148 / 222
溺愛編
装具2
しおりを挟む
また幼子のように素直に頷くヴィオから一度手を離すとセラフィンは胡坐をかいて肌触りが滑らかな寝具の上にどかっと男っぽく座りなおして再びヴィオを手招きする。小首をかしげながらゆっくりと背を向けたヴィオの胸を抱き寄せ、自分にもたれかからせるようにして脚の間に座らせる。
ヴィオははだけたシャツを合わせて今さらながら恥ずかし気に前を隠しながら座ってセラフィンの胸を心地よい背もたれにして寛いだように「ふふっ」と笑う。
セラフィンはヴィオの左腕をするりと肘から先を持ち上げ、掌を幼い子の手にそうするように愛し気にゆっくりと広げさせたり指を伸ばしたりして弄んだあと、ヴィオが機嫌よく声を立てて笑うのを聞きながらズボンのポケットから金色の環っかを取り出す。そして自然な仕草でするりとヴィオの手首に鮮やかにはめて見せた。
「えっ……。これは?」
繊細だが柔ではない造りの優しい光を放つ金色はヴィオの淡い褐色よりの肌によく似合っていた。
透かし模様の間に青と紫が混じったような不思議な色合いの宝石が無数はめ込まれたバングル状のそれは、ヴィオが寝込んでいる間にセラフィンがバルクの友人である宝飾職人に頼み込んで大急ぎで作ってもらった世界に一つだけの品だった。
「きらきらしてる! すごく綺麗! 青紫の石、不思議な色」
男性であるヴィオが腕輪を喜ぶかどうかはセラフィンとしても迷うところであったがそんなことは杞憂であったようだ。見立ての良さに自画自賛しながら、うっとりと腕輪を眺めるヴィオをセラフィンもついつい頬を緩めてみてしまう。ヴィオは腕の宝石を光の方に透かしたり手首を捻ってぐるりと一周見てみたりと、ひとしきり嬉しそうに眺めていた。
もちろんこの宝石を、ヴィオと自分の瞳の色が混じったような石、ということで選んだ。金の環はヴィオの瞳の中のそれには叶わぬが、バルクが若い頃から懇意にしていた職人の腕の良さか、金具はないつけやすい構造と、見た目は光をよく反射する捻りや彫が付けられている繊細なものにみえるが、一本の地金から作られていて頑強な造りなのがまたヴィオによく似合っていた。
「中央ではアルファが意中のオメガに求愛する時、自分の物と周りに誇示するような首輪を贈ることが主流だったらしい。でも俺はテグニ国での暮らしが長かったからね。向こうの国では腕輪を贈ることが多いんだ。それにお前は首輪を嫌っているし」
「求愛……」
その言葉を自分で口にして照れているのかヴィオはつむじが見える程下を向いてまたはだけた夜具の裾から足をあられもなく晒しながらもぞもぞと動いた。
「全部叶えたら、その時は。俺と番になってくれる?」
背中越しの告白はヴィオをありのままの気持ちを引き出すのに一役買ったようだ。
「なるよ。番になる。その時はきっと、逃げたりしないよ。あ、赤ちゃんは……。まだ僕の身体がどんなふうになるのかわからなくて怖いけど……。でも先生がずっと傍にいてくれるなら、頑張れると思うから」
「約束だ」
セラフィンは再びヴィオの手の甲を上から握りこんで持ち上げると、肩越しに指先と手首に口づけた。
ヴィオははだけたシャツを合わせて今さらながら恥ずかし気に前を隠しながら座ってセラフィンの胸を心地よい背もたれにして寛いだように「ふふっ」と笑う。
セラフィンはヴィオの左腕をするりと肘から先を持ち上げ、掌を幼い子の手にそうするように愛し気にゆっくりと広げさせたり指を伸ばしたりして弄んだあと、ヴィオが機嫌よく声を立てて笑うのを聞きながらズボンのポケットから金色の環っかを取り出す。そして自然な仕草でするりとヴィオの手首に鮮やかにはめて見せた。
「えっ……。これは?」
繊細だが柔ではない造りの優しい光を放つ金色はヴィオの淡い褐色よりの肌によく似合っていた。
透かし模様の間に青と紫が混じったような不思議な色合いの宝石が無数はめ込まれたバングル状のそれは、ヴィオが寝込んでいる間にセラフィンがバルクの友人である宝飾職人に頼み込んで大急ぎで作ってもらった世界に一つだけの品だった。
「きらきらしてる! すごく綺麗! 青紫の石、不思議な色」
男性であるヴィオが腕輪を喜ぶかどうかはセラフィンとしても迷うところであったがそんなことは杞憂であったようだ。見立ての良さに自画自賛しながら、うっとりと腕輪を眺めるヴィオをセラフィンもついつい頬を緩めてみてしまう。ヴィオは腕の宝石を光の方に透かしたり手首を捻ってぐるりと一周見てみたりと、ひとしきり嬉しそうに眺めていた。
もちろんこの宝石を、ヴィオと自分の瞳の色が混じったような石、ということで選んだ。金の環はヴィオの瞳の中のそれには叶わぬが、バルクが若い頃から懇意にしていた職人の腕の良さか、金具はないつけやすい構造と、見た目は光をよく反射する捻りや彫が付けられている繊細なものにみえるが、一本の地金から作られていて頑強な造りなのがまたヴィオによく似合っていた。
「中央ではアルファが意中のオメガに求愛する時、自分の物と周りに誇示するような首輪を贈ることが主流だったらしい。でも俺はテグニ国での暮らしが長かったからね。向こうの国では腕輪を贈ることが多いんだ。それにお前は首輪を嫌っているし」
「求愛……」
その言葉を自分で口にして照れているのかヴィオはつむじが見える程下を向いてまたはだけた夜具の裾から足をあられもなく晒しながらもぞもぞと動いた。
「全部叶えたら、その時は。俺と番になってくれる?」
背中越しの告白はヴィオをありのままの気持ちを引き出すのに一役買ったようだ。
「なるよ。番になる。その時はきっと、逃げたりしないよ。あ、赤ちゃんは……。まだ僕の身体がどんなふうになるのかわからなくて怖いけど……。でも先生がずっと傍にいてくれるなら、頑張れると思うから」
「約束だ」
セラフィンは再びヴィオの手の甲を上から握りこんで持ち上げると、肩越しに指先と手首に口づけた。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる