40 / 71
第二章 HOW To ヒート!
2 甘い朝日
しおりを挟む
(とにかくこれから六日間、青葉を守り通すんだ)
そんな風に考えて不思議に思った。何から守り通すというのだろう。しいて言うならば自分の歯牙にかけないことが一番の守りなのかもしれない。
しかし番になると決めた今、青葉が『六日後に番になろう』といったその意思を守り通すことこそが、愛の証のように思えた。
「青葉、安心して、発情期を過ごそうね」
そんな風に声を掛けたら、ぴくりっと青葉の瞼が動いた。長い睫毛は元来の髪色と同じなのか艶々ふっさりとした漆黒だ。
身体は昨日抱いていた時よりずっと冷たく、暑がりな自分が使っている軽いタイプの夏掛けではもう寒いのかもしれない。胴の薄い温めるように身体をもう一度抱き込んだ。
するとまた睫毛が何度かそよいで大きな瞳がぱっちりと開く。すぐにまた眩しそうにもう一度ぎゅっとつぶられた。
「まぶし……、あつっ……、くるし……」
「ごめん。眩しかった? 暑い? 苦しい? ごめん!」
矢継ぎ早に誤って腕を緩めると、もぞもぞと動いた青葉が長く細い指を伸ばして何故だか尊の唇をむぎゅっとつまんできた。
「だからさ、なんですぐ謝んの? おはよ」
「おはよう」
かすれた声すら耳を甘くくすぐるほどセクシーだ。
こんなに間近で、明るい光の中で青葉をまじまじと見られたのは初めてかもしれない。
(肌綺麗だな……。真っ白。すべすべ。作り物みたいな綺麗さだ。あっちの国のアイドルとか女優さんとかこんな感じだよな。何食べたらこんな風に……)
「ちょっ、見すぎだって。寝起きなんだから!」
「ご、ごめん。あんまり綺麗で、つい……」
照れ屋なのか青葉は顔を真っ赤っかにしながら、顔を隠すように丸めたこぶしで目元をこする。
「はあ? ああっ。はずっ……。いや違くて、その、起き抜けだし顔とか汚いだろ? 絶対目ぇ腫れてるよ、これ。あの後すぐ俺、寝ちゃったし」
「あの後、ああ。三回目? いや四回目の後にちゃんと身体拭いたけど、気持ち悪い?」
「え……、あ。悪い。これ、スウェット、上だけ借りてるの、ありがと」
普段尊が一人で来ている上下を上を青葉、下を自分が着ているので尊は上半身が、青葉は下半身が裸のままだ。
故にもぞもぞっと青葉が動くたび身体がぶつかるのがドキドキするが、素肌を刺激されないだけまだましと自分に言い聞かせた。
あの肌にもう一度触れたら、今ですら我慢できるか自信がなくなる。
「朝に焚けるように風呂のお湯入れなおしてるから、入る?」
「え……、あ。でも今は、ちょっとまだだるいかな。それとお腹すいた。尊は?」
(青葉が俺のこと『尊』って呼んでる……。尊い……。恋人同士って最高だ)
名前を呼ばれただけでまた胸が甘くくすぐられてしまう。にやけてしまいそうになるのを抑えるのが大変だ。
「俺も腹ペコだな。なんか食べないとだね。薬も飲まないと。朝食、何か食べやすいもの用意するから待ってて」
今まで青葉に接してきていた時のようなクールな自分を少しでも取り戻そうとにこりと笑って、自分だけ起き上がった。
「手伝う」
続けて頑張り屋が染みついている青葉も身体を起こそうとしたのを手でそっと押しとどめる。
「青葉はまだ横になってて。夜中に飲んだ抑制剤が効いてるみたいだからヒートは緩めになってても身体はだるいんだと思うよ」
すると大きな目でまじまじと尊の顔を見上げてから、青葉はぽぽっと頬を薔薇色に染めて、夏掛けをよじよじと身体の前に恥ずかしそうに引き寄せた。
「うん、ありがと。うれしい」
あどけないはにかみ笑顔が愛らしい。自分が青葉の前で格好よく見せようとしていたように、青葉もまた外では必要以上に大人っぽい雰囲気を醸してバイト先の皆を引っ張っていたのだなあと思う。
(もっと沢山甘えて欲しい。甘やかしたいよ。君を)
思わず唇を近づけたら、青葉は反射的に目を瞑ってふるるっと唇を震わせた。慣れぬ仕草に胸がいっぱいになって、昨晩を意識させぬ優しい口づけで再び挨拶をつぶやいた。
「おはよう。青葉。これから六日間、よろしくね。番になる時、俺がいい。俺じゃなきゃ嫌だって君が改めて思えるように、俺に君を大事にお世話させて」
そんな風に考えて不思議に思った。何から守り通すというのだろう。しいて言うならば自分の歯牙にかけないことが一番の守りなのかもしれない。
しかし番になると決めた今、青葉が『六日後に番になろう』といったその意思を守り通すことこそが、愛の証のように思えた。
「青葉、安心して、発情期を過ごそうね」
そんな風に声を掛けたら、ぴくりっと青葉の瞼が動いた。長い睫毛は元来の髪色と同じなのか艶々ふっさりとした漆黒だ。
身体は昨日抱いていた時よりずっと冷たく、暑がりな自分が使っている軽いタイプの夏掛けではもう寒いのかもしれない。胴の薄い温めるように身体をもう一度抱き込んだ。
するとまた睫毛が何度かそよいで大きな瞳がぱっちりと開く。すぐにまた眩しそうにもう一度ぎゅっとつぶられた。
「まぶし……、あつっ……、くるし……」
「ごめん。眩しかった? 暑い? 苦しい? ごめん!」
矢継ぎ早に誤って腕を緩めると、もぞもぞと動いた青葉が長く細い指を伸ばして何故だか尊の唇をむぎゅっとつまんできた。
「だからさ、なんですぐ謝んの? おはよ」
「おはよう」
かすれた声すら耳を甘くくすぐるほどセクシーだ。
こんなに間近で、明るい光の中で青葉をまじまじと見られたのは初めてかもしれない。
(肌綺麗だな……。真っ白。すべすべ。作り物みたいな綺麗さだ。あっちの国のアイドルとか女優さんとかこんな感じだよな。何食べたらこんな風に……)
「ちょっ、見すぎだって。寝起きなんだから!」
「ご、ごめん。あんまり綺麗で、つい……」
照れ屋なのか青葉は顔を真っ赤っかにしながら、顔を隠すように丸めたこぶしで目元をこする。
「はあ? ああっ。はずっ……。いや違くて、その、起き抜けだし顔とか汚いだろ? 絶対目ぇ腫れてるよ、これ。あの後すぐ俺、寝ちゃったし」
「あの後、ああ。三回目? いや四回目の後にちゃんと身体拭いたけど、気持ち悪い?」
「え……、あ。悪い。これ、スウェット、上だけ借りてるの、ありがと」
普段尊が一人で来ている上下を上を青葉、下を自分が着ているので尊は上半身が、青葉は下半身が裸のままだ。
故にもぞもぞっと青葉が動くたび身体がぶつかるのがドキドキするが、素肌を刺激されないだけまだましと自分に言い聞かせた。
あの肌にもう一度触れたら、今ですら我慢できるか自信がなくなる。
「朝に焚けるように風呂のお湯入れなおしてるから、入る?」
「え……、あ。でも今は、ちょっとまだだるいかな。それとお腹すいた。尊は?」
(青葉が俺のこと『尊』って呼んでる……。尊い……。恋人同士って最高だ)
名前を呼ばれただけでまた胸が甘くくすぐられてしまう。にやけてしまいそうになるのを抑えるのが大変だ。
「俺も腹ペコだな。なんか食べないとだね。薬も飲まないと。朝食、何か食べやすいもの用意するから待ってて」
今まで青葉に接してきていた時のようなクールな自分を少しでも取り戻そうとにこりと笑って、自分だけ起き上がった。
「手伝う」
続けて頑張り屋が染みついている青葉も身体を起こそうとしたのを手でそっと押しとどめる。
「青葉はまだ横になってて。夜中に飲んだ抑制剤が効いてるみたいだからヒートは緩めになってても身体はだるいんだと思うよ」
すると大きな目でまじまじと尊の顔を見上げてから、青葉はぽぽっと頬を薔薇色に染めて、夏掛けをよじよじと身体の前に恥ずかしそうに引き寄せた。
「うん、ありがと。うれしい」
あどけないはにかみ笑顔が愛らしい。自分が青葉の前で格好よく見せようとしていたように、青葉もまた外では必要以上に大人っぽい雰囲気を醸してバイト先の皆を引っ張っていたのだなあと思う。
(もっと沢山甘えて欲しい。甘やかしたいよ。君を)
思わず唇を近づけたら、青葉は反射的に目を瞑ってふるるっと唇を震わせた。慣れぬ仕草に胸がいっぱいになって、昨晩を意識させぬ優しい口づけで再び挨拶をつぶやいた。
「おはよう。青葉。これから六日間、よろしくね。番になる時、俺がいい。俺じゃなきゃ嫌だって君が改めて思えるように、俺に君を大事にお世話させて」
1
お気に入りに追加
273
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
王様のナミダ
白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。
端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。
驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。
※会長受けです。
駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。
この恋は無双
ぽめた
BL
タリュスティン・マクヴィス。愛称タリュス。十四歳の少年。とてつもない美貌の持ち主だが本人に自覚がなく、よく女の子に間違われて困るなぁ程度の認識で軽率に他人を魅了してしまう顔面兵器。
サークス・イグニシオン。愛称サーク(ただしタリュスにしか呼ばせない)。万年二十五歳の成人男性。世界に四人しかいない白金と呼ばれる称号を持つ優れた魔術師。身分に関係なく他人には態度が悪い。
とある平和な国に居を構え、相棒として共に暮らしていた二人が辿る、比類なき恋の行方は。
*←少し性的な表現を含みます。
苦手な方、15歳未満の方は閲覧を避けてくださいね。
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる