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ぼく病気になっちゃった1
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本篇のイメージ壊れる方は回れ右を……
ショタランとメテオの迷走劇。お楽しみください。
その日はいつも通りの朝だった。ぽかぽかとした日差しが母のお手製のパッチワークの黄色い花を模した布団カバーの上に陽だまりを作っている。
ここは調香師メルト・アスターの自宅の2階ある、息子二人の部屋。
朝になって兄のメテオが開けてくれた窓からはカーテンを揺らしてそよそよと温い風が入ってくる。窓辺に吊るされたラベンダーのサシェも揺れて、枕元のそれと共に穏やかなまた眠りに誘われそうな甘い香りを届けてくれる。
いつも通りの穏やかな朝。
しかし温もり溢れる寝台の中、幼いランは途方に暮れていた。
(どうしよう…… どうしたらいいの?)
その日の朝、ランは内容もうなにか覚えていないけれど少しふわふわとした夢を見て、いつも通り自室の寝台で目を覚ました。
もしかしたら兄が足の間にランを抱えて抱っこしてくれて、商店街の坂の上にある港を見下ろせる公園で二人で星をみていたとか、兄と市場に好物のトマトに砂糖が掛かった串を買いに行くとか、そんな甘い夢だったのかもしれない。
ランにとって起きてる時も、もしかしたら眠っている時も、一番幸せを感じる瞬間と言っえば、8つ年の離れた兄のメテオと一緒にいるひと時をあげるだろう。
血のつながらぬ兄だが、いつでもランのことを気遣い、それはもう本当に大切にしてくれる。商店街のパン屋のお姉さんに言わせれば過保護過干渉しつこすぎなのだそうだが、ランは別にいつだって兄が一緒なのは嬉しい。
ハンサムで優しくて賢くて。大好きなランだけのお兄ちゃんだ。
これはもうランが幼いころからの習慣で、共に同じ寝台を使って寝起きしている兄のメテオは、今日は父の手伝いで朝から工房に行くらしく早起きしていた。すでに身支度を済ませて部屋を出ていったようだ。
現在育ち盛りのランの睡眠をしっかり確保するために、夜遅くまで父と工房で作業した時や朝早く出ていくときなど、いつでもランを起こさぬように細心の注意を払ってくれている。兄のぬくもり残る心地よい寝台の中、おかげで今朝もランは少し御寝坊をしてしまった。
いつもだったらたっぷり眠ったあとのとても爽やかな目覚め。すぐに飛び起きて子猫が背を伸ばすようにぐいーんと腕や背中を伸ばして、そのあとすぐにまずは一階の洗面台まで元気に駆け下りていく。
しかし今朝は様子が違っていた。ランは何故か寝巻の下、自分の下着が濡れていることに気が付いて心底泣きそうになっていたのだ。
おねしょなんて最後にしたのは記憶にないほどずっと昔。ごくごく幼い頃も夜中にトイレに行きたくなるのを見計らって、兄が抱き上げて連れて行ってくれていた。トイレに向かうまで暗い思いも怖い思いもせずに伸び伸びと用を足して。おねしょに至ることなんてなかった。
ところが…… もうじき12歳、少しずつ兄から店のことを教えてもらい始めて『何年かしたらお店に一緒に立とうな』とメテオと約束したところだというのに、急に粗相をしてしまったなんて。恥ずかしくてとても兄や父母に言えそうもない。
ランは恥ずかしくてたまらず、真っ赤の顔のまま、布団にくるまって、もじもじ、もぞもぞを繰り返していた。
(一階の洗面台までいって、こっそり下着洗いたいけど、階段を降りてすぐにお兄ちゃんに会っちゃったらどうしよう)
メテオは兎に角ランの言動に目ざといから、すぐに普段との様子の違いに感づかれてしまうかもしれない。日頃から着替えて一階に降りてから朝食をとっていればよかったのだが、まずは洗面台にいき、家族に挨拶してそのまま朝食をとって着替えて…… そんな流れに最近はなっていたから着替えて降りたらすぐに異変に感づかれてばれてしまうだろう。
(お兄ちゃん、今日だって朝までずっと抱っこしてくれて眠っていたのに。朝になってお兄ちゃんが起きてからこんなことになっちゃってたら変だって思われちゃう)
しかも何故か股の間のあらぬ部分が起き抜けからじんじんしたままで、何故だか硬くはれ上がっている。恐る恐る手を伸ばして指先でつんっと触れると、さらに硬くなった。しかもなにかその場所からぞわぞわと変な感じがじわりと伝わってきて、ランはいよいよ泣き出しそうになってしまった。
「ふぇっ?! なんでぇ???」
おねしょはするし、こんなところが腫れてくるし、こんなのおかしい。
「どうしよう。僕病気になっちゃったかも」
そんな時突然部屋の扉がかちゃりといったので、ランは身を竦ませた。
ショタランとメテオの迷走劇。お楽しみください。
その日はいつも通りの朝だった。ぽかぽかとした日差しが母のお手製のパッチワークの黄色い花を模した布団カバーの上に陽だまりを作っている。
ここは調香師メルト・アスターの自宅の2階ある、息子二人の部屋。
朝になって兄のメテオが開けてくれた窓からはカーテンを揺らしてそよそよと温い風が入ってくる。窓辺に吊るされたラベンダーのサシェも揺れて、枕元のそれと共に穏やかなまた眠りに誘われそうな甘い香りを届けてくれる。
いつも通りの穏やかな朝。
しかし温もり溢れる寝台の中、幼いランは途方に暮れていた。
(どうしよう…… どうしたらいいの?)
その日の朝、ランは内容もうなにか覚えていないけれど少しふわふわとした夢を見て、いつも通り自室の寝台で目を覚ました。
もしかしたら兄が足の間にランを抱えて抱っこしてくれて、商店街の坂の上にある港を見下ろせる公園で二人で星をみていたとか、兄と市場に好物のトマトに砂糖が掛かった串を買いに行くとか、そんな甘い夢だったのかもしれない。
ランにとって起きてる時も、もしかしたら眠っている時も、一番幸せを感じる瞬間と言っえば、8つ年の離れた兄のメテオと一緒にいるひと時をあげるだろう。
血のつながらぬ兄だが、いつでもランのことを気遣い、それはもう本当に大切にしてくれる。商店街のパン屋のお姉さんに言わせれば過保護過干渉しつこすぎなのだそうだが、ランは別にいつだって兄が一緒なのは嬉しい。
ハンサムで優しくて賢くて。大好きなランだけのお兄ちゃんだ。
これはもうランが幼いころからの習慣で、共に同じ寝台を使って寝起きしている兄のメテオは、今日は父の手伝いで朝から工房に行くらしく早起きしていた。すでに身支度を済ませて部屋を出ていったようだ。
現在育ち盛りのランの睡眠をしっかり確保するために、夜遅くまで父と工房で作業した時や朝早く出ていくときなど、いつでもランを起こさぬように細心の注意を払ってくれている。兄のぬくもり残る心地よい寝台の中、おかげで今朝もランは少し御寝坊をしてしまった。
いつもだったらたっぷり眠ったあとのとても爽やかな目覚め。すぐに飛び起きて子猫が背を伸ばすようにぐいーんと腕や背中を伸ばして、そのあとすぐにまずは一階の洗面台まで元気に駆け下りていく。
しかし今朝は様子が違っていた。ランは何故か寝巻の下、自分の下着が濡れていることに気が付いて心底泣きそうになっていたのだ。
おねしょなんて最後にしたのは記憶にないほどずっと昔。ごくごく幼い頃も夜中にトイレに行きたくなるのを見計らって、兄が抱き上げて連れて行ってくれていた。トイレに向かうまで暗い思いも怖い思いもせずに伸び伸びと用を足して。おねしょに至ることなんてなかった。
ところが…… もうじき12歳、少しずつ兄から店のことを教えてもらい始めて『何年かしたらお店に一緒に立とうな』とメテオと約束したところだというのに、急に粗相をしてしまったなんて。恥ずかしくてとても兄や父母に言えそうもない。
ランは恥ずかしくてたまらず、真っ赤の顔のまま、布団にくるまって、もじもじ、もぞもぞを繰り返していた。
(一階の洗面台までいって、こっそり下着洗いたいけど、階段を降りてすぐにお兄ちゃんに会っちゃったらどうしよう)
メテオは兎に角ランの言動に目ざといから、すぐに普段との様子の違いに感づかれてしまうかもしれない。日頃から着替えて一階に降りてから朝食をとっていればよかったのだが、まずは洗面台にいき、家族に挨拶してそのまま朝食をとって着替えて…… そんな流れに最近はなっていたから着替えて降りたらすぐに異変に感づかれてばれてしまうだろう。
(お兄ちゃん、今日だって朝までずっと抱っこしてくれて眠っていたのに。朝になってお兄ちゃんが起きてからこんなことになっちゃってたら変だって思われちゃう)
しかも何故か股の間のあらぬ部分が起き抜けからじんじんしたままで、何故だか硬くはれ上がっている。恐る恐る手を伸ばして指先でつんっと触れると、さらに硬くなった。しかもなにかその場所からぞわぞわと変な感じがじわりと伝わってきて、ランはいよいよ泣き出しそうになってしまった。
「ふぇっ?! なんでぇ???」
おねしょはするし、こんなところが腫れてくるし、こんなのおかしい。
「どうしよう。僕病気になっちゃったかも」
そんな時突然部屋の扉がかちゃりといったので、ランは身を竦ませた。
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