香りの献身 Ωの香水

天埜鳩愛

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邂逅編

二人の青年1

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「昼間街で、君らしき子を何度か見かけてたよ。店先を覗いてずっとうろうろしていたね。俺はこの街に今日初めて来たんだ。 遅い昼食をとっていたら、正面にあった店から君が飛び出してどこかに走っていった。あれから大分時間が経ったけど、ずっと街にいたの? 君は一体何をしていたんだい? 家の人は心配していないか?」

 男たちに怖い目に合わされた少年を気遣う、努めて出した穏やかで優しげな声だった。
そしてその気遣いはヴィオにとって思いがけない言葉だったのだ。昼間この街についてから薬屋を探して、途方にくれながら彷徨い歩いていた姿を見守ってくれた人がいただなんて。誰からも相手にされずにいたと思っていた。さっきの男たちに捕まるまでは、街中で声すらかけてもらえなかった。涙がぶわっと溢れてぽたぽたと落ちた。
 不意に外から騒がしい足音が聞こえてきて、間髪を入れずに賑やかな大声が上がった。

「セラフィン! 俺を置いて勝手にどっかいって。探したじゃないですか! こんなとこで何やってるんですか! ってうわっ! とんでもない美少女! 眩しすぎる二人!」

 転がる男たちに見向きもせずに大仰に二人を見ては眩しそうにリアクションする連れのジルにセラフィンは緊張感のなさは毎度のことながら呆れて果てて呟いた。

「美少女っていうか、男の子だぞ、この子」

「ええ! そうなの? さっき街で見かけた子かな? フードで顔が見えなかったけど、すっごい可愛いじゃないですか。そんで貴方またやらかしましたね…… 牽制フェロモン巻き散らかすようなことをされたんですか? おい!お前。俺のセラになにしてくれた?」

 突然現れた明るい金髪の男は泡を吹いた男の腹を足先で遠慮なくつつく。

「おい、ジル。いつ俺がお前のセラになったのか……」

 驚いて声も出ない、涙をぽたぽた垂らした痩せっぽっちのヴィオをひょいっと抱き上げ、セラフィンは明るい金髪の連れの横を通り抜けて戸口をでる。

「伯父さんの親友がのんびり田舎に引っ込んで基地の所長をやっているっていうから、挨拶ついでに来てみたらこれだ。こんな子供引きずってこんなとこ連れ込んで手を出すなんて。軍も平和ボケすると、末端はこんなものなのか」

「そりゃ最悪だわ。大方女の子にでも間違われたのかね? ボクちゃん? なかなかの美人さんだね」

 
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