7 / 222
邂逅編
二人の青年1
しおりを挟む
「昼間街で、君らしき子を何度か見かけてたよ。店先を覗いてずっとうろうろしていたね。俺はこの街に今日初めて来たんだ。 遅い昼食をとっていたら、正面にあった店から君が飛び出してどこかに走っていった。あれから大分時間が経ったけど、ずっと街にいたの? 君は一体何をしていたんだい? 家の人は心配していないか?」
男たちに怖い目に合わされた少年を気遣う、努めて出した穏やかで優しげな声だった。
そしてその気遣いはヴィオにとって思いがけない言葉だったのだ。昼間この街についてから薬屋を探して、途方にくれながら彷徨い歩いていた姿を見守ってくれた人がいただなんて。誰からも相手にされずにいたと思っていた。さっきの男たちに捕まるまでは、街中で声すらかけてもらえなかった。涙がぶわっと溢れてぽたぽたと落ちた。
不意に外から騒がしい足音が聞こえてきて、間髪を入れずに賑やかな大声が上がった。
「セラフィン! 俺を置いて勝手にどっかいって。探したじゃないですか! こんなとこで何やってるんですか! ってうわっ! とんでもない美少女! 眩しすぎる二人!」
転がる男たちに見向きもせずに大仰に二人を見ては眩しそうにリアクションする連れのジルにセラフィンは緊張感のなさは毎度のことながら呆れて果てて呟いた。
「美少女っていうか、男の子だぞ、この子」
「ええ! そうなの? さっき街で見かけた子かな? フードで顔が見えなかったけど、すっごい可愛いじゃないですか。そんで貴方またやらかしましたね…… 牽制フェロモン巻き散らかすようなことをされたんですか? おい!お前。俺のセラになにしてくれた?」
突然現れた明るい金髪の男は泡を吹いた男の腹を足先で遠慮なくつつく。
「おい、ジル。いつ俺がお前のセラになったのか……」
驚いて声も出ない、涙をぽたぽた垂らした痩せっぽっちのヴィオをひょいっと抱き上げ、セラフィンは明るい金髪の連れの横を通り抜けて戸口をでる。
「伯父さんの親友がのんびり田舎に引っ込んで基地の所長をやっているっていうから、挨拶ついでに来てみたらこれだ。こんな子供引きずってこんなとこ連れ込んで手を出すなんて。軍も平和ボケすると、末端はこんなものなのか」
「そりゃ最悪だわ。大方女の子にでも間違われたのかね? ボクちゃん? なかなかの美人さんだね」
男たちに怖い目に合わされた少年を気遣う、努めて出した穏やかで優しげな声だった。
そしてその気遣いはヴィオにとって思いがけない言葉だったのだ。昼間この街についてから薬屋を探して、途方にくれながら彷徨い歩いていた姿を見守ってくれた人がいただなんて。誰からも相手にされずにいたと思っていた。さっきの男たちに捕まるまでは、街中で声すらかけてもらえなかった。涙がぶわっと溢れてぽたぽたと落ちた。
不意に外から騒がしい足音が聞こえてきて、間髪を入れずに賑やかな大声が上がった。
「セラフィン! 俺を置いて勝手にどっかいって。探したじゃないですか! こんなとこで何やってるんですか! ってうわっ! とんでもない美少女! 眩しすぎる二人!」
転がる男たちに見向きもせずに大仰に二人を見ては眩しそうにリアクションする連れのジルにセラフィンは緊張感のなさは毎度のことながら呆れて果てて呟いた。
「美少女っていうか、男の子だぞ、この子」
「ええ! そうなの? さっき街で見かけた子かな? フードで顔が見えなかったけど、すっごい可愛いじゃないですか。そんで貴方またやらかしましたね…… 牽制フェロモン巻き散らかすようなことをされたんですか? おい!お前。俺のセラになにしてくれた?」
突然現れた明るい金髪の男は泡を吹いた男の腹を足先で遠慮なくつつく。
「おい、ジル。いつ俺がお前のセラになったのか……」
驚いて声も出ない、涙をぽたぽた垂らした痩せっぽっちのヴィオをひょいっと抱き上げ、セラフィンは明るい金髪の連れの横を通り抜けて戸口をでる。
「伯父さんの親友がのんびり田舎に引っ込んで基地の所長をやっているっていうから、挨拶ついでに来てみたらこれだ。こんな子供引きずってこんなとこ連れ込んで手を出すなんて。軍も平和ボケすると、末端はこんなものなのか」
「そりゃ最悪だわ。大方女の子にでも間違われたのかね? ボクちゃん? なかなかの美人さんだね」
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。


僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

【完】100枚目の離婚届~僕のことを愛していないはずの夫が、何故か異常に優しい~
人生1919回血迷った人
BL
矢野 那月と須田 慎二の馴れ初めは最悪だった。
残業中の職場で、突然、発情してしまった矢野(オメガ)。そのフェロモンに当てられ、矢野を押し倒す須田(アルファ)。
そうした事故で、二人は番になり、結婚した。
しかし、そんな結婚生活の中、矢野は須田のことが本気で好きになってしまった。
須田は、自分のことが好きじゃない。
それが分かってるからこそ矢野は、苦しくて辛くて……。
須田に近づく人達に殴り掛かりたいし、近づくなと叫び散らかしたい。
そんな欲求を抑え込んで生活していたが、ある日限界を迎えて、手を出してしまった。
ついに、一線を超えてしまった。
帰宅した矢野は、震える手で離婚届を記入していた。
※本編完結
※特殊設定あります
※Twitterやってます☆(@mutsunenovel)

欲に負けた婚約者は代償を払う
京月
恋愛
偶然通りかかった空き教室。
そこにいたのは親友のシレラと私の婚約者のベルグだった。
「シレラ、ず、ずっと前から…好きでした」
気が付くと私はゼン先生の前にいた。
起きたことが理解できず、涙を流す私を優しく包み込んだゼン先生は膝をつく。
「私と結婚を前提に付き合ってはもらえないだろうか?」

捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる