6 / 13
⑥本篇あり バイト先の気になるイケメンに助けてもらう話
しおりを挟む
昨晩風雨が強かった。バイト先の窓掃除を頼まれた頑張り屋の受君。Ωだが女性ばかりの職場で彼が一番長身だ。頼りにされるのは嬉しい。窓ふき掃除を買って出た。ぺっちょりとくっついた葉っぱにあと少しで手が届く。背伸びをしたら脚立に載った足元がぐらっと揺れる
「ひゃあ」
受君、運動神経がそこそこいい。くるりと受け身を取り、地面に着地しようと試みた。まさか箒を投げ捨て、誰かが突っ込んでくるとは読めなかった
空中でその相手と目があう。
見知った顔に驚いた。彼は向かいのカフェのイケメン店員さんだった。焦った顔で受けに向かって必死に腕を伸ばしてくる
「「危ない!」」
行きかう人も、店から見守る仲間も思わず目を覆いかける。だが次の瞬間、動体視力も体幹もずば抜けている攻君が、ペアダンスのリフトが如く、落ちてくる受君を抱きかかえた。脇から胸へと腕を回して半回転。受の長い脚が優雅にくるんっと宙を舞う。周囲から歓声と拍手が自然と沸いた
派手な音を立てて倒れた脚立の音にも驚いて、受君すぐには声が出なかった。気がついたら見た目よりずっと逞しい、攻の身体の上に寝そべるように抱きしめられていた。
受が頬を寄せた胸板は逞しく温かい。なんだか心惹かれる香りもする。今更ながら驚きと興奮が襲ってきて、心臓がドキドキと喧しい。
目を潤ませ呆然としていたら、彼が背中を起こし、はーっと安堵の息をつく。
「怪我はない?」
そっと覗き込まれた目が優しい。
穏やかな声に罪悪感が沸き起こった。かなりの衝撃があったが、受君は痛くもかゆくもない。その代わり彼がかなり痛い思いをしたはずなのに、真っ先に自分を気遣ってくれた
「俺のせいで……。ごめんなさい」
双方の店の中から仲間たちがわらわらと出てきた。二人それぞれに声をかけてくるが、二人はしばし互いの目を見つめ合ったまま動けないでいる。
(ごめん、なのに。ずっとこうしていたい)
受君は自然とそう願ってしまった。まるでずっと求めていた相手今やっと
出会えたようなそんな不思議な感覚にとらわれる。
これまで彼とは挨拶程度の会話は何度もしたことがあるし、向かいの店から目があえば、人懐っこく爽やかに手を振ってくれた。
だけど自分の身を省みずに助けてくれるほど、受のことをを気にかけてくれているとは思いもよらなかった。
「ありがとう」
「君が無事でよかった」
駄目押しの様に乱れた前髪を直されて、彼の丁寧な手つきにうっとりとしてしまった。
「ほら、戻るよ」
仲間に促されてしぶしぶ立ち上がったが、攻君は腰に回した腕を離さない。それどころか受君の視界が、急にぎゅんっと上がり、足元が宙にふわっと浮いた。
「姫抱っこっ!」
攻めはいつも通り涼し気な目元で受君を抱き上げて歩く。
「頭を打っているといけない。休んで様子を見た方がいい」
「歩けますから。大丈夫です。貴方が守ってくれたから、俺、怪我してないです」
「君はいつでも頑張りすぎだと思う。それに打ち身は甘く見ない方がいい」
囁き合っている姿はまるで
二人だけの世界だったと、そういう風に周りからは見えていたらしい。
のちに二人がいい雰囲気になっていく予感が、このときすでに周囲の目には明らかだった。
「だってさあ、彼に抱き上げられた時、受君の身体の預け方が姫抱っこのプロって感じだった。推せる二人と思った」なんて謎に褒められた
彼の腕の中は殊の外心地よくて、胸のドキドキは収まる気配がない。受君が赤面した顔を両手で隠すと、攻君は小さく「可愛いな」と呟いて休憩室まで彼を意気揚々と運んでいった。 終💛
本編はラブコメオメガバース作品。「くんか、くんか Sweet」です。
「ひゃあ」
受君、運動神経がそこそこいい。くるりと受け身を取り、地面に着地しようと試みた。まさか箒を投げ捨て、誰かが突っ込んでくるとは読めなかった
空中でその相手と目があう。
見知った顔に驚いた。彼は向かいのカフェのイケメン店員さんだった。焦った顔で受けに向かって必死に腕を伸ばしてくる
「「危ない!」」
行きかう人も、店から見守る仲間も思わず目を覆いかける。だが次の瞬間、動体視力も体幹もずば抜けている攻君が、ペアダンスのリフトが如く、落ちてくる受君を抱きかかえた。脇から胸へと腕を回して半回転。受の長い脚が優雅にくるんっと宙を舞う。周囲から歓声と拍手が自然と沸いた
派手な音を立てて倒れた脚立の音にも驚いて、受君すぐには声が出なかった。気がついたら見た目よりずっと逞しい、攻の身体の上に寝そべるように抱きしめられていた。
受が頬を寄せた胸板は逞しく温かい。なんだか心惹かれる香りもする。今更ながら驚きと興奮が襲ってきて、心臓がドキドキと喧しい。
目を潤ませ呆然としていたら、彼が背中を起こし、はーっと安堵の息をつく。
「怪我はない?」
そっと覗き込まれた目が優しい。
穏やかな声に罪悪感が沸き起こった。かなりの衝撃があったが、受君は痛くもかゆくもない。その代わり彼がかなり痛い思いをしたはずなのに、真っ先に自分を気遣ってくれた
「俺のせいで……。ごめんなさい」
双方の店の中から仲間たちがわらわらと出てきた。二人それぞれに声をかけてくるが、二人はしばし互いの目を見つめ合ったまま動けないでいる。
(ごめん、なのに。ずっとこうしていたい)
受君は自然とそう願ってしまった。まるでずっと求めていた相手今やっと
出会えたようなそんな不思議な感覚にとらわれる。
これまで彼とは挨拶程度の会話は何度もしたことがあるし、向かいの店から目があえば、人懐っこく爽やかに手を振ってくれた。
だけど自分の身を省みずに助けてくれるほど、受のことをを気にかけてくれているとは思いもよらなかった。
「ありがとう」
「君が無事でよかった」
駄目押しの様に乱れた前髪を直されて、彼の丁寧な手つきにうっとりとしてしまった。
「ほら、戻るよ」
仲間に促されてしぶしぶ立ち上がったが、攻君は腰に回した腕を離さない。それどころか受君の視界が、急にぎゅんっと上がり、足元が宙にふわっと浮いた。
「姫抱っこっ!」
攻めはいつも通り涼し気な目元で受君を抱き上げて歩く。
「頭を打っているといけない。休んで様子を見た方がいい」
「歩けますから。大丈夫です。貴方が守ってくれたから、俺、怪我してないです」
「君はいつでも頑張りすぎだと思う。それに打ち身は甘く見ない方がいい」
囁き合っている姿はまるで
二人だけの世界だったと、そういう風に周りからは見えていたらしい。
のちに二人がいい雰囲気になっていく予感が、このときすでに周囲の目には明らかだった。
「だってさあ、彼に抱き上げられた時、受君の身体の預け方が姫抱っこのプロって感じだった。推せる二人と思った」なんて謎に褒められた
彼の腕の中は殊の外心地よくて、胸のドキドキは収まる気配がない。受君が赤面した顔を両手で隠すと、攻君は小さく「可愛いな」と呟いて休憩室まで彼を意気揚々と運んでいった。 終💛
本編はラブコメオメガバース作品。「くんか、くんか Sweet」です。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

使命を全うするために俺は死にます。
あぎ
BL
とあることで目覚めた主人公、「マリア」は悪役というスペックの人間だったことを思い出せ。そして悲しい過去を持っていた。
とあることで家族が殺され、とあることで婚約破棄をされ、その婚約破棄を言い出した男に殺された。
だが、この男が大好きだったこともしかり、その横にいた女も好きだった
なら、昔からの使命である、彼らを幸せにするという使命を全うする。
それが、みなに忘れられても_

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
【完結】小学生に転生した元ヤン教師、犬猿の仲だった元同僚と恋をする。
めんつゆ
BL
嫌われていると思っていたのに。
「どうやらこいつは俺の前世が好きだったらしい」
真面目教師×生意気小学生(アラサー)
ーーーーー
勤務態度最悪のアラサー教師、 木下 索也。
そんな彼の天敵は後輩の熱血真面目教師、 平原 桜太郎。
小言がうるさい後輩を鬱陶しく思う索也だったが……。
ある日、小学生に転生し 桜太郎学級の児童となる。
「……まさか、木下先生のこと好きだった?」
そこで桜太郎の秘めた想いを知り……。
真面目教師×生意気小学生(中身アラサー)の 痛快ピュアラブコメディー。
最初はぶつかり合っていた2人が、様々なトラブルを乗り越えてゆっくりと心通わせる経過をお楽しみいただけると幸いです。

俺の幼馴染はストーカー
凪玖海くみ
BL
佐々木昴と鳴海律は、幼い頃からの付き合いである幼馴染。
それは高校生となった今でも律は昴のそばにいることを当たり前のように思っているが、その「距離の近さ」に昴は少しだけ戸惑いを覚えていた。
そんなある日、律の“本音”に触れた昴は、彼との関係を見つめ直さざるを得なくなる。
幼馴染として築き上げた関係は、やがて新たな形へと変わり始め――。
友情と独占欲、戸惑いと気づきの間で揺れる二人の青春ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる