くんか、くんか Sweet ~甘くて堪らない、君のフェロモン~

天埜鳩愛

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第二章 HOW To ヒート!

7 推し活?!

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 こちらで過ごす間にあんなにおしゃれで身ぎれいにすることに気を使っている青葉が、ひどくもっさりしてしてしまって、自宅に帰った時に家族にがっかりされそうだ。
 はたまた青葉自身が居心地が悪いと、尊の家で過ごすことを嫌がってしまうのはないだろうか。どちらも尊の本意ではない。
 青葉を彼が思うままに生きられるようにしてあげたい。彼が楽しそうに生き生きと過ごす姿を見るのが、尊は大好きなのだ。

 それにただでさえ身体に負担がかかるヒート時に余計な気落ちをさせたくない。

(ヒートの時にあると便利なものを調べて……。あとはあれだなバイト先の子とかに青葉のいつも使ってるコスメのブランドとか聞いて、服も下着も、できるだけ気に入るようなものを買ってきてあげたい。よし、青葉の調子が良い間にちょっとだけ留守にして……。とにかく色々買い出しだ)

 幸い貯金はある。これだけは自慢できる。
 学生時代から陸上以外は無趣味で、貯めに貯めたお年玉を元手に父に倣って投資を始めたぐらいだ。姉とともにはまったアイドルも姉の遠征時についていくほどではなく、近隣で行うときに見に行っていた程度だから、他にどはまりしたものはない。
 現在は最初は出したもらった学費も生活費も親に半分以上返しながらでも、しっかり生活も貯金も運用もできている。

(今こそ使うときだ! これもある意味推し活!)

 せっかくだから青葉に着てもらいたいような服、彼の白い肌が映えそうな服や下着、激しい夜を過ごすうちになくなってしまっていたピアス、その代わりになるもの、自分のだぼだぼなスウェット姿も悪くはないが、もっと着心地がよさそうな夜具に枕。できればベッドすらもっと大きなものに買い替えてしまいたい。

「青葉、俺ちょっと……」
「あ、スマホ」

 買い物に行ってくるから留守にして大丈夫か? と尋ねようと思ったら聞きなれぬ着信音をたてベッドの下に落ちていた青葉のスマホがぶるぶると震えた。
 思えば夜中も何度か震えていた気がするが、それどころではなくて放置していたのだ。

 尊が拾い上げて青葉に手渡すと、青葉は一目見ただけで眉を顰めた。
 一瞬悪いと思いながらも視力も記憶力もすこぶる良い尊はそこに「こうちゃん」の文字が入っていたことに気をもんでしまった。

「うっわ。こうちゃん、やば。すごい着信履歴……」
「こうちゃん?」
 
 こうちゃんって誰? とか普通に口に出しそうになって尊は慌てて口をつぐんだ。

 過去のことは気にしないようにと。交友関係に口を出すのもあれかと思うし、でも気になる。
 
「こうちゃん、しつこいな。切ってやる。えいっ」

(しつこい、こうちゃん? やっぱり、こうちゃんって言った。こうちゃん、きっと男だよな……。男友達? こうちゃんって誰だ? 聞いたらいきなり束縛してるみたいで気分が悪いか? でも一体誰なんだ、こうちゃん)
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