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第二部 

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 そんな殺し文句を言われたら、キュンっとするだけじゃすまなくなる。卯乃はぶるっと鳥肌を立てながら唇を噛んで大きな目を零れんばかりに見開いた。

(じゃあ、よそ見なんてするなって命令してよ)

 声がでたらそんな風にねだったかもしれない。
 心の片隅ではやはり、家族が大事、兄さんを失いたくないと思ってる。だけど深森に雁字搦めに縛られたら、そんな迷いは吹き飛ぶと思うのだ。

(オレも……。言いたい。オレだけみて。二人でいるときはサッカーだって忘れちゃうぐらい、オレにもっともっと夢中になって)
 
 甘えん坊で我儘な卯乃は言いたくても言えぬ独占欲を滲ませながら、ちゅっちゅっと深森の形の良い唇に自分のそれを押し当てた。普段立っていると二人は身長差があるから卯乃から思いのまま深森にキスは出来ない。屈んでもらわないと不可能だから、こうして褥に寝転んでいる時が絶好のチャンスだ。
 
(オレは悪いウサちゃんだ。……たまに深森が練習に行かないでオレのとこにずーっと深森がいればいいのにって思うんだ)

 深森は明日大事な試合があるから、本当なら風邪気味の卯乃がキスをしていいはずがない。
 しちゃいけない、だけどしたい。仄暗い欲望に突き動かされる。
 だが深森はくすぐったそうに微笑んで、卯乃のしたいように任せている。
 まるで子どもがじゃれついてくるのをいなす大人のような態度だ。きっと卯乃の体調を慮っての事なのだろうが、卯乃の中でちょっとだけ悪戯心が沸き起こってきた。

「はっ……」
 自分自身が漏らした艶めかしい吐息にスイッチが入る。
 身体が妙に火照る。
 興奮の熱なのか体調不良のそれなのか今は区別がつかない。ただただ深森を求めて身体が自然と動いてしまう。
 深森の身体を仰向けに倒すと、その上にぺったりと身体をくっつけて乗り上げた。

「卯乃?」

 肘をベッドにつき、上からぺろぺろと子猫のような仕草で深森の唇を舐めあげながら、幼いじゃれ合いにすっかりリラックスした深森の隙をつく。卯乃は色ごとの経験が乏しいから、どうしたら相手を夢中にさせられるとかよくわからない。だからすごく即物的にジャージを上から深森の足の間を大きなものを細い指で艶めかしくまさぐった。
 二の腕を掴まれたが艶めかしい笑みを浮かべた卯乃は止まらない。さすり、僅かに力を込めながらもみしだき、竿をなぞる様に摺り上げる。すると掌の中でぐっと質量と形を変えるものが愛おしい。

「っ……」
 
 静止の声を出そうと深森が開いた口に舌を差し入れる。卯乃はあまり舌が長い方じゃないので、頭を浮かしぐぐっと頑張って熱を帯びた舌を差し入れる。厚みのある深森の舌を探って、じゅっと吸いついてから、いつも深森にされているみたいに歯の裏の気持ちいいところまで攻めようとしたら、がばっと頭を離された。

「口ん中、すごく熱い。卯乃お前熱あるだろ。……大人しく寝ろ」

 押し殺した声とは裏腹に、深森の綺麗なグリーンの瞳はギラリと光を帯びる。
 そうだけど、それがなんだというのだ。深森の事が欲しくて堪らない。

(深森だって、オレのこと。犯したいって顔してるじゃん)

 卯乃は言葉の代わりに仕草で深森を煽ろうと試みる。裸の丸い尻で深森の上に座ると、深森のTシャツを両手でグイって押し上げた。割れた腹筋が露わになると舌なめずりして蕩けた視線をむけつつ、自分の裸の胸と陰茎を自分で慰めはじめた。

「んっ……」

 掠れた声が喉の奥から零れる。焼けつくような恋人の視線を感じながら卯乃は長い睫毛を伏せてこねる乳首と先を苛める陰茎がじんじんっと送ってくる繊細な快感に酔いしれる。

「は……、あ……」

 どうしてこんなに興奮してしまっているのか自分でもわからない。
 ただ今この瞬間、深森の視線も意識も執着も何もかも全部自分に向けたくてたまらなかった。
 兄が卯乃に向けた思い以上に熱く強いものをぶつけられて心配も不安も吹き飛ぶほどに気をやるほどに求められてたかった。
「卯乃、ふざけんなよ、お前!」

 
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