くんか、くんか Sweet ~甘くて堪らない、君のフェロモン~

天埜鳩愛

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第一章 くんか、くんか SWEET

11 雨降り

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 長身に黒いパーカーに黒いパンツ。
 一見厳つい格好だがそう見えないのは彼の柔和で端正な顔立ちのおかげだろう。

(シンプルな私服だけど、背があるとそれだけでかなりカッコいいとか狡いな)

 目が合うと微笑まれたが、見惚れてしまった自分が恥ずかしくて青葉はすぐに目を反らした。

「お疲れ様、雨、降ってるね」
「お疲れ様です。まあまあザアザアですね」
「今日、こんな予報だったっけ?」
「ところにより一時雨って出てたけど、俺絶対雨に遭わない自信があったんですけど」
「晴れ男なの?」
「そうっすね。晴れ男、かな。傘持ち歩くことなくても何とかなってきた」
「そうなんだ。それにしても雨脚どんどん強くなるね」
「流石に凄すぎですよね……。ちょっと止むまでここで待とうかと思って」
「そうだな。俺もそうしようかな」

 そんな風に言葉を交わして、ちらりと小野寺を盗み見た。出入り口の灯りの下、雨を見つめる横顔は少しだけ物憂げにも見えて、色気が増して見える。

(背、たっかいな)

 小野寺は隣りにいると青葉がやはりやや首を上に傾けて見上げねばならぬほど長身だった。
 日頃女子学生ばかりの学部の中で、一七〇センチ半ばの青葉はやはり一番大きい。見た目と相まって王子様みたいにちやほやされているが、小野寺は長身なだけでなく鍛えているとわかる身体の厚みと、胸を張った立ち姿が超絶格好が良いと思う。
 その上この顔ときたら、綺麗な二重の瞳に長い睫毛、額から鼻梁、顎にかけての稜線が絶妙に整っていてイケメンだ。
 青葉も幼いころから「可愛い、美人」などと言われ続けてきたが、やっぱり格好いいと言われてみたかった。青葉の理想を具現化したような華やかかつ男性美溢れるプロポーションをひたすら羨ましく思った。

(いいよな、顔だけ見たら綺麗系なのに、がっしりもしてて。男でこのルックス。人生楽しくて仕方なさそう。俺だって高校まで結構モテてたのに、オメガって分かったら急に女の子から友達扱いはされるけどモテなくなった。進路だって元々子供が好きだからいいけど、ヒートに影響受けにくい女子や子供の多い職場の方がいいかなって保育士目指すことにしたぐらいだもんな。普通にベータかアルファだったら……。きっと違う人生送ってたんだろうな)

「なに?」
「あ、いや……」

 じっと見つめていたら小野寺がやや照れたように微笑んで、青葉のことを気遣うような顔つきで覗きこんできた。
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