香りの献身 Ωの香水

天埜鳩愛

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再会編

森の学校2

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「中央じゃね、女性の教師は及びじゃないって感じで中々採用されないのよ。私は長らく貴族の女性の家庭教師をしてきて、やっと教師として採用されても男性社会でね。結婚もしないで居座って邪魔だってずっと陰口を言われたわ。自分より年若くても男性が学校長に推薦されていくのが悔しくってね。今回ちょっと田舎だけど学校長をやらないかって。ジブリール様から誘われたとき本当に嬉しかったわ。ここはのんびりしているし、子どもたちは可愛いし、レイやアンみたいなやる気ある先生たちも集まってきてくれて本当に毎日楽しいわ。ヴィオ、学びを深めていきなさい。諦めないで勉強していけばまだまだ若いんだからいくらだって取り戻しが効くんだから」

 先生たちが頻繁に話すジブリール様というのは中央の貴族の婦人で有名な慈善活動家のことだ。とりわけ女性やオメガ、少数部族の人々への援助を行う好人物で、ヴィオも学校ができたときお礼のお手紙を書いて、その後は度々手紙のやり取りをしている。他愛のない季節のやり取りや、今困っていることはないかとか、勉強は楽しいかとか。そんな思いやりあるやり取りだ。

 中央で苦労を重ねながらも教師の道を貫いてきた学校長は皆のお母さんでありお父さんでもあるような力強い存在で、退役軍人だという壮年の用務の男性と共にいつでも子どもたちを守ってくれた。
 初めは物珍しさから街の大人たち、とくにごろつきめいた若者まで学校を見に来て邪魔のようなことをしてきたのだが(今思えば学校に通える子どもたちが羨ましかったのかもしれない)何かあったら二人が彼らに迫力ある説教して叩き出したり、逆に学校のためになるようなことを協力させたり。

 勉強をしたいというものならば16歳以上のものも面倒を見ていき、里と街のものを招いての交流できるお祭りを企画したのも先生たちのアイディアだった。

 若い男女の先生たちは中央から来た若者らしい清潔感と美しさにあふれていて、常に子どもたちに憧れの的だった。夢見がちな少女らは当然2人が恋仲になればいいと呑気に考えていた。
 学校には給食はなかったのでたまに皆で昼食をとる時や教員宿舎のために食材を持ってきてくれる街のレストランの男前の料理長とレイ先生とが、アン先生を取り合っているのだわ、とかそんな恋愛小説もどきの夢想めいた噂話をしてはみなときめいている。

 そんな長閑な学校生活の中で事件が起こったのはレイ先生のある秘密に起因していたのだ。
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