさ」
どんな理由があろうと目の前で護が他の相手とキスしている姿を見るのは気分が悪い。幼稚じみた嫉妬だとも思うが、アレは護が悪いと思う。
「あの後、保輔君の感触が消えるくらい直桜にもいっぱいキスしましたが、足りませんでしたか?」
護の手が直桜の顔を包み込む。
近付いた顔が妖艶に笑んだ。
「そういう問題じゃない。他の人にはしないで俺にだけ沢山、キスしてほしい」
護の唇が直桜に吸い付く。
「いけませんね。叱られているのに、直桜が嫉妬してくれるのが嬉しくて、顔がにやけてしまいます」
「反省してないね? 連れて行かないよ?」
「それは困ります。神倉さんにも叱られてしまいますし、何より直桜が他の神様に絡まれて一方的にキスされるのを止められません」
「今更、それはないけどさ」
話しながらも護は直桜の唇に吸い付いている。
最近の護は直桜が本気で嫉妬すると喜んでしまうから、どうしたものかと思う。
「大丈夫、ちゃんとわかっていますよ。直桜が嫌がることはしません。惟神の直桜を守るのが眷族の私の役目ですから」
直桜の体をぎゅっと抱き締めて、愛おしそうに耳元で囁く。
その声が嬉しくて、許す気になってしまう。
「信じるからね」
護の顔を覗く。
「はい、直桜の期待を裏切ったりしませんよ」
護がとても嬉しそうに頷いた。
再度、手の中の勾玉を確認して、部屋の扉に向かう。
「それじゃ、行こうか」
直桜は、部屋の扉を開いた。
13課組対室を空けたまま、直桜たちは出雲へ向かう運びとなった。
「大変なことになってそうだけど、俺たちも行っちゃって大丈夫なのかな」
不安を口走りながら、直桜は護と共に自分の部屋にいた。
「神倉さんからは行って来いとの指示ですし、行かない訳にもいきませんね」
護が苦笑交じりに応える。
直桜は机の引き出しに保管していた勾玉を取り出した。
「時期になると毎年これが届くんだ。いつの間にか目の届く範囲に置いてある感じなんだけどね。通行手形みたいな感じ」
麻の紐に通った大きな勾玉を、護がまじまじと見詰めた。
「これを持って部屋の扉を開くと着くよ。帰りも同じ扉に戻るから、変なとこから行くと大変なんだよね」
「あっさり行けちゃうんですね」
護が感心したように呟く。
「まぁ、そうなんだけど……」
直桜はじっとりとした視線を護に向けた。
護が訳の分からない顔で狼狽える。
「神様って、フランクな感じで話し掛けてくるしスキンシップも多めだから、気を付けて。というか、気にしないで。例えば俺がめっちゃ絡まれても、この前みたいに他の神様にキスしたりしないで」
ごにょごにょと口の中で話したようになってしまった。
ぱちくり、と瞬きをして、護が納得の顔をした。
「もしかして、この前、保輔君にしたこと、気にしてますか?」
「気にしてるよ。俺のはあくまで術だけど、護のは違うだろ。しなくても良かったわけだしさ」
どんな理由があろうと目の前で護が他の相手とキスしている姿を見るのは気分が悪い。幼稚じみた嫉妬だとも思うが、アレは護が悪いと思う。
「あの後、保輔君の感触が消えるくらい直桜にもいっぱいキスしましたが、足りませんでしたか?」
護の手が直桜の顔を包み込む。
近付いた顔が妖艶に笑んだ。
「そういう問題じゃない。他の人にはしないで俺にだけ沢山、キスしてほしい」
護の唇が直桜に吸い付く。
「いけませんね。叱られているのに、直桜が嫉妬してくれるのが嬉しくて、顔がにやけてしまいます」
「反省してないね? 連れて行かないよ?」
「それは困ります。神倉さんにも叱られてしまいますし、何より直桜が他の神様に絡まれて一方的にキスされるのを止められません」
「今更、それはないけどさ」
話しながらも護は直桜の唇に吸い付いている。
最近の護は直桜が本気で嫉妬すると喜んでしまうから、どうしたものかと思う。
「大丈夫、ちゃんとわかっていますよ。直桜が嫌がることはしません。惟神の直桜を守るのが眷族の私の役目ですから」
直桜の体をぎゅっと抱き締めて、愛おしそうに耳元で囁く。
その声が嬉しくて、許す気になってしまう。
「信じるからね」
護の顔を覗く。
「はい、直桜の期待を裏切ったりしませんよ」
護がとても嬉しそうに頷いた。
再度、手の中の勾玉を確認して、部屋の扉に向かう。
「それじゃ、行こうか」
直桜は、部屋の扉を開いた。
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