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番外編 未明の深森 昼下がりの卯乃
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☆第一部直後の朝と昼のお話です
深森が目を覚ますと古めかしい木目の天井、電気の傘からぶらぶらと揺れる紐が目に入った。夢中で恋人を貪り、眠っていたのは僅かな間だったが、妙に気が満ち満ちている感覚がある。
カーテンに目をやる。空は少しだけ白みかけているようだった。豆電球が変わらずに部屋を照らしている。少しだけ眠ってしまっていたようだ。
続いて懐の当たりにふわふわとした感触に気づく。冷房の効いた部屋の中で隣にいる相手の温みが心地よい。
(そうか俺……。昨日卯乃と……)
知らずに頬が緩んでしまった。きっとチームメイトが見たらだらしないと冷やかされるような表情だったかもしれない。普段ならば浮かれている場合でないなどと、自分を律し、すぐに気を引き締めるところだが、今は浮ついている自分を丸ごと肯定している。とても悪くない気分だ。
なにしろ番になるならこの人と思い定めた相手と恋人同士になったばかりなのだから。これを浮かれるなという方が無理な注文だ。
猫獣人である深森はことさら薄暗い中でも夜目が効く。眠る恋人の穏やかな顔が見たくて上裸のままむくりと布団の上に座った。すると卯乃の薄い肩からは夏掛けが滑り落ちていた。慌てて剥き出しの二の腕に触れると、彼は寒そうにふるふるっと身体を震わせた。
「くしゅっ」
小さな愛らしいくしゃみまで飛び出してしまう。
「風邪ひくなよ」
深森は慌てて自分もまた卯乃の隣に横たわると、卯乃の小さな頭を筋肉の盛り上がる自らの上腕にちょこんと載せた。すると愛しい恋人は深森のぶ厚い胸板にすりよる仕草を見せてきた。
もう一度柔らかい頬を壊れ物を大切に扱うように指の腹でそっと撫ぜる。表情が少し微笑んだように綻ぶ。それだけで胸がぎゅっと絞られるように切なくなった。
(小さいな、卯乃。俺が本気で抱きしめたら、壊れちまいそう)
本来の卯乃は心が健やかで明るく、へこたれない男だ。そう分かっているのに腕の中で眠る彼はとても儚く小さく見えた。
守ってあげたいと、本能が疼く。
「……可愛いな」
昨晩から何度この小さく可愛い囁いただろう。
可愛い、愛してる、好きだ。
何度言っても足りない気がした。愛を囁くたびに卯乃は快感に震え、舌っ足らずになった甘い声で、深森の名を呼び、一生懸命に応えてくれた。
潤んだ瞳、開きっぱなしになった小さな唇。普段の明るく快活な卯乃とはまた違う艶美な表情が見られて、夜目が効くことをこれほどありがたいと思ったことはない。そのたび胸に押し寄せる愛おしさが増し続けて、何度も何度も彼に思いのたけをこの大きな身体全部でぶつけてしまった。
卯乃は最後の方はもう頷くのもやっとで、アスリートである深森に文字通り抱きつぶされてしまったのだ。
深森が目を覚ますと古めかしい木目の天井、電気の傘からぶらぶらと揺れる紐が目に入った。夢中で恋人を貪り、眠っていたのは僅かな間だったが、妙に気が満ち満ちている感覚がある。
カーテンに目をやる。空は少しだけ白みかけているようだった。豆電球が変わらずに部屋を照らしている。少しだけ眠ってしまっていたようだ。
続いて懐の当たりにふわふわとした感触に気づく。冷房の効いた部屋の中で隣にいる相手の温みが心地よい。
(そうか俺……。昨日卯乃と……)
知らずに頬が緩んでしまった。きっとチームメイトが見たらだらしないと冷やかされるような表情だったかもしれない。普段ならば浮かれている場合でないなどと、自分を律し、すぐに気を引き締めるところだが、今は浮ついている自分を丸ごと肯定している。とても悪くない気分だ。
なにしろ番になるならこの人と思い定めた相手と恋人同士になったばかりなのだから。これを浮かれるなという方が無理な注文だ。
猫獣人である深森はことさら薄暗い中でも夜目が効く。眠る恋人の穏やかな顔が見たくて上裸のままむくりと布団の上に座った。すると卯乃の薄い肩からは夏掛けが滑り落ちていた。慌てて剥き出しの二の腕に触れると、彼は寒そうにふるふるっと身体を震わせた。
「くしゅっ」
小さな愛らしいくしゃみまで飛び出してしまう。
「風邪ひくなよ」
深森は慌てて自分もまた卯乃の隣に横たわると、卯乃の小さな頭を筋肉の盛り上がる自らの上腕にちょこんと載せた。すると愛しい恋人は深森のぶ厚い胸板にすりよる仕草を見せてきた。
もう一度柔らかい頬を壊れ物を大切に扱うように指の腹でそっと撫ぜる。表情が少し微笑んだように綻ぶ。それだけで胸がぎゅっと絞られるように切なくなった。
(小さいな、卯乃。俺が本気で抱きしめたら、壊れちまいそう)
本来の卯乃は心が健やかで明るく、へこたれない男だ。そう分かっているのに腕の中で眠る彼はとても儚く小さく見えた。
守ってあげたいと、本能が疼く。
「……可愛いな」
昨晩から何度この小さく可愛い囁いただろう。
可愛い、愛してる、好きだ。
何度言っても足りない気がした。愛を囁くたびに卯乃は快感に震え、舌っ足らずになった甘い声で、深森の名を呼び、一生懸命に応えてくれた。
潤んだ瞳、開きっぱなしになった小さな唇。普段の明るく快活な卯乃とはまた違う艶美な表情が見られて、夜目が効くことをこれほどありがたいと思ったことはない。そのたび胸に押し寄せる愛おしさが増し続けて、何度も何度も彼に思いのたけをこの大きな身体全部でぶつけてしまった。
卯乃は最後の方はもう頷くのもやっとで、アスリートである深森に文字通り抱きつぶされてしまったのだ。
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