香りの献身 Ωの香水

天埜鳩愛

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再会編

青紫の小瓶2

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ヴィオの二の腕は余裕で掴み上げてもなお残るほど、ベラの手は大きく、見た目のたおやかさからは想像もつかぬほど引き上げる力は強い。

 ずるり、とヴィオの膝からセラフィンの身体が絨毯に落ち沈んでいったが、振りほどこうにもすごい力でとても抵抗ができなかった。
 彼女はもう片方の手もヴィオの腰に回すと、勢いよく寝台の上に投げつける。

 悲鳴が喉の張り付いて出てこぬほどヴィオが驚いて起き上がろうとするが、不意に先ほどまかれたのとはまた違う香りがこの場を支配してきた。

(なにこれ、なにこれ。この匂い! 怖いよ)

 女はゆったりと寝台に乗り上げてくるのに、ヴィオはまるで抵抗ができない。身体の力が徐々に抜けてきて、ベリーのように甘酸っぱく、ムスクのように官能的な香りに包まれて、目の前が赤い花で覆われたような、くらくらと来る心地で寝台に沈み込んでいった。女は好物を見つけた獣のように、婀娜っぽい仕草で真っ赤な舌で唇を舐める。

「あら、怯えている顔も可愛らしいわね。身体はそんなにしなやかで瑞々しくて若者らしく頑健そうなのに、顔は美女もかすむし、小さな女の子のように恥じらって、愛らしくて本当に素敵だわ。貴方なら……。あの子の代わりになるかしら……」

 女の昏い瞳は、間近で見ると深いグレーの部分があり、そこが銀色に光って見える。押しのけようとした腕を女に手首を簡単に戒められて、なぜこんなにも力が入らないのかとヴィオは混乱した。

 唇から赤い舌を出しながら女は先ほどセラフィンの唇を蹂躙したそれを、今度はヴィオの首筋に這わせる。その柔らかくぬめったもののもたらす刺激にヴィオはぞくぞくというよりも嫌悪感と恐怖で身体が再び震え出すことを止められなかった。

「ふふ。セラフィンは今はこの純真な香りの虜なのかしら? 抑制剤切れてるんでしょ? このまま発情させてあげようかしら? ……セラより先に私がこの温かい項を噛んだら、私たち番になっちゃうわね。 セラフィンの特別。セラフィンのオメガ。フェル族の愛らしい子」


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