香りの鳥籠 Ωの香水

天埜鳩愛

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番外編 貴方の香りに包まれたい5

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 メテオはランの素直さに打たれ、自らも迎えに行くようにランを抱き寄せる。ランの自分より一回り以上小さな身体を自分の上に乗せるようにしたまま、ごろんと寝台に転がった。

 疲れのせいかフェロモンに当てられたせいか、いつもはひた隠しにして抑えている嫉妬深さを前面に出してしまった自分が本当に恥ずかしい。
 ずっとランの前では年長の兄として格好をつけて、知らず無理をしてきた部分もある。ランを愛するために、ランを守るために生きてきたと自負してきたが、それは大きな間違いだ。
 本当はメテオがランから返される大きな愛に守られて生きてきた。

 だがきっと聡いランにはメテオの愚かな嫉妬心も、なぜ起こるのかうまく説明できない焦りも、きっとお見通しだったかもしれない。
 抱き込んだ腕の中でランは『くふふっ』とそれは楽しそうに笑って身をよじっている。

 そのままのメテオでも、ランはずっと愛してくれていたのだろう。器用なふりを続けてきた不器用なメテオを、広い心で愛してくれた。

 そして自分も寂しかった、無事に帰ってきてくれて嬉しいと、ランは素直に言って欲しい言葉をメテオに返してくれる。

 番になって家族として離れることは絶対にないというのに。これ以上望むことなどないのに、どうして手に入れても傍にいても途方もなく彼の愛を求めてしまうのだろう。いくらでも欲しくて、時折抑えが利かなくなる。
 生きていく限りその飢えは続く気がした。
 アルファとしてオメガであるランにどうしようもなく惹かれ、どうしようもなく囚われる自分がいるのだ。

 欲深い自分の暗く愚かな嫉妬心までも明るく笑い飛ばせるランに、メテオはまた明るく光り輝く愛をもって闇を飛ばすように照らし返された。
 今更ながら情けない顔を隠すようにしてランを胸元に抱き込んだら、ランは腹の上でもぞもぞしてその拘束から這い出てきた。そのまま口をとがらせるようにして愛らしくねだる。

「お、にい、ちゃん、い、れ、て」

 せっかく素直になって恥ずかしい台詞までいったのに今度は兄がおとなしくなって引いてしまったから、ランのほうがより積極的になる。脚を大胆に開いて兄の身体を跨ぐと、また腰を無意識に摺り寄せるのが、甘えているようでもあり、煽っているようでもありたまらない。

 そのまま身体の両側に手をついて上の方に伸び上がると兄の顔を下から覗き込むようにして目を合わせ、ちゅっちゅっと顔中にキスを降らす。
 それは幼い頃ランがいじけているときに兄がご機嫌を取るためしてくれた仕草を真似ているのだ。
 そんなことをされたら、本当に胸が切なくて愛おしくて死にそうになる。そしてぐりぐりと腰を押し付けて誘惑してくるからもう本当に勘弁してほしい。
 粘膜同士が腰もとで触れ合い、敏感さを増した感覚ではそれだけで爆発しそうになった。
 メテオは耐えきれなくなりランの暖かですべらかな尻たぶの感触を確かめるようにやわやわともみながら掴みあげると泥濘の入り口を鬼頭で探り当てる。
 濡れてはいるがヒートの時ほどの解れではない。それでも番になってから三日と空けずに兄を迎え入れてきた内襞はすでに綻び、兄を迎え入れる予感にひくひくと蠢いていた。
 ランはひたと視線を兄に合わせ、赤く潤んだ瞳とわななく唇でもって誘惑を繰り返す。
「おねがい」

 迸るランの芳香。オメガの香りにメテオも包まれる。
 興奮で背筋がぞくぞくとし、ランにまた番った時ぐらい深く噛みついてしまうかと思った。
 ランはふるっと身震いし、目元に紅をさしたような色めいた表情を見せつけながら、兄の陽物に手を触れ自ら迎え入れようとした。しかし兄はその手首をきつく掴んでもう片方の手をもぎゅっと拘束する。
 そしてつましい孔の入口から媚肉を割り開いていくように一気に貫いた。

「ひぃっ ふかいぃ」

 兄のものは長く大きいのだ。いきなり深くに穿たれたとおもったら、あやまたずずるずると引き抜かれ、また間髪置かず貫かれる。初めからガツガツと下から腰をふられたから、ランは目の前に星が飛んだようなチカチカと点滅する快感に頭が真っ白になる。触りもしないのにぶるっと震えて前から白いものを放ち兄の腹を汚してしまう。

「ラン、あったかい。すごく、気持ちいい」

 メテオも素直すぎる言葉を呟きながら遠慮なく突き上げる。
 ただつくだけでなく奥の部分を探るようにぐりぐりと入れたかと思えば、鬼頭が引っかかる部分を見つけてそこを重点的に攻め、ランを身悶えさせ気を狂わせんばかりに苛んだ。
 息が絶え絶えになってきたランを身を入れ替えて下に組み敷いたのち、今度は背中に腕を回してぴったりと包み込むように羽交い絞めに抱き込むと、華奢な身体ごと大きく揺さぶる。

「だめだ。腰とまんないっ ラン、愛してる」

 兄に応えたいが、ゆさゆさと内臓すべてが揺すられているような独特の快感にランは気をやりかけ、もはや喘ぎ声が止まらない。
 最奥に放ちたくて夢中で穿つことをやめないメテオの背に爪を立てながら、ランは大人びた苦し気な表情で艶めかしく声を一段と張り上げる。

(香水とはやっぱり全然違う。兄さんのホンモノのかおり)

 兄の香りに包まれて、苦しいぐらいに愛されている。
 それでもこの言葉だけは言いたくて、切れ切れの吐息の中で兄の首筋から濃厚なフェロモンを吸いこみながらランは呟く。

「めてお、すき」

 メテオはその言葉をも我が物にするかのように自らの大きな口でもって塞ぐ。ランの唇と喘ぎ声、最後の悲鳴までも飲み込みながら絶頂を迎えて律動を繰り返すランの最奥をしつこく摺り上げながらついに解き放った。

 びくっびくっと敏感になった身体が無意識に跳ね上がり続けたがやがて落ち着き、メテオも放ったもので汚れた屹立を抜き去ると鉛のように重たくなった身体を横たわせその後仰向けに寝転んで目を閉じた。

 長旅に疲れ果てたメテオも、眠っていたところを起こされたランも。

 散乱した服と寝具でぐちゃぐちゃになった寝台の上、兄弟は折り重なるように伏して気を失うように深い眠りに誘われた。

 濃厚な情事の後には互いのフェロモンと、僅かに残る香水の残り香りが名残惜し気に漂っていた。

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