37 / 92
第3章 ワンポイント
35 予期された悪夢
しおりを挟む
ダグアウトに下がった楓は、他の選手がウォーミングアップをする場所にいることもできず、ベンチとロッカールームをつなぐ廊下の奥に座り込んでいた。
後ろで束ねていたのを解いた髪は、頭の上に無造作にかけたロングタオルの端からはみ出ており、一見すればその容姿は女子選手であるとわかるものだった。入団した頃に肩よりも上に先端があったボブの髪は、半年の月を経て胸の上あたりまで伸びていた。
7失点──あまりの大量失点に、自分のボールが打たれることのショックも麻痺していた。
「半年か……私の賞味期限。」
床を見つめたまま、楓は自嘲気味に呟く。
「あなたの何が半年だって?」
無人のはずの廊下でかけられた声に、驚いて顔を上げる。
目の前にはすらりとしたグレーのパンツスーツ。見上げると奏子の顔がそこにあった。
「どうして、ここに……」
「どうして? 私はチームのオーナー企業の社長よ。来てはまずい?」
「いえ、そういうわけじゃなくて……」
ショックな出来事が続いた後にこの態度で接されると、さすがに言葉を返せない。楓は再びうなだれたまま、消え入りそうな声で返す。
「何を投げても、打たれるんです。際どいところに投げても、全部見極められる。」
「だから、半年が賞味期限で、それがすぎたから引退するって?」
全部聞こえてたのに、あんな聞き方をしたのか。
「まあ、ルーキーとしてのあなたの賞味期限は、半年だってことね。」
意味深な言葉だが、今の楓にはただ追い討ちをかけるだけだった。
「もう、ダメかもしれません……。」
絞り出した言葉の最後の方は、もう声にならないほどだった。
「何言ってるの。腐るのは勝手だけど、腐ったところでお払い箱になんてしてあげないわよ。たった半年のために、契約金を払ったつもりはないわ。」
「すみません。」
限界を一度感じてしまった楓には謝ることしかできなかった。
「あのね、野球もビジネスも同じよ。」
声が近くなったことに少し驚いてもう一度顔を上げると、左隣に奏子が同じように体育座りの格好で座っていた。
楓の様子をみて、さっきよりも優しい口調で奏子は続ける。
「ビジネスの世界も同じ。男女平等といっても、女子はマイノリティ。体力も人脈も、すべてビハインドからのスタートが当たり前になってる。でもね──」
そういうと、奏子は楓の左の手首を持って、手のひらを上に向けさせる。
「一度や二度くらい壁にぶち当たったって、可能性が潰えるわけじゃない。あなたのこの左腕には、まだまだ可能性があるのよ。」
「でも、変化球もコースも、全部投げたんです! 谷口さんだって、いろんなリードを──」
ここまで言おうとすると、また情けなくて涙が溢れそうになる。
楓もまだ23歳。去年まで女子大生だ。挫折にも慣れていないのは当然だった。
楓の隣に座った「女子」の大先輩は、楓の手首を持った指先を優しくさするように動かすと、
「私もね、初めて任されたプロジェクトで、大失敗したのよね。」
唐突に関係のない話を始めた。何のことかわからない楓はそのまま聞き入る。
「アプリの開発費10億。まだスマホ黎明期の開発費としては超異例の予算で作ったアプリを、大コケさせた。『もうクビだろうな』って思ったわよ。クビくらいで責任なんか取りようもないけど。」
そういうと、奏子は懐かしそうに天井を見上げる。古びた笠井寺球場のダグアウトを照らす蛍光灯は、かすかな点滅を交えながら2人を照らし続ける。
「でもね。会社が私に10億というお金を預けたのは、そのビジネスを成功させるためだけじゃなかった。仮に失敗しても、それだけ大きなお金を動かす経験を糧に、次のビジネスを成功させるための経験値を与えるため。『人』に投資したわけね。」
「でも、私は──」
「でもじゃない。甘えるのもいい加減にしなさい。」
突然の強い口調にはっとなる楓。奏子の声は大きくはなかったが、いつも出す声よりも低く、何より幾多の修羅場をくぐって来ただけの威圧感があった。思わず背筋が伸びる。
「はっきりいって、あなたが一度全部の球種を見極められて打たれることなんて、監督も私も予想済みなの。むしろよく持ったくらいよ。当初は4月中に一度捕まることを想定してたんだから。
でも──私たちは、そこからあなたが『進化』することも予想してる。だから、4月からセットアッパーとして起用した。その進化をいち早く起こすためには、早めに壁にぶち当たる必要があるからね。」
奏子はゆっくりと立ち上がると、楓の頭に乗ったロングタオルをぽんぽんと2回叩いた。そしてまた暖かく優しい口調に戻ると、
「だから、考えなさい──自分がなぜ打たれたのか、なぜ見極められたのか。それに──あなたはもうドルフィンズの一員よ。決して孤独じゃないわ。」
そういうと、奏子はハイヒールの音を鳴らしながら、ベンチとは逆方向へ消えていった。
2人が話を終えた頃、ようやく8回の裏のロイヤルズの攻撃と、9回表のドルフィンズの攻撃が終わり、試合が終了したようだった。
当然9回表の攻撃で楓がした7失点を取り返すことはできず、ドルフィンズは手痛い敗戦を喫した。足取り重くぞろぞろと選手が帰ってくるのをみて、楓は逃げるように女子更衣室へ駆け込んだ。
こういうときに男女で更衣室が分かれていたのは、いま一軍にいるたった1人の女子選手である楓にとっては、不幸中の幸いだったのかもしれない。
あとで監督室へいって、2軍への降格を志願しようか。
このまま1軍で投げても糸口が見出せる気がしない。
思いが交錯する。
女子更衣室の扉を背にして考えながら、、逃げるように立ち去ってしまったことの背徳感を抑えるように、荒くなった呼吸を整える。
──コンコン。
と、背中にノックの振動と音を感じた。
「立花──あの……ちょっといいか?」
声の主は戸高だった。今日の戸高は試合出場がなく、ブルペンで投手のボールを受ける以外はベンチを温めていた。
「なに?」
楓は扉に背をつけたまま、少し顔を扉側に向けて答える。
「今日はちょっと、1人になりたいんだけど……。」
「これから、ブルペンに来い。」
相変わらず捕手なのに気遣いができないやつだ。
さすがに少しイラついて口調が荒くなる。
「わかるでしょ。あんなに打たれて、今日はもう投げたくない。」
一瞬の静寂の後、
「わかった。じゃあ、落ち着いてちょっとしたらブルペンに来い。準備してるから。」
「ちょっと、人の話聞いて──」
言いかけて、もうドアの向こうに人の気配がないのを悟る。
楓は奏子が触れた自分の左手をもう一度見た。
これまでの様々な思い出が走馬灯のように駆け巡る。
高3のとき指名されなかったこと、それでも野球は続けようと思ったこと、自分の思いに区切りをつけるためにプロ志望届を出したこと、指名された日のお祭り騒ぎ、厳しかったキャンプ、開幕戦で投げた日の緊張感──そして、奏子に言われた「進化」という言葉。
勇気を振り絞ってドアを開けるまで1時間以上が経過していた。
女子更衣室のドアを開けると、もうダグアウトには誰もいなかった。
時刻は23時を回っていた。
楓がブルペンに近づいていくと、野球中継の実況の音声と思しき音がかすかに聞こえる。
ブルペンのドアを開ける。実況の音声が大きくなる。
《さてここまで5失点の立花投手ですが、ベンチは続投を──》
楓が来たのに気づいて、戸高は慌ててモニターを消した。アナウンサーの言葉が途中で消える。
こういう気遣いはできるのかと、妙なところに感心しつつ、楓は戸高に問う。
「それで、何?」
「ボールを投げてくれ。」
「ちょっと、私今日すごいたくさん投げて──」
「いいから。」
ぶっきらぼうにいうと、守備位置について座り、ボールを楓に投げてくる。
こういうときに押し切られてしまう自分が嫌いだ。
そういえば大学時代、親友のあかねからは「楓は押しに弱いタイプだから、変な男が近寄らないように私が守る」といっていたのを思い出す。自分には大学内にファンクラブがあるほどだったのに。
半ば押し切られる形でブルペンのマウンドに立つ。
「じゃあ、真っ直ぐから!」
戸高が声を張る。
楓は半ばヤケクソになってボールを投じる。
ミットが乾いた音を立てて、ボールが収まる。
「よし、ナイスボール!」
たしかに戸高の言う通りだ。
こういうときに球が走ってしまうのはなんとも皮肉だ。
それから、すべての変化球を投げた。投球数は全部で30球ほど。
「うん。なるほど。わかった。」
最後のボールを捕球すると、戸高は独り言をぶつぶつといって、楓の方に向きなおる。
「だいたいわかった。もう帰っていいよ。」
なんなんだこいつは。何か親切心でしてくれたのはなんとなくわかるが、それ以外は全くわからない。
しかし、今日の楓に戸高と言い合う気力は残されていなかった。
自宅へ持って帰るものが、失点数と情けなさのほかに、不可解さも加えられた。
プロ生活初のゴールデンウィーク9連線は、何か現実味のない、悪夢を見ているような日々となってしまった。
「そうすると、指先の押し出しが弱いから変化が早まるのか……」
まだ立ったまま下を向いてぶつぶついっている戸高を無視して、楓は怒りとも悲しみともつかぬ乱れた心を抱えたまま家路についた。
後ろで束ねていたのを解いた髪は、頭の上に無造作にかけたロングタオルの端からはみ出ており、一見すればその容姿は女子選手であるとわかるものだった。入団した頃に肩よりも上に先端があったボブの髪は、半年の月を経て胸の上あたりまで伸びていた。
7失点──あまりの大量失点に、自分のボールが打たれることのショックも麻痺していた。
「半年か……私の賞味期限。」
床を見つめたまま、楓は自嘲気味に呟く。
「あなたの何が半年だって?」
無人のはずの廊下でかけられた声に、驚いて顔を上げる。
目の前にはすらりとしたグレーのパンツスーツ。見上げると奏子の顔がそこにあった。
「どうして、ここに……」
「どうして? 私はチームのオーナー企業の社長よ。来てはまずい?」
「いえ、そういうわけじゃなくて……」
ショックな出来事が続いた後にこの態度で接されると、さすがに言葉を返せない。楓は再びうなだれたまま、消え入りそうな声で返す。
「何を投げても、打たれるんです。際どいところに投げても、全部見極められる。」
「だから、半年が賞味期限で、それがすぎたから引退するって?」
全部聞こえてたのに、あんな聞き方をしたのか。
「まあ、ルーキーとしてのあなたの賞味期限は、半年だってことね。」
意味深な言葉だが、今の楓にはただ追い討ちをかけるだけだった。
「もう、ダメかもしれません……。」
絞り出した言葉の最後の方は、もう声にならないほどだった。
「何言ってるの。腐るのは勝手だけど、腐ったところでお払い箱になんてしてあげないわよ。たった半年のために、契約金を払ったつもりはないわ。」
「すみません。」
限界を一度感じてしまった楓には謝ることしかできなかった。
「あのね、野球もビジネスも同じよ。」
声が近くなったことに少し驚いてもう一度顔を上げると、左隣に奏子が同じように体育座りの格好で座っていた。
楓の様子をみて、さっきよりも優しい口調で奏子は続ける。
「ビジネスの世界も同じ。男女平等といっても、女子はマイノリティ。体力も人脈も、すべてビハインドからのスタートが当たり前になってる。でもね──」
そういうと、奏子は楓の左の手首を持って、手のひらを上に向けさせる。
「一度や二度くらい壁にぶち当たったって、可能性が潰えるわけじゃない。あなたのこの左腕には、まだまだ可能性があるのよ。」
「でも、変化球もコースも、全部投げたんです! 谷口さんだって、いろんなリードを──」
ここまで言おうとすると、また情けなくて涙が溢れそうになる。
楓もまだ23歳。去年まで女子大生だ。挫折にも慣れていないのは当然だった。
楓の隣に座った「女子」の大先輩は、楓の手首を持った指先を優しくさするように動かすと、
「私もね、初めて任されたプロジェクトで、大失敗したのよね。」
唐突に関係のない話を始めた。何のことかわからない楓はそのまま聞き入る。
「アプリの開発費10億。まだスマホ黎明期の開発費としては超異例の予算で作ったアプリを、大コケさせた。『もうクビだろうな』って思ったわよ。クビくらいで責任なんか取りようもないけど。」
そういうと、奏子は懐かしそうに天井を見上げる。古びた笠井寺球場のダグアウトを照らす蛍光灯は、かすかな点滅を交えながら2人を照らし続ける。
「でもね。会社が私に10億というお金を預けたのは、そのビジネスを成功させるためだけじゃなかった。仮に失敗しても、それだけ大きなお金を動かす経験を糧に、次のビジネスを成功させるための経験値を与えるため。『人』に投資したわけね。」
「でも、私は──」
「でもじゃない。甘えるのもいい加減にしなさい。」
突然の強い口調にはっとなる楓。奏子の声は大きくはなかったが、いつも出す声よりも低く、何より幾多の修羅場をくぐって来ただけの威圧感があった。思わず背筋が伸びる。
「はっきりいって、あなたが一度全部の球種を見極められて打たれることなんて、監督も私も予想済みなの。むしろよく持ったくらいよ。当初は4月中に一度捕まることを想定してたんだから。
でも──私たちは、そこからあなたが『進化』することも予想してる。だから、4月からセットアッパーとして起用した。その進化をいち早く起こすためには、早めに壁にぶち当たる必要があるからね。」
奏子はゆっくりと立ち上がると、楓の頭に乗ったロングタオルをぽんぽんと2回叩いた。そしてまた暖かく優しい口調に戻ると、
「だから、考えなさい──自分がなぜ打たれたのか、なぜ見極められたのか。それに──あなたはもうドルフィンズの一員よ。決して孤独じゃないわ。」
そういうと、奏子はハイヒールの音を鳴らしながら、ベンチとは逆方向へ消えていった。
2人が話を終えた頃、ようやく8回の裏のロイヤルズの攻撃と、9回表のドルフィンズの攻撃が終わり、試合が終了したようだった。
当然9回表の攻撃で楓がした7失点を取り返すことはできず、ドルフィンズは手痛い敗戦を喫した。足取り重くぞろぞろと選手が帰ってくるのをみて、楓は逃げるように女子更衣室へ駆け込んだ。
こういうときに男女で更衣室が分かれていたのは、いま一軍にいるたった1人の女子選手である楓にとっては、不幸中の幸いだったのかもしれない。
あとで監督室へいって、2軍への降格を志願しようか。
このまま1軍で投げても糸口が見出せる気がしない。
思いが交錯する。
女子更衣室の扉を背にして考えながら、、逃げるように立ち去ってしまったことの背徳感を抑えるように、荒くなった呼吸を整える。
──コンコン。
と、背中にノックの振動と音を感じた。
「立花──あの……ちょっといいか?」
声の主は戸高だった。今日の戸高は試合出場がなく、ブルペンで投手のボールを受ける以外はベンチを温めていた。
「なに?」
楓は扉に背をつけたまま、少し顔を扉側に向けて答える。
「今日はちょっと、1人になりたいんだけど……。」
「これから、ブルペンに来い。」
相変わらず捕手なのに気遣いができないやつだ。
さすがに少しイラついて口調が荒くなる。
「わかるでしょ。あんなに打たれて、今日はもう投げたくない。」
一瞬の静寂の後、
「わかった。じゃあ、落ち着いてちょっとしたらブルペンに来い。準備してるから。」
「ちょっと、人の話聞いて──」
言いかけて、もうドアの向こうに人の気配がないのを悟る。
楓は奏子が触れた自分の左手をもう一度見た。
これまでの様々な思い出が走馬灯のように駆け巡る。
高3のとき指名されなかったこと、それでも野球は続けようと思ったこと、自分の思いに区切りをつけるためにプロ志望届を出したこと、指名された日のお祭り騒ぎ、厳しかったキャンプ、開幕戦で投げた日の緊張感──そして、奏子に言われた「進化」という言葉。
勇気を振り絞ってドアを開けるまで1時間以上が経過していた。
女子更衣室のドアを開けると、もうダグアウトには誰もいなかった。
時刻は23時を回っていた。
楓がブルペンに近づいていくと、野球中継の実況の音声と思しき音がかすかに聞こえる。
ブルペンのドアを開ける。実況の音声が大きくなる。
《さてここまで5失点の立花投手ですが、ベンチは続投を──》
楓が来たのに気づいて、戸高は慌ててモニターを消した。アナウンサーの言葉が途中で消える。
こういう気遣いはできるのかと、妙なところに感心しつつ、楓は戸高に問う。
「それで、何?」
「ボールを投げてくれ。」
「ちょっと、私今日すごいたくさん投げて──」
「いいから。」
ぶっきらぼうにいうと、守備位置について座り、ボールを楓に投げてくる。
こういうときに押し切られてしまう自分が嫌いだ。
そういえば大学時代、親友のあかねからは「楓は押しに弱いタイプだから、変な男が近寄らないように私が守る」といっていたのを思い出す。自分には大学内にファンクラブがあるほどだったのに。
半ば押し切られる形でブルペンのマウンドに立つ。
「じゃあ、真っ直ぐから!」
戸高が声を張る。
楓は半ばヤケクソになってボールを投じる。
ミットが乾いた音を立てて、ボールが収まる。
「よし、ナイスボール!」
たしかに戸高の言う通りだ。
こういうときに球が走ってしまうのはなんとも皮肉だ。
それから、すべての変化球を投げた。投球数は全部で30球ほど。
「うん。なるほど。わかった。」
最後のボールを捕球すると、戸高は独り言をぶつぶつといって、楓の方に向きなおる。
「だいたいわかった。もう帰っていいよ。」
なんなんだこいつは。何か親切心でしてくれたのはなんとなくわかるが、それ以外は全くわからない。
しかし、今日の楓に戸高と言い合う気力は残されていなかった。
自宅へ持って帰るものが、失点数と情けなさのほかに、不可解さも加えられた。
プロ生活初のゴールデンウィーク9連線は、何か現実味のない、悪夢を見ているような日々となってしまった。
「そうすると、指先の押し出しが弱いから変化が早まるのか……」
まだ立ったまま下を向いてぶつぶついっている戸高を無視して、楓は怒りとも悲しみともつかぬ乱れた心を抱えたまま家路についた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
Head or Tail ~Akashic Tennis Players~
志々尾美里
SF
テニスでは試合前にコイントスでサーブの順番を決める。
そのときコインを投げる主審が、選手に問う。
「Head or Tail?(表か、裏か)」
東京五輪で日本勢が目覚ましい活躍をみせ、政府主導のもとスポーツ研究が盛んになった近未来の日本。
テニス界では日本人男女ペアによって初のグランドスラム獲得の偉業が達成され、テニスブームが巻き起こっていた。
主人公、若槻聖(わかつきひじり)は一つ上の幼馴染、素襖春菜(すおうはるな)に誘われテニスを始める。
だが春菜の圧倒的な才能は二人がペアでいることを困難にし、聖は劣等感と“ある出来事”からテニスを辞めてしまう。
時は流れ、プロ選手として活動拠点を海外に移そうとしていた春菜の前に聖が現れる。
「今度こそ、春菜に相応しいペアになる」
そう誓った聖は、誰にも話せなかった“秘密のラケット”の封印を解く。
類稀なる才能と果てしない研鑚を重ね、鬼や怪物が棲まう世界の頂上に挑む者たち
プロの世界に夢と希望を抱き、憧れに向かって日々全力で努力する追う者たち
テニスに生き甲斐を見出し、プロさながらに己の限界を超えるべく戦う者たち
勝利への渇望ゆえ歪んだ執念に憑りつかれ、悪事に手を染めて足掻く者たち
夢を絶たれその道を諦め、それでもなお未だ燻り続ける彷徨う者たち
現在・過去・未来、遍く全ての記憶と事象を網羅した「アカシック・レコード」に選ばれた聖は、
現存する全ての選手の技を自在に操る能力を手に、テニスの世界に身を投じる。
そして聖を中心に、テニスに関わる全ての者たちの未来の可能性が、“撹拌”されてゆく――。
Harmonia ー或る孤独な少女と侯国のヴァイオリン弾きー
雪葉あをい
ライト文芸
孤児院で育った少女リチェルは、十二歳の時その歌声を見初められ隣国の貴族の楽団に引き取られる。けれども引き取ってくれた当主がすぐに病死した事で待遇が一変、日々屋敷と楽団の雑事をこなす下働きとして暮らしていた。
そんなある日、丘で隠れて歌っていたところを一人の青年に見つかってしまう。ヴァイオリン弾きである青年は、リチェルにまた歌を聴かせてほしいと告げて──。
「俺はただ、君の歌が聴きたくて降りてきたんだ」
これはある目的で旅を続ける貴族のヴァイオリン弾きと孤児の少女の、音楽で彩る優しい旅のお話。
(原案・絵:若野未森、著者:雪葉あをい)
★11/13まで毎日朝8時更新・以降週二回(土日朝8時)更新・年内完結
※このお話は19世紀末のヨーロッパをモデルにしたファンタジーです。地名や当時の政治・慣習等の背景を含め、多々フィクションが含まれます。
※時代背景などを反映した差別的な表現が含まれている場合があります。
泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)
武者走走九郎or大橋むつお
ライト文芸
神楽坂高校の俺は、ある日学食に飯を食いに行こうとしたら、数学の堂本が一年の女子をいたぶっているところに出くわしてしまう。数学の堂本は俺にω(オメガ)ってあだ名を付けた意地悪教師だ。
ωってのは、俺の口が、いつもωみたいに口元が笑っているように見えるから付けたんだってさ。
いたぶられてる女子はΣ(シグマ)って堂本に呼ばれてる。顔つきっていうか、口元がΣみたいに不足そうに尖がってるかららしいが、ω同様、ひどい呼び方だ。
俺は、思わず堂本とΣの間に飛び込んでしまった。
鳥に追われる
白木
ライト文芸
突然、町中を埋め尽くし始めた鳥の群れ。
海の上で燃える人たち。不気味な心臓回収人。死人の乗る船。僕たち三人は助かるの?僕には生きる価値があるの?旅の最後に選ばれるのは...【第一章】同じ会社に務める気弱な青年オオミと正義感あふれる先輩のアオチ、掴みどころのない年長のオゼは帰省のため、一緒に船に乗り込む。故郷が同じこと意外共通点がないと思っていた三人には、過去に意外なつながりがあった。疑心暗鬼を乗せたまま、もう、陸地には戻れない。【第二章】突然ぶつかってきた船。その船上は凄惨な殺人が起きた直後のようだった。二つ目の船の心臓回収人と乗客も巻き込んで船が進む先、その目的が明かされる。【第三章】生き残れる乗客は一人。そんなルールを突きつけられた三人。全員で生き残る道を探し、ルールを作った張本人からの罠に立ち向かう。【第四章】減っていく仲間、新しく加わる仲間、ついに次の世界に行く者が決まる。どうして選別は必要だったのか?次の世界で待ち受けるものは?全てが明かされる。
徒然短編集
後醍醐(2代目)
ライト文芸
主に人からもらったお題で、基本40分以内でなるべく400字は超える事を目安に短編を書きます。毎日投稿を目標にしているので、良ければ見てやってください。
一応文章力は成長してると思うので、是非とも一話目だけを読んで判断せずになるべく先の方まで読んでみて欲しいです。なお、現在最も自信があるのは『新薬のバイト』です。
【追記】条件によって章分けし直したので、最新話=一番下という事では無いです。紛らわしくてすみません。
頭取さん、さいごの物語~新米編集者・羽織屋、回顧録の担当を任されました
鏡野ゆう
ライト文芸
一人前の編集者にすらなれていないのに、なぜか編集長命令で、取引銀行頭取さんの回顧録担当を押しつけられてしまいました!
※カクヨムでも公開中です※
書く人に向けて書くコーナー
アポロ
ライト文芸
どこからでもさくっとつまみ読みしていいよ。
ほっこりしたりじんわりしたりしたらいいよ。
何か書いてる人へのプレゼントのつもり。
お気に入りにしてやってちょうだい。
It's a energy.
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる