香りの献身 Ωの香水

天埜鳩愛

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略奪編

運命の番2

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 暴れるヴィオを再び寝台に押し付けるように寝かせて、膝を立てて暴れようとする身体に半身を乗り上げて拘束する。子供の頃撫ぜてやると喜んでいた柔らかな耳たぶをすりすりと太い指を合わせて器用にさすり、口内の感じやすい上口蓋を長く分厚い舌で愛情をこめて優しくなぞる。
 柔らかな感触を楽しむように何度も角度を変えて啄むと、ヴィオは震えながら歯で蹂躙を繰り返すカイの舌に噛みつこうとした。

 しかし幼いころから可愛がってくれた従兄にそんな無体を働けるヴィオではなく。ぽろっと涙を零しながら自分より二回りは太い腕を縋るように掴んで僅かな抵抗を働いた。

 カイは甘いヴィオの口内を味わいつつ、少しずつ自らのフェロモンを開放し、ヴィオのオメガのフェロモンを誘い出そうとした。夏掛けを足元にずりさげ、細いヴィオの腰の下に腕を回して抱き起しながら、涙で潤む瞳と目を合わせて男らしい眉を切なげに寄せると、唇を一度放すと耳元に掠れた欲の滲む声で囁いた。

「ヴィオ、俺を嫌わないでくれ。昔みたいに……。俺に笑いかけてくれ。お前に疎まれるのは、辛い」

 今までヴィオに弱みを見せることなどなかったカイが、素直な気持ちを伝えてきたからヴィオもじっと兄を素直に見つめ返して、日頃の癖がでて唇をきゅっと噛みしめる。

「カイ……、兄さん」
「お前のことを、愛してるんだ」

(兄さんが、俺のことを、愛してる?)

 真摯な告白はヴィオにもまっすぐに届いた。最近の兄の態度からもしかしたら自分に特別な感情を持っているのかもしれないと薄々感じてはいた。しかしずっと年上の保護者代わりの男からの告白に、ヴィオは嬉しさよりも互いの関係が決定的に変わってしまうことの恐れに身震いした。

 同時にカイからあの日、教室で感じたような森を渡る風のごとき心地よい香りが香る。吸い込んだそれと共にぞくぞくと背筋から腰のあたりまで甘い疼きとしびれが抜けていく。身体中弛緩したようにぐずぐずになって寝台と身体が一体になってしまいそうだ。

 再び逃すまいとでもするかのように抱きすくめられ、ヴィオは鎧のように硬い筋肉で覆われた身体に迫られなすすべもない。カイの逞しい胸からも鼓動が伝わってきて、それがヴィオの胸をも打つ。カイはなおも熱っぽい声で続けた。

「ヴィオ、俺たちはぴったり合わさるように相性の良い『運命の番』だと、俺は信じている」
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