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溺愛編
愛してる4
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ヴィオはセラフィンの姿を認めると、節々痛む身体をものともせずに飛び起きて寝台を飛び降りる。そしてややふらつきながらふわふわとうねる髪を振り乱し、思い切りよくセラフィンに抱き着いた。
「どうしたんだ? ヴィオ? 身体は大丈夫なのか? 」
勢いよくヴィオに飛びつかれてもよろけることもない。長身で見た目よりは筋力のあるセラフィンは、皿を取り落すこともなく穏やかな声でそんな風に気遣ってくるのが少し憎らしい。
「ゆ、夢見て……。起きたら、いなかったから」
擦り寄りながら素直に甘えてくるのがたまらなく可愛くて、普段よりもさらに甘い仕草でセラフィンは指先で頬に触れると微笑んだ。
「そうか。ついさっきまでずっと傍にいたんだけどな。一晩中、お前の寝顔を見ていたよ。たまに顔を顰めたり、微笑んだりと、眠っていても忙しそうで愛らしかった」
そう言って片腕を回して抱き止めてくれながら、目を合わせてくる。しかし急に昨日の妖艶な面差しが脳裏に蘇ったヴィオは恥ずかしくなって自分からセラフィンの胸に顔をうずめて赤面したのを隠してしまった。
「約束の時間は夕刻だ。まだ日が高いからゆっくり身体を休めなさい。昨日は無理をさせてしまって、すまなかったね」
益々羞恥が勝り、セラフィンの背なかに回した腕をぎゅうっとシャツの背中を掴んで動揺を反らす。昨晩のうちにセラフィンに清めてもらいつつも頭を振って乱れ切った髪はもつれて頭のてっぺんが雀の巣のようになっている。傾けた首にある無数の噛み痕を無防備に昼間の白々とした日の光に晒させ、セラフィンを密かに悦ばせた。
そんな恋人の初心な様子に益々甘やかな気分がましたセラフィンは、ヴィオを促してもう一度寝台に戻ると、青く煌く湖を見つめながら、昨晩の名残で腰がふらつく彼を膝上に抱き上げ口元に果物を運んでやった。
口いっぱいに甘酸っぱい黄色い果肉が弾け、ヴィオは昨晩ほとんどものを口にせずにいたから乾ききった喉を潤していく。ヴィオは夢中になって果実を頬張り、親鳥のように運んでくるセラフィンの指先まで食んでしまった。
「美味しいかい?」
後ろから囁かれヴィオはこくこくと頷いて振り返り、上目遣いににっこりすると、柔らかな舌でセラフィンの長く白い指先をちろりと舐めた。セラフィンは果実に濡れた赤い唇を親指で拭ってやりながら無意識の媚態に誘惑されて引き寄せられるように顔を近づけるとゆっくりと唇を押し付け、舌先で唇を舐めとった。
「ああ、本当だ。美味しい。甘いな」
口を離しても吐息が降りかかるほど間近で見た顔はいつ見ても綺麗で、ヴィオの心臓は性懲りもなくまた早鐘を打った。
(ずるいよ。セラ。昨日の夜、あんなことがあったのに。いつもよりずっと僕を甘やかそうとしてくるんだもん。恥ずかしくて顔が見られないよ)
瑞々しい果物の甘さよりも、こっくりと甘いセラフィンの囁きにヴィオはまたも赤面して、裾の長い衣の裾を捌きながら薄い褐色の脚を伸ばして立ちあがろうとした。甘い雰囲気を払拭し、ヴィオが逃げようとしたのを察したセラフィンは素早く後ろから両手でヴィオの腰を抱き込んで肩口に顔をうずめて邪魔をする。
「もう逃がさないよ。ヴィオ。勝手にどこにもいかないで」
セラフィンの黒髪が降りかかった部分すら熱をもって熱く感じ、そういえば昨晩ヴィオが許した通りセラフィンにどこもかしこも齧られ味見されそのあと頭から丸呑みにされるほど味わいつくされたのだとヴィオは思い、下肢がまたずくんと疼くのを止めらない。そして観念したようにセラフィンの胸に抱かれて幸せそうに瞳を閉じたのだった。
「どうしたんだ? ヴィオ? 身体は大丈夫なのか? 」
勢いよくヴィオに飛びつかれてもよろけることもない。長身で見た目よりは筋力のあるセラフィンは、皿を取り落すこともなく穏やかな声でそんな風に気遣ってくるのが少し憎らしい。
「ゆ、夢見て……。起きたら、いなかったから」
擦り寄りながら素直に甘えてくるのがたまらなく可愛くて、普段よりもさらに甘い仕草でセラフィンは指先で頬に触れると微笑んだ。
「そうか。ついさっきまでずっと傍にいたんだけどな。一晩中、お前の寝顔を見ていたよ。たまに顔を顰めたり、微笑んだりと、眠っていても忙しそうで愛らしかった」
そう言って片腕を回して抱き止めてくれながら、目を合わせてくる。しかし急に昨日の妖艶な面差しが脳裏に蘇ったヴィオは恥ずかしくなって自分からセラフィンの胸に顔をうずめて赤面したのを隠してしまった。
「約束の時間は夕刻だ。まだ日が高いからゆっくり身体を休めなさい。昨日は無理をさせてしまって、すまなかったね」
益々羞恥が勝り、セラフィンの背なかに回した腕をぎゅうっとシャツの背中を掴んで動揺を反らす。昨晩のうちにセラフィンに清めてもらいつつも頭を振って乱れ切った髪はもつれて頭のてっぺんが雀の巣のようになっている。傾けた首にある無数の噛み痕を無防備に昼間の白々とした日の光に晒させ、セラフィンを密かに悦ばせた。
そんな恋人の初心な様子に益々甘やかな気分がましたセラフィンは、ヴィオを促してもう一度寝台に戻ると、青く煌く湖を見つめながら、昨晩の名残で腰がふらつく彼を膝上に抱き上げ口元に果物を運んでやった。
口いっぱいに甘酸っぱい黄色い果肉が弾け、ヴィオは昨晩ほとんどものを口にせずにいたから乾ききった喉を潤していく。ヴィオは夢中になって果実を頬張り、親鳥のように運んでくるセラフィンの指先まで食んでしまった。
「美味しいかい?」
後ろから囁かれヴィオはこくこくと頷いて振り返り、上目遣いににっこりすると、柔らかな舌でセラフィンの長く白い指先をちろりと舐めた。セラフィンは果実に濡れた赤い唇を親指で拭ってやりながら無意識の媚態に誘惑されて引き寄せられるように顔を近づけるとゆっくりと唇を押し付け、舌先で唇を舐めとった。
「ああ、本当だ。美味しい。甘いな」
口を離しても吐息が降りかかるほど間近で見た顔はいつ見ても綺麗で、ヴィオの心臓は性懲りもなくまた早鐘を打った。
(ずるいよ。セラ。昨日の夜、あんなことがあったのに。いつもよりずっと僕を甘やかそうとしてくるんだもん。恥ずかしくて顔が見られないよ)
瑞々しい果物の甘さよりも、こっくりと甘いセラフィンの囁きにヴィオはまたも赤面して、裾の長い衣の裾を捌きながら薄い褐色の脚を伸ばして立ちあがろうとした。甘い雰囲気を払拭し、ヴィオが逃げようとしたのを察したセラフィンは素早く後ろから両手でヴィオの腰を抱き込んで肩口に顔をうずめて邪魔をする。
「もう逃がさないよ。ヴィオ。勝手にどこにもいかないで」
セラフィンの黒髪が降りかかった部分すら熱をもって熱く感じ、そういえば昨晩ヴィオが許した通りセラフィンにどこもかしこも齧られ味見されそのあと頭から丸呑みにされるほど味わいつくされたのだとヴィオは思い、下肢がまたずくんと疼くのを止めらない。そして観念したようにセラフィンの胸に抱かれて幸せそうに瞳を閉じたのだった。
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