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第7話 草について
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今でいうところの「忍者」の話ですね。違うけど、そんな感じです。
呪法解析部・責任者・花笑円。彼は「草」の一族ですが、草の修行や仕事が嫌すぎて何度も逃げて引きこもって結果、解析術の霊能を生かして解析室にいる、という設定になっています。
警察庁公安部特殊係13課には、諜報(・隠密)担当という部署があります。そこの統括が花笑堅持、円の父親で花笑家宗主です。13課の諜報担当は基本、花笑の草で構成されています。
花笑一族は、呪禁術を使う草で、呪詛返しを生業とし、有史には既に家系図が存在するほど古い家柄、という設定です。
とりあえず、忍者と草の違いを説明しておきます。
忍者とは、架空の生き物です。実際に日本に忍者なんかいませんでした、大袈裟に言えばね。
何故、こういう言い回しになるのか。忍者という言葉自体が小説などのエンタメから生まれた呼び名だからです。昭和初期の創作が始まりだった気がします、多分。
忍術を使って敵をバッタバッタと薙ぎ倒し、華麗に主に勝利を捧げるような生き物は実際に存在しないってことです。
でも忍者のモデルになった人たちはいたわけです。それが「忍び・志能備」と呼ばれていたわけですが、他にも沢山呼び名があって「乱破」「素破」「奪口」「草」などなど。活動拠点によって呼び名が違ったようです。
この忍びの皆さんもタイプが色々で、只のゴロツキもいれば、傭兵みたいに主を転々とする戦争のプロもいたし、ある程度の規模になると伊賀や甲賀のようなちょっとした豪族みたいなのもいました。雑賀衆なんかも土豪集団系ですかね。
「乱破・素破」は、確実なるゴロツキで虫殺すのも人殺すのも変わんない、みたいな人たちってイメージなので、忍びの中で一番タチが悪い気がしています。
花笑家は傭兵タイプです。戦のたびに主を転々とする、「勝たせる」あるいは「負けない」ための請負人的な草、という設定です。
なので、今は13課の班長・須能忍が主になりますね。
忍びの忍術は、実際でっかいガマガエル出したりはできなかったでしょうけど、身体能力が高かったのは間違いなく、壁よじ登ったり池(濠)の中を泳いだりはしていたようです。
実は知識も豊富で、当時にしては絶対に珍しい科学系の知識を持っていたことも昨今の研究で明らかになってきたとか。薬学や草本学に長けていたのは知られている所です。じゃないと、死んじゃうもんね。
忍術自体もそうだけど、忍びの仕事自体が地味、目立たないって感じだったのは間違いないです。
一番古い志能備は聖徳太子が遣わした大伴細人らしいけど、これはフィクションの可能性が高いですねぇ。まぁ、文献に残っちゃったら忍び失格だろうから、よっぽど功績をあげて名を遺した服部半蔵くらいでないとなかなか出てこないんでしょうが。
個人的には壬申の乱くらいには割と普通に活動してたんだろうなと考えています。
よく御庭番が忍者みたいに語られますが、あれは間違いです。忍びが忍者より大きな間違いなので、ご注意ください。
御庭番は江戸時代、八代将軍吉宗が紀州から連れてきた薬込役で、間者っぽい人たちです。間者って表現もバッシング受けそうだけど。諜報部隊ですね。
吉宗が全国の内情を把握するために色んな藩に行かせて様子を探らせていた、普段は江戸城の庭に詰めて掃除してた人たちです。
なんで中庭の掃除なのか。あの当時は将軍の直下に御側御用取次という役職の人たちがいました。その人たちが庭にちらっときて、箒持った御庭番の侍を呼んで、扇子で口元を隠しながらサラサラっと仕事の内容を伝える。侍は仕事に行く。
戻ってきたときも、庭でさらさらっと報告をして、或いは文書をこっそりと渡して去る。といった具合です。
遠征の仕事が入った侍は、日本橋の呉服屋(大丸屋)の裏から入り着替えてそのまま仕事に行きます。
薩摩藩の「蘇鉄問答」は有名な逸話ですね。当時の薩摩藩は「薩摩飛脚は片飛脚」と言われるくらい、間者が入り込むと生きて帰って来ないと有名でした。ですが11代将軍家斉は御庭番に薩摩の城にあった蘇鉄に葵の紋が入った笄を刺してこさせ、島津の殿様に蘇鉄の木の話をして驚かせる、みたいなエピソードがあります。
ウチの御庭番優秀だから、お前の藩の事情は筒抜けだからなっていう脅しです。
当時の御庭番には日記が趣味だった人がいて、家計簿みたいな感じに詳細な日記を書いている人がいます。
あとは結構、出世できるポジションだったみたいで、勘定奉行とかになっている人が多いです。
色々調べると、御庭番が忍びじゃないってわかると思います。もし本格的な歴史小説を書きたいと思う方がこれを読んでいたら、その辺りの認識は基礎知識として入れておいた方が良いかと。
そんでまぁ、本作に登場する花笑は、まだ京が奈良にあった頃に紀ノ國から京に出て、詰まんねぇなって思って流れているうちに東北とかまで回ったけど寒いから武蔵に戻って神奈川県相模原に定住した、呪禁術を使う草です。
円が作中で、「草である円に化野護を蔑む気持ちなど塵ほどもない。むしろ草の方が、世の中の汚れ仕事を請け負う社会の穢れだと思っている。鬼よりよっぽど汚い」と草の仕事を嫌悪する地の文が出てきます。
Ⅲに出てくる円の二人の姉、初と稀も必要なら床入りするし、草の命は掛け捨て、くらいに思っている台詞がチラホラ出てきます。
現代に草がいたら、どんな感じだろうなって思って作った設定ですが、きっと戦国時代とかと本質は大して変わんないだろうなって思いました。
だから男女問わず色も使うだろうし、命も厭わない。基本は窮地を脱するための草ですが、あくまで大事にするのは主の命であって、自分たちの命ではない。
なので直桜は初と稀に「自分の命を大事にするのが最優先、俺の指揮下では自死禁止」と指示を出します。
あと、円がやけにキスが巧かったり、色事に詳しいのは草の仕事のためでもある。花笑が狙って残してきた遺伝子のお陰で美形、というのも設定としては面白いかなと思って入れました。
花笑家の五人兄弟は全員、美形です。兄弟が多いのも、草の命は掛け捨てだからです。使える命は多いほうが良いという発想から。
草の仕事が大嫌いな円だけど、草の修行のお陰で強くなれて、大好きな智颯のバディになれたってのも、なんだか皮肉な話ですね。
主人公の直桜と護と同じくらい、智颯と円を書くのは楽しい。
今回も自作の話が多くなってしまいましたね。
まぁ、仕方ないんですが。
さて、次回は「直霊・四魂」について。
本作はこちら↓
『仄暗い灯が迷子の二人を包むまで』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/20419239/463890795
呪法解析部・責任者・花笑円。彼は「草」の一族ですが、草の修行や仕事が嫌すぎて何度も逃げて引きこもって結果、解析術の霊能を生かして解析室にいる、という設定になっています。
警察庁公安部特殊係13課には、諜報(・隠密)担当という部署があります。そこの統括が花笑堅持、円の父親で花笑家宗主です。13課の諜報担当は基本、花笑の草で構成されています。
花笑一族は、呪禁術を使う草で、呪詛返しを生業とし、有史には既に家系図が存在するほど古い家柄、という設定です。
とりあえず、忍者と草の違いを説明しておきます。
忍者とは、架空の生き物です。実際に日本に忍者なんかいませんでした、大袈裟に言えばね。
何故、こういう言い回しになるのか。忍者という言葉自体が小説などのエンタメから生まれた呼び名だからです。昭和初期の創作が始まりだった気がします、多分。
忍術を使って敵をバッタバッタと薙ぎ倒し、華麗に主に勝利を捧げるような生き物は実際に存在しないってことです。
でも忍者のモデルになった人たちはいたわけです。それが「忍び・志能備」と呼ばれていたわけですが、他にも沢山呼び名があって「乱破」「素破」「奪口」「草」などなど。活動拠点によって呼び名が違ったようです。
この忍びの皆さんもタイプが色々で、只のゴロツキもいれば、傭兵みたいに主を転々とする戦争のプロもいたし、ある程度の規模になると伊賀や甲賀のようなちょっとした豪族みたいなのもいました。雑賀衆なんかも土豪集団系ですかね。
「乱破・素破」は、確実なるゴロツキで虫殺すのも人殺すのも変わんない、みたいな人たちってイメージなので、忍びの中で一番タチが悪い気がしています。
花笑家は傭兵タイプです。戦のたびに主を転々とする、「勝たせる」あるいは「負けない」ための請負人的な草、という設定です。
なので、今は13課の班長・須能忍が主になりますね。
忍びの忍術は、実際でっかいガマガエル出したりはできなかったでしょうけど、身体能力が高かったのは間違いなく、壁よじ登ったり池(濠)の中を泳いだりはしていたようです。
実は知識も豊富で、当時にしては絶対に珍しい科学系の知識を持っていたことも昨今の研究で明らかになってきたとか。薬学や草本学に長けていたのは知られている所です。じゃないと、死んじゃうもんね。
忍術自体もそうだけど、忍びの仕事自体が地味、目立たないって感じだったのは間違いないです。
一番古い志能備は聖徳太子が遣わした大伴細人らしいけど、これはフィクションの可能性が高いですねぇ。まぁ、文献に残っちゃったら忍び失格だろうから、よっぽど功績をあげて名を遺した服部半蔵くらいでないとなかなか出てこないんでしょうが。
個人的には壬申の乱くらいには割と普通に活動してたんだろうなと考えています。
よく御庭番が忍者みたいに語られますが、あれは間違いです。忍びが忍者より大きな間違いなので、ご注意ください。
御庭番は江戸時代、八代将軍吉宗が紀州から連れてきた薬込役で、間者っぽい人たちです。間者って表現もバッシング受けそうだけど。諜報部隊ですね。
吉宗が全国の内情を把握するために色んな藩に行かせて様子を探らせていた、普段は江戸城の庭に詰めて掃除してた人たちです。
なんで中庭の掃除なのか。あの当時は将軍の直下に御側御用取次という役職の人たちがいました。その人たちが庭にちらっときて、箒持った御庭番の侍を呼んで、扇子で口元を隠しながらサラサラっと仕事の内容を伝える。侍は仕事に行く。
戻ってきたときも、庭でさらさらっと報告をして、或いは文書をこっそりと渡して去る。といった具合です。
遠征の仕事が入った侍は、日本橋の呉服屋(大丸屋)の裏から入り着替えてそのまま仕事に行きます。
薩摩藩の「蘇鉄問答」は有名な逸話ですね。当時の薩摩藩は「薩摩飛脚は片飛脚」と言われるくらい、間者が入り込むと生きて帰って来ないと有名でした。ですが11代将軍家斉は御庭番に薩摩の城にあった蘇鉄に葵の紋が入った笄を刺してこさせ、島津の殿様に蘇鉄の木の話をして驚かせる、みたいなエピソードがあります。
ウチの御庭番優秀だから、お前の藩の事情は筒抜けだからなっていう脅しです。
当時の御庭番には日記が趣味だった人がいて、家計簿みたいな感じに詳細な日記を書いている人がいます。
あとは結構、出世できるポジションだったみたいで、勘定奉行とかになっている人が多いです。
色々調べると、御庭番が忍びじゃないってわかると思います。もし本格的な歴史小説を書きたいと思う方がこれを読んでいたら、その辺りの認識は基礎知識として入れておいた方が良いかと。
そんでまぁ、本作に登場する花笑は、まだ京が奈良にあった頃に紀ノ國から京に出て、詰まんねぇなって思って流れているうちに東北とかまで回ったけど寒いから武蔵に戻って神奈川県相模原に定住した、呪禁術を使う草です。
円が作中で、「草である円に化野護を蔑む気持ちなど塵ほどもない。むしろ草の方が、世の中の汚れ仕事を請け負う社会の穢れだと思っている。鬼よりよっぽど汚い」と草の仕事を嫌悪する地の文が出てきます。
Ⅲに出てくる円の二人の姉、初と稀も必要なら床入りするし、草の命は掛け捨て、くらいに思っている台詞がチラホラ出てきます。
現代に草がいたら、どんな感じだろうなって思って作った設定ですが、きっと戦国時代とかと本質は大して変わんないだろうなって思いました。
だから男女問わず色も使うだろうし、命も厭わない。基本は窮地を脱するための草ですが、あくまで大事にするのは主の命であって、自分たちの命ではない。
なので直桜は初と稀に「自分の命を大事にするのが最優先、俺の指揮下では自死禁止」と指示を出します。
あと、円がやけにキスが巧かったり、色事に詳しいのは草の仕事のためでもある。花笑が狙って残してきた遺伝子のお陰で美形、というのも設定としては面白いかなと思って入れました。
花笑家の五人兄弟は全員、美形です。兄弟が多いのも、草の命は掛け捨てだからです。使える命は多いほうが良いという発想から。
草の仕事が大嫌いな円だけど、草の修行のお陰で強くなれて、大好きな智颯のバディになれたってのも、なんだか皮肉な話ですね。
主人公の直桜と護と同じくらい、智颯と円を書くのは楽しい。
今回も自作の話が多くなってしまいましたね。
まぁ、仕方ないんですが。
さて、次回は「直霊・四魂」について。
本作はこちら↓
『仄暗い灯が迷子の二人を包むまで』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/20419239/463890795
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