14 / 52
フリージアを嫌わないで
14
しおりを挟む
でもアルファである彼もきっといつかまた、自分の指のすき間から砂のようにすり抜けていってしまうかもしれない。
(伏見くんにとってはきっと一時の火遊びみたいなものだろうけど。……年上に憧れる時期だよね)
そもそも釣り合わない自分と彼との距離にばかり目を向けても仕方ない。傍によれば温かい。こんな寒い夕べに共に寄り添いあえる相手がいることを幸せに思うべきだ。
「君ってさあ。実は甘えたなんだね。兄弟はいるの?」
「……いる」
「君は弟でしょ? 弟っぽい」
「まあ」
「まあって。なんだそれ、どっち?」
ころころと笑えば額を撫ぜていた手を握られ動きを封じられ、大きな瞳を開いた彼が射すくめるような眼差しで見上げてきた。
官能の炎を灯された透は、熱い吐息を漏らすと、握られた手を逆手にとって、彼の指先を唇に押し当てる。そのまま赤い舌をちらりと覗かせながら、透は人差し指の先を唇でしゃぶると、指の腹に歯を当て甘噛みをした。そして彼に視線を合わせながら嫣然と、指の付け根に向けて舌を這わせていく。
「んっ……、あぁ」
わざと声を上げちゅ、ぷちゅっ、とはしたなく音を立てつつ、唇を艶めかしく崩し、親指との間をちろちろと舐める。潤んだ眼差しで見つめると、眉根を寄せて耐えるような顔をした伏見に思わず「かわいいね」と婀娜っぽく囁く。押し付けた古着にベルトはつけなかったから、ボタンを寛げ、そのまま膨らんだ彼の欲望に手を伸ばした。
「もう、かたいね? 僕にこっちも可愛がらせて」
「透さんっ」
ぎしりっとベッドが軋み、挑みかかるように起き上がった伏見が今度は透を寝台の上に押し付けてきた。
男らしい美貌が苦し気にこらえる表情を浮かべたのがセクシーで、透の背筋をぞくぞくっと快感が駆け上る。
「煽らないで。優しくするって約束、俺に破らせないで」
「いいよ、おいで。温めて」
立てた膝で彼の高ぶりをゆるゆると緩慢に刺激しながら指先で誘うようにするりと顎を撫ぜ上げたら、獣が飛び掛かるように彼に唇を激しく貪られた。若さと勢いにのまれまいとするが、透はすぐに熱い吐息を漏らし始める。
自分でシャツのボタンを外そうと動かした両手の首を片手で掴まれ、頭の上に戒められた。
「俺にさせて」
こうして組み敷かれるとやはり体格差がすごい。こんな風にされたら身じろぎ一つできそうにない。ぞくっと被虐的な快感が押し寄せ、無意識に赤い舌で唇を湿らせた。
ベルトとシャツのボタンを片手で器用に外されアンダーシャツをたくし上げられれば、もはや欲を隠さない彼の瞳の前に全て晒される。
余裕があるそぶりを見せても自分のペースを乱されるとやはり気恥しい。元彼と付き合っていた最後の方は一方的な奉仕ばかりをさせられた時期もあった。ただ相手を気持ちよくさせれば喜んでもらえるだろうと思っていたが伏見にとっては違う様だ。
どう愛し合うことか正解が分からなくなって、しかし年下相手にされるがままになるのも躊躇われた。
(どうしたら、喜んでもらえる?)
透は途方に暮れた子供のように眉をさげ、ズボンにまで手をかけられたから足をもじつかせる。縋るように伏見を見たら、今度は彼の方が艶っぽい低い声で囁いてきた。
(伏見くんにとってはきっと一時の火遊びみたいなものだろうけど。……年上に憧れる時期だよね)
そもそも釣り合わない自分と彼との距離にばかり目を向けても仕方ない。傍によれば温かい。こんな寒い夕べに共に寄り添いあえる相手がいることを幸せに思うべきだ。
「君ってさあ。実は甘えたなんだね。兄弟はいるの?」
「……いる」
「君は弟でしょ? 弟っぽい」
「まあ」
「まあって。なんだそれ、どっち?」
ころころと笑えば額を撫ぜていた手を握られ動きを封じられ、大きな瞳を開いた彼が射すくめるような眼差しで見上げてきた。
官能の炎を灯された透は、熱い吐息を漏らすと、握られた手を逆手にとって、彼の指先を唇に押し当てる。そのまま赤い舌をちらりと覗かせながら、透は人差し指の先を唇でしゃぶると、指の腹に歯を当て甘噛みをした。そして彼に視線を合わせながら嫣然と、指の付け根に向けて舌を這わせていく。
「んっ……、あぁ」
わざと声を上げちゅ、ぷちゅっ、とはしたなく音を立てつつ、唇を艶めかしく崩し、親指との間をちろちろと舐める。潤んだ眼差しで見つめると、眉根を寄せて耐えるような顔をした伏見に思わず「かわいいね」と婀娜っぽく囁く。押し付けた古着にベルトはつけなかったから、ボタンを寛げ、そのまま膨らんだ彼の欲望に手を伸ばした。
「もう、かたいね? 僕にこっちも可愛がらせて」
「透さんっ」
ぎしりっとベッドが軋み、挑みかかるように起き上がった伏見が今度は透を寝台の上に押し付けてきた。
男らしい美貌が苦し気にこらえる表情を浮かべたのがセクシーで、透の背筋をぞくぞくっと快感が駆け上る。
「煽らないで。優しくするって約束、俺に破らせないで」
「いいよ、おいで。温めて」
立てた膝で彼の高ぶりをゆるゆると緩慢に刺激しながら指先で誘うようにするりと顎を撫ぜ上げたら、獣が飛び掛かるように彼に唇を激しく貪られた。若さと勢いにのまれまいとするが、透はすぐに熱い吐息を漏らし始める。
自分でシャツのボタンを外そうと動かした両手の首を片手で掴まれ、頭の上に戒められた。
「俺にさせて」
こうして組み敷かれるとやはり体格差がすごい。こんな風にされたら身じろぎ一つできそうにない。ぞくっと被虐的な快感が押し寄せ、無意識に赤い舌で唇を湿らせた。
ベルトとシャツのボタンを片手で器用に外されアンダーシャツをたくし上げられれば、もはや欲を隠さない彼の瞳の前に全て晒される。
余裕があるそぶりを見せても自分のペースを乱されるとやはり気恥しい。元彼と付き合っていた最後の方は一方的な奉仕ばかりをさせられた時期もあった。ただ相手を気持ちよくさせれば喜んでもらえるだろうと思っていたが伏見にとっては違う様だ。
どう愛し合うことか正解が分からなくなって、しかし年下相手にされるがままになるのも躊躇われた。
(どうしたら、喜んでもらえる?)
透は途方に暮れた子供のように眉をさげ、ズボンにまで手をかけられたから足をもじつかせる。縋るように伏見を見たら、今度は彼の方が艶っぽい低い声で囁いてきた。
27
お気に入りに追加
374
あなたにおすすめの小説

白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる