香りの献身 Ωの香水

天埜鳩愛

文字の大きさ
上 下
214 / 222
溺愛編

発情3

しおりを挟む
 二人の重みに潰された花々からむっとする草いきれが立ち昇る。白い花びらが散った赤と緑の褥に横たわったヴィオの衣服をくつろげながら、セラフィンははやる気持ちを最早抑えきれなかった。

 登山に適した硬くごわごわとした色気も味気もない砂色のボトムを下履きごと剥ぎ取り、そのまま自身も上着を脱ぎ去って、後ろに向けて放り投げた。

 一迅の冷たい風が短くなったセラフィン黒髪を揺らし、熱く燃え上がる身体に強く吹き付けていったがそれをものともしない。
 ヴィオは下半身だけ外気に晒したしどけない姿でちらりと見上げた空の眩しさに袖で目元を覆った。先ほどの口づけで濡れた蠱惑的な赤い唇だけがぽっかりと開いて婀娜っぽい吐息を漏らしている。

 その熱い手を指先を握るようにして外させると、こんなにも明るい光の下、日の光が差し込んだ紫に緑、金の入り混じる不思議な色の虹彩が、完全に黄金に変じる奇跡のような光景を目の当たりにした。

「ヴィオ、瞳が金色に染まってる……。興奮しているんだね?」

 いつになっても初心なヴィオがふるふると首を振って恥ずかし気に顔を背けると、涙の透明な雫が煌きながら草むらに落ちていった。

「あんっ、ああ。セラ、いじわるしないで、早くちょうだい!」

 一度男を知った身体は恐れよりも疼きを強く感じ、赤い舌を見せつけながらはあはあと大きく息をつく。昨晩幼くあどけないとすら思った顔は、今は淫靡なまでの艶を湛えて男を誘う。その舌を舌先で悪戯するように舐めとるとヴィオは小鳥のように身を震わせ、可愛らしく喘ぐ。
 薬の効き目が薄れ本能に支配されるまでの僅かな間、セラフィンは恋人の媚態をぎりぎりまで堪能することにした。

「寒いかもしれないけど、全て脱がせてもいい? 俺に全部愛させて」

 優しく尋ねてはいるが有無を言わせぬ強引さで、セラフィンは前ボタンを次々に外していく。黒髪は波打つように広がり、艶々とガラスのような光沢を放つ。秋の日差しに照らされた素肌は甘い香りを放ちながら滑らかな淡い褐色に艶めいていた。風の冷たさで立ち上がる胸の飾りをヴィオはつないだ手を外して隠そうとするのをセラフィンは許さない。どこもかしこも若く瑞々しい肢体を全てを隠すことなく光の下に晒させ、涙の跡の残る美しい顔に手をかけ、仰向かせた。
 始まりの大地に仰向けたその姿は、神々しいまでの生命力にあふれ、生き生きと弾けんばかりの美しさを放っていた。

「……ヴィオ、凄く綺麗だ。この世で一番、誰より美しいよ」

 熱に浮かされたように呟くセラフィンの貌も、興奮から壮絶な美で彩られていた。ヴィオは青い空の下日を背にしてこちらを蕩けるような表情で見下ろす愛する人を、潤みかすむ瞳で見上げて苦しい息をつきながらも泣き笑いの顔をした。
 その仕草の可憐さに、セラフィンは衝動的に持ち上げた指先にそよぐように口づけて柔らかく食むが、そのまだ紳士的とさえいえる甘く優しい愛撫すら、身体中が感じやすく高まっているヴィオには甘美な責め苦に感じる。

「やあ、やっ! うう、早く! 早くきて!」

 ヴィオは苦し気に腰を煽情的にくねらせながら、長く細い脚をセラフィンの腰に回して引き寄せる。まるで名うての娼婦のような仕草に、セラフィンも煽られ、がさっと草むらに腕をつくと夢中でヴィオの真っ赤な唇を貪った。
 むっちりと柔らかな唇。熱い口内に溢れる唾液すら甘く、絡み合う舌を離すと弾む息すら奪うようにどちらともなく再び口づける。ヴィオの細い腕がセラフィンの背に回され、短くなった黒髪を悩ましい手付きでかき混ぜる。互いに噛みしめた果実は苦い血の味が染みたが、それすら今は甘美な媚薬のように感じ入る。足の間の互いに兆し屹立したものを擦り付けあい、喉は無意識に獣のような唸り声をたてた。

「ヴィオ、ヴィオ」

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
【陽気な庶民✕引っ込み思案の御曹司】 これまで何人の女性を相手にしてきたか数えてもいない生田雅紀(いくたまさき)は、整った容姿と人好きのする性格から、男女問わず常に誰かしらに囲まれて、暇をつぶす相手に困らない生活を送っていた。 それゆえ過去に囚われることもなく、未来のことも考えず、だからこそ生きている実感もないままに、ただただ楽しむだけの享楽的な日々を過ごしていた。 そんな日々が彼に出会って一変する。 自分をも凌ぐ美貌を持つだけでなく、スラリとした長身とスタイルの良さも傘にせず、御曹司であることも口重く言うほどの淑やかさを持ちながら、伏し目がちにおどおどとして、自信もなく気弱な男、久世透。 自分のような人間を相手にするレベルの人ではない。 そのはずが、なにやら友情以上の何かを感じてならない。 というか、自分の中にこれまで他人に抱いたことのない感情が見え隠れし始めている。 ↓この作品は下記作品の改稿版です↓ 【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994 主な改稿点は、コミカル度をあげたことと生田の視点に固定したこと、そしてキャラの受攻に関する部分です。 その他に新キャラを二人出したこと、エピソードや展開をいじりました。

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

彼は罰ゲームでおれと付き合った

和泉奏
BL
「全部嘘だったなんて、知りたくなかった」

処理中です...