118 / 222
略奪編
熱情の虜2
しおりを挟む
ヴィオ突然言葉が通じなくなったかのようなもどかしい気持ちと焦燥感、そしてこみ上げてくる怒りに我を忘れそうになった。
しかしヴィオの身体の扱いを知り尽くしたかのようなカイがヴィオの柔らかな尻から細い腰、滑かな背中に至るまで優しく撫ぜる手つきは悔しいがツボを得て心地よく、奥まで深く侵略し勇ましいほどに攻めつくされる口づけは全身に甘い痺れをもたらした。哀しいことにカイの香りには嫌いなところがまるでない。それはまるで里の森の奥のような安らぎと爽やかさを感じるもので、カイの胸を打つ手からはどんどん力が失せていくが、それでもヴィオはあきらめなかった。
(兄さんに頭に来てるのに、気持ちよくて、わけわかんなくなる。でも嫌だ。今度こそ自分の気持ちをきちんと伝えないと)
「んっ、ああ。カイ兄さん、聞いて」
キスの合間に色っぽい声で喘ぐが、カイはまるで意に介さない。それが逆にヴィオの中の『フェル族の男』たる気持ちに火をつけた。瞬時に燃え上がる熱い気持ちに呼応して刹那、金色の環が目の中に広がった。
「やめてカイ兄さん!」
ぱしん、と兄の精悍な褐色の頬を掌で張り付けると、カイは緑色の美しい瞳を見開いてやっと動きを止めたのだ。
「……姉弟そろって、行動の型が同じだな」
このまま前戯にも連れ込みそうになるほどの滾る気持ちに冷や水をかけられたカイは忌々し気に言い捨てるが、ヴィオは同じく欲に金色の環を広げた兄に対峙するように見据えて唸った。
「僕が番になりたい人は、兄さんじゃないんだ!」
一瞬の沈黙に互いの視線が火花が散るように交錯する。
「言いたいことはそれだけか?」
顎を僅かに上げ、形が良く大きな瞳を細めて言い放ったカイの顔は表情が抜け落ちたかのように冷たく、しかし目だけはギラギラと金色に煌めく。
「え……」
(僕の気持ちなんてまるで無視なの? 聞く耳持たないっていうの?)
昏い眼差しでヴィオを見つめてくるアルファの男。
そこにはいつもヴィオを見守ってくれた温かく優しい保護者代わりの従兄はいない。まるで初めて出会ったような見知らぬ男のそれに見え、ヴィオは背筋が凍る思いがした。
「俺のフェロモンを感じて蕩けた顔してただろ? ここも」
「あうっ」
再び寝台にヴィオを組み敷きなおし、身体の上に体重をかけないように乗り上げていたカイがヴィオの足の間に膝を無理やり入れてぐりっと摺り上げる。恥ずかしさに頬に朱が刷け、涙目で睨めつけてくる様にカイは口の端を歪めるようにして嗤うと指先でダボっとしたシルエットのズボンをまさぐった。
「や、やめて!」
「固くなってきてた」
「やめて」
「やめて、なんて、可愛い抵抗だな? ヴィオ。やめない」
いいしなヴィオの耳朶を舐め、熱い息を吹きかけながら柔らかな耳に噛みついてくる。
ぞわぞわと痛みが同時に襲い、あまりに意地の悪いカイの仕打ちに、これ以上はけして泣くまいと思っていたのに涙がぼろぼろと零れ落ちた。
「知ってたか? フェル族は同族の相手に最も強く発情するようにできてるんだ。他の男が好きでも、結局は俺を拒めない」
しかしヴィオの身体の扱いを知り尽くしたかのようなカイがヴィオの柔らかな尻から細い腰、滑かな背中に至るまで優しく撫ぜる手つきは悔しいがツボを得て心地よく、奥まで深く侵略し勇ましいほどに攻めつくされる口づけは全身に甘い痺れをもたらした。哀しいことにカイの香りには嫌いなところがまるでない。それはまるで里の森の奥のような安らぎと爽やかさを感じるもので、カイの胸を打つ手からはどんどん力が失せていくが、それでもヴィオはあきらめなかった。
(兄さんに頭に来てるのに、気持ちよくて、わけわかんなくなる。でも嫌だ。今度こそ自分の気持ちをきちんと伝えないと)
「んっ、ああ。カイ兄さん、聞いて」
キスの合間に色っぽい声で喘ぐが、カイはまるで意に介さない。それが逆にヴィオの中の『フェル族の男』たる気持ちに火をつけた。瞬時に燃え上がる熱い気持ちに呼応して刹那、金色の環が目の中に広がった。
「やめてカイ兄さん!」
ぱしん、と兄の精悍な褐色の頬を掌で張り付けると、カイは緑色の美しい瞳を見開いてやっと動きを止めたのだ。
「……姉弟そろって、行動の型が同じだな」
このまま前戯にも連れ込みそうになるほどの滾る気持ちに冷や水をかけられたカイは忌々し気に言い捨てるが、ヴィオは同じく欲に金色の環を広げた兄に対峙するように見据えて唸った。
「僕が番になりたい人は、兄さんじゃないんだ!」
一瞬の沈黙に互いの視線が火花が散るように交錯する。
「言いたいことはそれだけか?」
顎を僅かに上げ、形が良く大きな瞳を細めて言い放ったカイの顔は表情が抜け落ちたかのように冷たく、しかし目だけはギラギラと金色に煌めく。
「え……」
(僕の気持ちなんてまるで無視なの? 聞く耳持たないっていうの?)
昏い眼差しでヴィオを見つめてくるアルファの男。
そこにはいつもヴィオを見守ってくれた温かく優しい保護者代わりの従兄はいない。まるで初めて出会ったような見知らぬ男のそれに見え、ヴィオは背筋が凍る思いがした。
「俺のフェロモンを感じて蕩けた顔してただろ? ここも」
「あうっ」
再び寝台にヴィオを組み敷きなおし、身体の上に体重をかけないように乗り上げていたカイがヴィオの足の間に膝を無理やり入れてぐりっと摺り上げる。恥ずかしさに頬に朱が刷け、涙目で睨めつけてくる様にカイは口の端を歪めるようにして嗤うと指先でダボっとしたシルエットのズボンをまさぐった。
「や、やめて!」
「固くなってきてた」
「やめて」
「やめて、なんて、可愛い抵抗だな? ヴィオ。やめない」
いいしなヴィオの耳朶を舐め、熱い息を吹きかけながら柔らかな耳に噛みついてくる。
ぞわぞわと痛みが同時に襲い、あまりに意地の悪いカイの仕打ちに、これ以上はけして泣くまいと思っていたのに涙がぼろぼろと零れ落ちた。
「知ってたか? フェル族は同族の相手に最も強く発情するようにできてるんだ。他の男が好きでも、結局は俺を拒めない」
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです

白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

Endless Summer Night ~終わらない夏~
樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった”
長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、
ひと夏の契約でリゾートにやってきた。
最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、
気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。
そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。
***前作品とは完全に切り離したお話ですが、
世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる