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番外編 未明の深森 昼下がりの卯乃

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 耳元で低い声で囁かれたから、それだけで昨日の熱が呼び起こされぴりりっと身体に甘い痺れが走るような心地がした。

「うち、お風呂狭いよ」

 そう言いつつもそのまま黙って脱衣所まで運ばれてしまった。古い作りのこの家は風呂場はリフォームが入っている。それでも男二人で入るには狭すぎる大きさだ。
 ドキドキしながらトレーニング用のシャツを頭から脱ぐ深森を見つめ、脱いだ服に手を伸ばして脱衣籠の中に放り込む。
 バキバキに割れた腹筋の他にも全身いたるところに綺麗な筋肉がついていて、改めてみても彫像みたいな身体だと感心してしまう。

「卯乃、流石にそこまでじっと見られると少し恥ずかしい」

 どこを見られても恥ずかしくないような身体をしている男がそんなことを言うから卯乃の中にちょっとした悪戯心が沸いてしまった。

「どこが恥ずかしいの? 男同士だし、深森はすごくカッコいい身体してるのに」
「男同士だが、好きな奴の前だとドキドキするだろ」
「え……、あっ」

 そんなこと言われたら卯乃だってどぎまぎしてしまう。

「卯乃も脱いで」

 そう命じられたら急にぶわあっと頬が熱くなり、全身に羞恥心が広がってしまった。今もタンクトップに短パンと結構ラフな格好をしているのだが、それでも裸となると話は別だ。
 外で雷鳴が鳴り始めた。

「せ、洗濯もの入れないと」
 
 狭い脱衣所の中で逃げるように深森の横をすり抜けようとした卯乃の細腰を深森に後から腕を伸ばされ、がっちりと止められてしまう。そのまま首筋に唇を押し当てられると、昨晩の名残りでチリチリとした痛みが身体を走る。
 その後も首筋、肩口と何かの後をなぞる無数の口付けに卯乃は前が兆してしまいそうになって口元を覆って足をもじつかせ、快感を逃がそうともがいた。

「逃げんなって。あんな目で見られたらたまんなくなる」
「あ、あんな目って……」
 
 卯乃は後ろから胴に回された逞しく太い腕にしな垂れかかりながら、深森に触れられただけでこんなになってしまう自分の容易さに弱ってしまった。

「エロい目」
「オレそんな目してた? 恥ずかしいよぉ」
「なんで?」
「だって、昨日まで友達だったのに。急にこんな……」
「何をいまさら。それに俺はお前の事、ずっとそういう目で見てたぞ」
「え……」
「えっ、って。鈍感ウサちゃん。お前はずっと、食っちまいたい俺の獲物だ」
 
 後から大きな身体に伸し掛かられながら、顎をすくわれ振り向きざまに口の中を貪るようなキスをされた。
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