香りの献身 Ωの香水

天埜鳩愛

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溺愛編

誘惑3

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 その間も執着じみた胸元への甘い疼きをうむ責め苦は続き、腫れてぷっくり果実のように赤く色づいた先端が淫靡なほどだ。
 蜜壺の入り口も舌の抜き差しを繰り返してヴィオの感覚ではひどく長いことそれは続いた。そうして入り口から涎が垂れたように、淫猥にくぱっと開くほどに舐め広げられると、その頃には完全な発情とまではいかないまでもヴィオのオメガのフェロモンも男を受け入れようとより濃厚に香ってきた。

 同時にヴィオの身体から力がぐずぐずと抜け、寝台に伏した顔は喘ぎ続けて口元から涎が零れたほどだが、それすらセラフィンの熱く柔らかな舌で舐め啜り取られる。

 ヴィオは全身を貪り噛みつかれ、性的に紅潮した上、さらに赤い花がいやらしく咲いた身体を力なくシーツの上に横たえた。その身体の上からようやくセラフィンは身体を起こすと、身に着けていたシャツをもどかし気にはぎ取り脱ぎ捨さった。

 まるで白く美しい獣のようなセラフィンは、蒼い目を昏く光らせたまま、ぐったりとしたヴィオの強靭だが細い足を掴み上げると無造作に身体を仰向けにさせる。ヴィオは涙の被膜が張った瞳で自分を蹂躙する男を蕩け切った頭でただただぼんやりと見上げている。

 しかしわざと覗き込むようにセラフィンが目線を合わせて、艶然と微笑んだ。かちっと火花が散るかの如く目が合うと、セラフィンはそんなヴィオに美貌に似合わぬ完全に天を突いた凶悪な大きさのそれをわざと見せつけるような緩慢な仕草で取り出し、獲物を見下ろす肉食獣のように瞳をぎらつかせる。
 そしてついにセラフィンに舐めとかされ、もはやオメガ特有の粘液まで零した蜜壺にそれを当てがった。

「ひぃ、あんっ」
「ヴィオ。……お前の全部が欲しいよ」

 それは日頃のセラフィンらしく静かで抑制のきいた声ではなかった。
 かすれ声まで陶然とした、愛する男のそんな甘く切ない懇願、否と言えるはずがない。髪をかきあげて真っ白な額すら露わにしたセラフィンの白皙の貌。彼はこんな時でも畏怖すら感じる美貌で、その青い瞳に湛えられた熱情を見てヴィオは憧れの人からの激しい求愛にきゅんっと胸が締め付けられた。
 ただひたすら真っすぐに、セラフィンはヴィオとの間のすべての垣根を取り払い、ただの一人の男に立ち返って、情熱的に見つめてくる。
 その形の良い杏仁型の大きな瞳から目をそらすことすらできず、ヴィオはこぼれんばかりに瞳を見張ると、涙が再び目の際を伝って幾筋も寝台にシミを作った。

 ヴィオは昼間の事件で思い知ったのだ。もしもアダンが成人したアルファやベータで、意識がないまま身体を奪われていたら? 万が一項を噛まれてしまっていたら? 

(きっとどうしてもっと早くセラのものにしてもらわなかったのかって、ずっと後悔して生きることになってた……)

 口に出しては言わなかったけれど、そう考えたらたまらなく怖ろしくなった。今回はまだ運が良かっただけ。もしもまたなにかトラブルが起きて同じことが起こらないとは言い切れないだろう。番のいないオメガはいつでもそんな危険と隣り合わせで生きているのだとついに身に染みて思い知ったのだ。

 そしてセラフィンと言葉を交わさないまでも、ヴィオはここに来るまでの間に決心を固めていた。発情期が来るのはまだ少し先だとしても、今はただ、互いの求めあう感情を優先させ、愛おしいセラフィンと心も身体も深く繋がりたいのだと。

(怖い、でも……)

「僕もセラが欲しい。僕に、セラを全部ください」



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