香りの鳥籠 Ωの香水

天埜鳩愛

文字の大きさ
上 下
33 / 34

ぼく病気になっちゃった5

しおりを挟む
「ぺたぺた…… わかったあ。だしてみるね! お兄ちゃん、やり方おしえて!」

 満面の笑みを浮かべてメテオを仰ぐ、ランから放たれる清らかな輝きに、ものすごい罪悪感を感じて目元を抑えつつ思わず天を仰ぐメテオだ。

(なんてことをいってしまったんだ! ひ、引っ込みつかないが、ここは何とか説明をして引いた方がいいのか。いやこのまま朝日眩い部屋で押し切った方が健全でエロくないのか。いやいや夜まで取っておいて…… とっておくとかもはや発想が罪! 駄目だろ駄目!)

 頭の中で色々な妄想やら倫理観やら、今まで育ててきた中でのランの可愛い名場面集やらが、溢れだし脳内をぐるぐる回って次第に興奮してきてなにがなんやら分からず頭がくらくらしてきた。

「お兄ちゃん~ ねえってば」

 伸びあがったランが、いつもはランを宥める時にメテオが行う顔中のキスをまねて、メテオの顎に啄むようにしてくるから、柔らかに啄まれてメテオはまた顔が熱くなる。
 胸元を細いランの腕でぐいぐいと押されるせいで頭が揺れてがくがくする。ランのこととなると冷静な判断力が付かなくなる。メルトに揶揄われ、アスターにお小言をいわれるいつものパターンに陥りかけている。

 メテオは覚悟を決めたきりっとした表情を見せて、足を大きく開いてどかっと寝台に座りなおした。ラン足の間に座りなおさせ、ランのか細い背中を自分の身体に持たれかけさせた。

「うふふ~っ」

 ばたばたと白く滑らかな脚が、楽しいことでも見つけたように振られるから、メテオは大きく息を吐いて、片方の指がくいっと沈み込むほど柔い太ももを掴み上げて幼い頃用を足させていた時のような姿勢にさせる。
 風呂には今でも一緒にはいっているが、大きくなってきてからランの身体をしげしげとみるのは流石に避けてきた。

 幼児の頃以降、久々に上から覗き込んだ陰茎があまりに稚くて、これからよく射精ができたものだと逆に感心した。

「ねえねえ、はやく」

 ランがまろい尻をメテオの股間のあたりに擦り付けてくるから、若いメテオは倒錯的な刺激にかあっと顔が熱くなってきた。

 指でそれに触れようとし、流石にできず引っ込め、ランが不満げに吐息を漏らす声に煽られ、また指を伸ばすも流石に凝視できず……

「お兄ちゃん!」
「わ、わかった」

 メテオはぎゅっと目を瞑って、小さなそれに手を伸ばそうとしたその時。

「ラン~ メテオ~ どうしたの~? そろそろ朝食取らないと遅れるわよ~」

 呑気で穏やかな母の声と、寝室のドアが開くのが同時だった。
 母は二人の姿に日頃穏やかににっこり笑った形で固定されているような切れ長の目を見開いて、母の声に気が付き同じく目を見開き凍り付いたようになっている兄と、ニコニコあどけなく嬉しそうにしている弟を凝視した。

「あ、母様~ ラン、ぺたぺた出たから大人に近づいたんだって~ 兄さんがこれからぺたぺただしてくれるの❤」

「メテオ…… ちょっとこっちにいらっしゃい」

 生まれてこのかた母の笑顔を、これほど恐ろしいと感じた事はなかった。しかし危なかった。母が来てくれたおかげで、手をかけたとはいえ、その後禁断の扉を何とか開けないですんだ。

 頭がのぼせたようになっていたメテオはほっとしたせいか急激に身体の力がぬけて、しかし頭はまだかっかとしたまま。
 鼻の奥にどろりと何かが溢れていく感覚に下を向くと……

「きゃああ。お兄ちゃん、鼻血!! ぽたぽたしてる!! 大変!!」
「きゃああ。メテオ! タオル! タオル!」

 ランにぺたぺたを先ほど拭いたタオルを押し付けられ、もはや何が何だかわからない状態で、騒ぎを聞きつけてやってきたメルトに呆れられ嗤われ……。

 騒がしい朝の一幕だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

甘い香りは運命の恋~薄幸の天使Ωは孤高のホストαに溺愛される~

氷魚(ひお)
BL
電子書籍化のため、2024年4月30日に、一部を残して公開終了となります。 ご了承ください<(_ _)> 電子書籍の方では、暴力表現を控えめにしているので、今よりは安心して読んで頂けると思います^^ ※イジメや暴力的な表現、エロ描写がありますので、苦手な方はご注意ください ※ハピエンです! ※視点が交互に変わるため、タイトルに名前を記載しています <あらすじ> 白亜(はくあ)が10歳の時に、ママは天国へ行ってしまった。 独りぼっちになり、食堂を営む伯父の家に引き取られるが、従姉妹と伯母にバカと蔑まれて、虐められる。 天使のように純粋な心を持つ白亜は、助けを求めることもできず、耐えるだけの日々を送っていた。 心の支えは、ママからもらった、ぬいぐるみのモモだけ。 学校にも行かせてもらえず、食堂の手伝いをしながら、二十歳になった。 一方、嶺二(れいじ)は、ナンバーワンホストとして働いている。 28歳と若くはないが、誰にも媚びず、群れるのが嫌いな嶺二は、「孤高のアルファ」と呼ばれ人気を博していた。 家族も恋人もおらず、この先も一人で生きていくつもりだった。 ある日、嶺二は、不良に絡まれた白亜を見かける。 普段なら放っておくはずが、何故か気にかかり、助けてしまった。 偶然か必然か。 白亜がその場で、発情(ヒート)してしまった。 むせかえるような、甘い香りが嶺二を包む。 煽られた嶺二は本能に抗えず、白亜を抱いてしまう。 ――コイツは、俺のモノだ。 嶺二は白亜に溺れながら、甘く香るうなじに噛みついた…!

《完結》狼の最愛の番だった過去

丸田ザール
BL
狼の番のソイ。 子を孕まねば群れに迎え入れて貰えないが、一向に妊娠する気配が無い。焦る気持ちと、申し訳ない気持ちでいっぱいのある日 夫であるサランが雌の黒い狼を連れてきた 受けがめっっっちゃ可哀想なので注意です ハピエンになります ちょっと総受け。 オメガバース設定ですが殆ど息していません ざまぁはありません!話の展開早いと思います…!

a pair of fate

みか
BL
『運命の番』そんなのおとぎ話の中にしか存在しないと思っていた。 ・オメガバース ・893若頭×高校生 ・特殊設定有

生意気オメガは年上アルファに監禁される

神谷レイン
BL
芸能事務所に所属するオメガの彰(あきら)は、一カ月前からアルファの蘇芳(すおう)に監禁されていた。 でも快適な部屋に、発情期の時も蘇芳が相手をしてくれて。 俺ってペットか何かか? と思い始めていた頃、ある事件が起きてしまう! それがきっかけに蘇芳が彰を監禁していた理由が明らかになり、二人は……。 甘々オメガバース。全七話のお話です。 ※少しだけオメガバース独自設定が入っています。

毒/同級生×同級生/オメガバース(α×β)

ハタセ
BL
βに強い執着を向けるαと、そんなαから「俺はお前の運命にはなれない」と言って逃げようとするβのオメガバースのお話です。

この恋は運命

大波小波
BL
 飛鳥 響也(あすか きょうや)は、大富豪の御曹司だ。  申し分のない家柄と財力に加え、頭脳明晰、華やかなルックスと、非の打ち所がない。  第二性はアルファということも手伝って、彼は30歳になるまで恋人に不自由したことがなかった。  しかし、あまたの令嬢と関係を持っても、世継ぎには恵まれない。  合理的な響也は、一年たっても相手が懐妊しなければ、婚約は破棄するのだ。  そんな非情な彼は、社交界で『青髭公』とささやかれていた。  海外の昔話にある、娶る妻を次々に殺害する『青髭公』になぞらえているのだ。  ある日、新しいパートナーを探そうと、響也はマッチング・パーティーを開く。  そこへ天使が舞い降りるように現れたのは、早乙女 麻衣(さおとめ まい)と名乗る18歳の少年だ。  麻衣は父に連れられて、経営難の早乙女家を救うべく、資産家とお近づきになろうとパーティーに参加していた。  響也は麻衣に、一目で惹かれてしまう。  明るく素直な性格も気に入り、プライベートルームに彼を誘ってみた。  第二性がオメガならば、男性でも出産が可能だ。  しかし麻衣は、恋愛経験のないウブな少年だった。  そして、その初めてを捧げる代わりに、響也と正式に婚約したいと望む。  彼は、早乙女家のもとで働く人々を救いたい一心なのだ。  そんな麻衣の熱意に打たれ、響也は自分の屋敷へ彼を婚約者として迎えることに決めた。  喜び勇んで響也の屋敷へと入った麻衣だったが、厳しい現実が待っていた。  一つ屋根の下に住んでいながら、響也に会うことすらままならないのだ。  ワーカホリックの響也は、これまで婚約した令嬢たちとは、妊娠しやすいタイミングでしか会わないような男だった。  子どもを授からなかったら、別れる運命にある響也と麻衣に、波乱万丈な一年間の幕が上がる。  二人の間に果たして、赤ちゃんはやって来るのか……。

【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜

MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね? 前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです! 後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛 ※独自のオメガバース設定有り

エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない

小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。 出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。 「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」 「使用人としてでいいからここに居たい……」 楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。 「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。 スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。

処理中です...