香りの献身 Ωの香水

天埜鳩愛

文字の大きさ
上 下
174 / 222
溺愛編

誘惑3

しおりを挟む
 その間も執着じみた胸元への甘い疼きをうむ責め苦は続き、腫れてぷっくり果実のように赤く色づいた先端が淫靡なほどだ。
 蜜壺の入り口も舌の抜き差しを繰り返してヴィオの感覚ではひどく長いことそれは続いた。そうして入り口から涎が垂れたように、淫猥にくぱっと開くほどに舐め広げられると、その頃には完全な発情とまではいかないまでもヴィオのオメガのフェロモンも男を受け入れようとより濃厚に香ってきた。

 同時にヴィオの身体から力がぐずぐずと抜け、寝台に伏した顔は喘ぎ続けて口元から涎が零れたほどだが、それすらセラフィンの熱く柔らかな舌で舐め啜り取られる。

 ヴィオは全身を貪り噛みつかれ、性的に紅潮した上、さらに赤い花がいやらしく咲いた身体を力なくシーツの上に横たえた。その身体の上からようやくセラフィンは身体を起こすと、身に着けていたシャツをもどかし気にはぎ取り脱ぎ捨さった。

 まるで白く美しい獣のようなセラフィンは、蒼い目を昏く光らせたまま、ぐったりとしたヴィオの強靭だが細い足を掴み上げると無造作に身体を仰向けにさせる。ヴィオは涙の被膜が張った瞳で自分を蹂躙する男を蕩け切った頭でただただぼんやりと見上げている。

 しかしわざと覗き込むようにセラフィンが目線を合わせて、艶然と微笑んだ。かちっと火花が散るかの如く目が合うと、セラフィンはそんなヴィオに美貌に似合わぬ完全に天を突いた凶悪な大きさのそれをわざと見せつけるような緩慢な仕草で取り出し、獲物を見下ろす肉食獣のように瞳をぎらつかせる。
 そしてついにセラフィンに舐めとかされ、もはやオメガ特有の粘液まで零した蜜壺にそれを当てがった。

「ひぃ、あんっ」
「ヴィオ。……お前の全部が欲しいよ」

 それは日頃のセラフィンらしく静かで抑制のきいた声ではなかった。
 かすれ声まで陶然とした、愛する男のそんな甘く切ない懇願、否と言えるはずがない。髪をかきあげて真っ白な額すら露わにしたセラフィンの白皙の貌。彼はこんな時でも畏怖すら感じる美貌で、その青い瞳に湛えられた熱情を見てヴィオは憧れの人からの激しい求愛にきゅんっと胸が締め付けられた。
 ただひたすら真っすぐに、セラフィンはヴィオとの間のすべての垣根を取り払い、ただの一人の男に立ち返って、情熱的に見つめてくる。
 その形の良い杏仁型の大きな瞳から目をそらすことすらできず、ヴィオはこぼれんばかりに瞳を見張ると、涙が再び目の際を伝って幾筋も寝台にシミを作った。

 ヴィオは昼間の事件で思い知ったのだ。もしもアダンが成人したアルファやベータで、意識がないまま身体を奪われていたら? 万が一項を噛まれてしまっていたら? 

(きっとどうしてもっと早くセラのものにしてもらわなかったのかって、ずっと後悔して生きることになってた……)

 口に出しては言わなかったけれど、そう考えたらたまらなく怖ろしくなった。今回はまだ運が良かっただけ。もしもまたなにかトラブルが起きて同じことが起こらないとは言い切れないだろう。番のいないオメガはいつでもそんな危険と隣り合わせで生きているのだとついに身に染みて思い知ったのだ。

 そしてセラフィンと言葉を交わさないまでも、ヴィオはここに来るまでの間に決心を固めていた。発情期が来るのはまだ少し先だとしても、今はただ、互いの求めあう感情を優先させ、愛おしいセラフィンと心も身体も深く繋がりたいのだと。

(怖い、でも……)

「僕もセラが欲しい。僕に、セラを全部ください」



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

熱しやすく冷めやすく、軽くて重い夫婦です。

七賀ごふん
BL
【何度失っても、日常は彼と創り出せる。】 ────────── 身の回りのものの温度をめちゃくちゃにしてしまう力を持って生まれた白希は、集落の屋敷に閉じ込められて育った。二十歳の誕生日に火事で家を失うが、彼の未来の夫を名乗る美青年、宗一が現れる。 力のコントロールを身につけながら、愛が重い宗一による花嫁修業が始まって……。 ※シリアス 溺愛御曹司×世間知らず。現代ファンタジー。 表紙:七賀

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

Endless Summer Night ~終わらない夏~

樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった” 長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、 ひと夏の契約でリゾートにやってきた。 最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、 気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。 そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。 ***前作品とは完全に切り離したお話ですが、 世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ

樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー 消えない思いをまだ読んでおられない方は 、 続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。 消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が 高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、 それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。 消えない思いに比べると、 更新はゆっくりになると思いますが、 またまた宜しくお願い致します。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

処理中です...