116 / 222
略奪編
運命の番2
しおりを挟む
暴れるヴィオを再び寝台に押し付けるように寝かせて、膝を立てて暴れようとする身体に半身を乗り上げて拘束する。子供の頃撫ぜてやると喜んでいた柔らかな耳たぶをすりすりと太い指を合わせて器用にさすり、口内の感じやすい上口蓋を長く分厚い舌で愛情をこめて優しくなぞる。
柔らかな感触を楽しむように何度も角度を変えて啄むと、ヴィオは震えながら歯で蹂躙を繰り返すカイの舌に噛みつこうとした。
しかし幼いころから可愛がってくれた従兄にそんな無体を働けるヴィオではなく。ぽろっと涙を零しながら自分より二回りは太い腕を縋るように掴んで僅かな抵抗を働いた。
カイは甘いヴィオの口内を味わいつつ、少しずつ自らのフェロモンを開放し、ヴィオのオメガのフェロモンを誘い出そうとした。夏掛けを足元にずりさげ、細いヴィオの腰の下に腕を回して抱き起しながら、涙で潤む瞳と目を合わせて男らしい眉を切なげに寄せると、唇を一度放すと耳元に掠れた欲の滲む声で囁いた。
「ヴィオ、俺を嫌わないでくれ。昔みたいに……。俺に笑いかけてくれ。お前に疎まれるのは、辛い」
今までヴィオに弱みを見せることなどなかったカイが、素直な気持ちを伝えてきたからヴィオもじっと兄を素直に見つめ返して、日頃の癖がでて唇をきゅっと噛みしめる。
「カイ……、兄さん」
「お前のことを、愛してるんだ」
(兄さんが、俺のことを、愛してる?)
真摯な告白はヴィオにもまっすぐに届いた。最近の兄の態度からもしかしたら自分に特別な感情を持っているのかもしれないと薄々感じてはいた。しかしずっと年上の保護者代わりの男からの告白に、ヴィオは嬉しさよりも互いの関係が決定的に変わってしまうことの恐れに身震いした。
同時にカイからあの日、教室で感じたような森を渡る風のごとき心地よい香りが香る。吸い込んだそれと共にぞくぞくと背筋から腰のあたりまで甘い疼きとしびれが抜けていく。身体中弛緩したようにぐずぐずになって寝台と身体が一体になってしまいそうだ。
再び逃すまいとでもするかのように抱きすくめられ、ヴィオは鎧のように硬い筋肉で覆われた身体に迫られなすすべもない。カイの逞しい胸からも鼓動が伝わってきて、それがヴィオの胸をも打つ。カイはなおも熱っぽい声で続けた。
「ヴィオ、俺たちはぴったり合わさるように相性の良い『運命の番』だと、俺は信じている」
柔らかな感触を楽しむように何度も角度を変えて啄むと、ヴィオは震えながら歯で蹂躙を繰り返すカイの舌に噛みつこうとした。
しかし幼いころから可愛がってくれた従兄にそんな無体を働けるヴィオではなく。ぽろっと涙を零しながら自分より二回りは太い腕を縋るように掴んで僅かな抵抗を働いた。
カイは甘いヴィオの口内を味わいつつ、少しずつ自らのフェロモンを開放し、ヴィオのオメガのフェロモンを誘い出そうとした。夏掛けを足元にずりさげ、細いヴィオの腰の下に腕を回して抱き起しながら、涙で潤む瞳と目を合わせて男らしい眉を切なげに寄せると、唇を一度放すと耳元に掠れた欲の滲む声で囁いた。
「ヴィオ、俺を嫌わないでくれ。昔みたいに……。俺に笑いかけてくれ。お前に疎まれるのは、辛い」
今までヴィオに弱みを見せることなどなかったカイが、素直な気持ちを伝えてきたからヴィオもじっと兄を素直に見つめ返して、日頃の癖がでて唇をきゅっと噛みしめる。
「カイ……、兄さん」
「お前のことを、愛してるんだ」
(兄さんが、俺のことを、愛してる?)
真摯な告白はヴィオにもまっすぐに届いた。最近の兄の態度からもしかしたら自分に特別な感情を持っているのかもしれないと薄々感じてはいた。しかしずっと年上の保護者代わりの男からの告白に、ヴィオは嬉しさよりも互いの関係が決定的に変わってしまうことの恐れに身震いした。
同時にカイからあの日、教室で感じたような森を渡る風のごとき心地よい香りが香る。吸い込んだそれと共にぞくぞくと背筋から腰のあたりまで甘い疼きとしびれが抜けていく。身体中弛緩したようにぐずぐずになって寝台と身体が一体になってしまいそうだ。
再び逃すまいとでもするかのように抱きすくめられ、ヴィオは鎧のように硬い筋肉で覆われた身体に迫られなすすべもない。カイの逞しい胸からも鼓動が伝わってきて、それがヴィオの胸をも打つ。カイはなおも熱っぽい声で続けた。
「ヴィオ、俺たちはぴったり合わさるように相性の良い『運命の番』だと、俺は信じている」
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。


僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

【完】100枚目の離婚届~僕のことを愛していないはずの夫が、何故か異常に優しい~
人生1919回血迷った人
BL
矢野 那月と須田 慎二の馴れ初めは最悪だった。
残業中の職場で、突然、発情してしまった矢野(オメガ)。そのフェロモンに当てられ、矢野を押し倒す須田(アルファ)。
そうした事故で、二人は番になり、結婚した。
しかし、そんな結婚生活の中、矢野は須田のことが本気で好きになってしまった。
須田は、自分のことが好きじゃない。
それが分かってるからこそ矢野は、苦しくて辛くて……。
須田に近づく人達に殴り掛かりたいし、近づくなと叫び散らかしたい。
そんな欲求を抑え込んで生活していたが、ある日限界を迎えて、手を出してしまった。
ついに、一線を超えてしまった。
帰宅した矢野は、震える手で離婚届を記入していた。
※本編完結
※特殊設定あります
※Twitterやってます☆(@mutsunenovel)

欲に負けた婚約者は代償を払う
京月
恋愛
偶然通りかかった空き教室。
そこにいたのは親友のシレラと私の婚約者のベルグだった。
「シレラ、ず、ずっと前から…好きでした」
気が付くと私はゼン先生の前にいた。
起きたことが理解できず、涙を流す私を優しく包み込んだゼン先生は膝をつく。
「私と結婚を前提に付き合ってはもらえないだろうか?」

捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる