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⑧両片思いの二人の恋物語 『隣の星の人』
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惚れっぽい奴と思われている受ちゃん。
大体一番上等な男に憧れてしまう。
今日もちょっと気になっていた人が結婚するとあり、ちょっぴりに落ち込んでる。そんな時、決まってほろ酔いになり電話をする相手がいる。
学生時代からの面倒見のいい親友だ。
「でさあ、一袋12個しか入ってないっていうのに2個も腐ってたんだよ、酷くねぇ?」
金曜の仕事帰り、駅からとぼとぼと歩きながらぼやく。
『みかんの事は分かった。箱で届いてるから、取りに寄ればいいだろ」
「やったあ。お前んとこの奴は小粒で旨い」
『それで?』
「だから、みかんが」
はあっとため息をつかれた。
『違うだろ。お前が酔って俺に電話してくる時は……』
「流石、心の友。そう俺。落ち込んでんの。ちょっといいなって思ってた人、また結婚。まあ俺が好きになるような男はさ」
丁度屋根の上に覗くオリオン座が目に入った。
「一等星みたいな人なわけ。仕事もできて顔良し、性格良し。そういうキラキラした人じゃないと惹かれないんだよね」
『……お前さ、そんなこと言って本気で恋人作る気ないんだろ』
「……仕方ないだろ」
(お前以上のリゲルなんて、見つからねぇ)
学生時代、誰よりも光を放っていた彼に憧れていた。
そう言いたかったが、折角親友という位置で傍にいられるのだから、それを壊してまで告白したいとは思えない。代わりの誰かを好きになればいいとも思うが、どうしても本気になれない。それでフラれた事もある。もう一番輝く星を知っているから。今は無理そうな相手に憧れるゴッコ遊びを繰り返すだけ。
たまにどうしようもなく空しくなった時は、性懲りもなく愛しい親友の声を聞きたくてこうして通話してしまう。
「俺なんて星ならいいとこ三等星。釣り合わないから、仕方ない」
『なんだそれ。お前さ。星の輝きなんて距離だろ距離。俺が隣の星に住んでるとしたら、お前も大概眩しい奴だと感じるぞ』
ぶわっと涙が噴き出して、もう止まらなくなった。
「やっぱ……。いい。今日寄らない」
(ああ、つらい。こいつの事好きすぎて辛い)
あともう少し、あの角を曲がったらあいつの家だ。自分の家はもっと先。学生時代から変わらない。だけど踵を返して、手前の角から横道に足早に向かう
『どうした?』
泣いているのがばれるかもしれない。今日はちょっと酔っているから、今すぐ言い訳や笑顔を作れそうにない。冷たい空気ごと、鼻水を啜って下を向いたら涙が零れた。
「つらい」
後ろから足音がして急に誰かに抱きすくめられた。
「そんなにそいつの事好きだったのか?」
耳元で大好きな親友の声がする
驚いて身動きが取れない。レジ袋から飛び出したみかんが足元を転がっていった。
「もう、俺にしとけって。隣でみたら、俺もそこそこ光ってるだろ?」
胸がいっぱいで声が出ない。顔をごしごしと擦ったらもっと強く抱きしめられた。
「泣くほど好きだったのか」
「泣きたいほど大好きだよ」
終
大体一番上等な男に憧れてしまう。
今日もちょっと気になっていた人が結婚するとあり、ちょっぴりに落ち込んでる。そんな時、決まってほろ酔いになり電話をする相手がいる。
学生時代からの面倒見のいい親友だ。
「でさあ、一袋12個しか入ってないっていうのに2個も腐ってたんだよ、酷くねぇ?」
金曜の仕事帰り、駅からとぼとぼと歩きながらぼやく。
『みかんの事は分かった。箱で届いてるから、取りに寄ればいいだろ」
「やったあ。お前んとこの奴は小粒で旨い」
『それで?』
「だから、みかんが」
はあっとため息をつかれた。
『違うだろ。お前が酔って俺に電話してくる時は……』
「流石、心の友。そう俺。落ち込んでんの。ちょっといいなって思ってた人、また結婚。まあ俺が好きになるような男はさ」
丁度屋根の上に覗くオリオン座が目に入った。
「一等星みたいな人なわけ。仕事もできて顔良し、性格良し。そういうキラキラした人じゃないと惹かれないんだよね」
『……お前さ、そんなこと言って本気で恋人作る気ないんだろ』
「……仕方ないだろ」
(お前以上のリゲルなんて、見つからねぇ)
学生時代、誰よりも光を放っていた彼に憧れていた。
そう言いたかったが、折角親友という位置で傍にいられるのだから、それを壊してまで告白したいとは思えない。代わりの誰かを好きになればいいとも思うが、どうしても本気になれない。それでフラれた事もある。もう一番輝く星を知っているから。今は無理そうな相手に憧れるゴッコ遊びを繰り返すだけ。
たまにどうしようもなく空しくなった時は、性懲りもなく愛しい親友の声を聞きたくてこうして通話してしまう。
「俺なんて星ならいいとこ三等星。釣り合わないから、仕方ない」
『なんだそれ。お前さ。星の輝きなんて距離だろ距離。俺が隣の星に住んでるとしたら、お前も大概眩しい奴だと感じるぞ』
ぶわっと涙が噴き出して、もう止まらなくなった。
「やっぱ……。いい。今日寄らない」
(ああ、つらい。こいつの事好きすぎて辛い)
あともう少し、あの角を曲がったらあいつの家だ。自分の家はもっと先。学生時代から変わらない。だけど踵を返して、手前の角から横道に足早に向かう
『どうした?』
泣いているのがばれるかもしれない。今日はちょっと酔っているから、今すぐ言い訳や笑顔を作れそうにない。冷たい空気ごと、鼻水を啜って下を向いたら涙が零れた。
「つらい」
後ろから足音がして急に誰かに抱きすくめられた。
「そんなにそいつの事好きだったのか?」
耳元で大好きな親友の声がする
驚いて身動きが取れない。レジ袋から飛び出したみかんが足元を転がっていった。
「もう、俺にしとけって。隣でみたら、俺もそこそこ光ってるだろ?」
胸がいっぱいで声が出ない。顔をごしごしと擦ったらもっと強く抱きしめられた。
「泣くほど好きだったのか」
「泣きたいほど大好きだよ」
終
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