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番外編 内緒のバイトとやきもちと
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やっぱり昨日、高校生に告白されたことまでは深森に知られていなかったみたいなのだ。
しらばっくれようにもすぐに顔に出る卯乃の気持ちが深森にバレなかったことはほぼない。
「わあっ」
軒下に吊るされた風鈴が網戸越しに目に入る。素早く畳の上に押し倒されたからだ。
「今日、この後出かけたいなら大人しく白状した方が身のためだぞ」
卯乃の頭の上らへんで両手を押さえつけられ、見下ろしてきた深森の顔は少し怖くて、ゾクゾクするほど格好がいい。綺麗なマスカットグリーンの瞳がまた妖しく揺らめいて光る。
卯乃は負けじと両方の踵を深森の腰に引っ掛けてぎゅうっと足だけで抱きついた。
「じゃあ、キスして「ヤキモチ妬きでごめんね」って可愛く言ったら話してあげる」
「はあ? なんだと!」
「だってヤキモチ妬かれる度にオレ、こんなんじゃ身が持たないもん。可愛く謝ってくれたら、いいよ、オレのこと大好きなんだって思えるもん」
(なんちゃって。クールな深森がどうでるかな?)
ニヨニヨしながら様子を伺っていたら深森が「この、悪ウサギ」と吐き捨ててから片眉を釣り上げてセクシーなオーラを醸し出した。
そのまま柔らかい卯乃の首筋に鼻先を押し付け、汗でしっとりした首筋の赤い痕に更に重なるようにキスをする。
片手が外れたかと思ったら身をゆっくりと起こし、タンクトップをめくられて、上下する胸もとを見下ろされる。イタズラな指先が卯乃の胸に着いた赤い痕をするするとなぞり、ふるふると立ち上がって揺れる胸の赤い飾りの当たりを掠めるように触れもどかしい。
「痛い? ヒリヒリする? 沢山つけちゃったな。俺の、痕」
(た、食べられる)
そう直感的に思うような野性味を帯びた表情で深森は卯乃を見下ろしながら、掴んでいた手を引っ張りあげてその甲に目を閉じてキスをひとつ落としてきた。
「ヤキモチ妬きでごめんな」
キザな仕草も少しだけ弱ったような切なげな声も表情もたまらなく良くて、卯乃は思わず声に出して叫んでしまった。
「カッコよすぎだろおおおお!」
するといつものようなトーンに戻った深森がニヤリと笑う。
「俺は正直に謝ったぞ。洗いざらいはけ。あの店でお前が客から誘われたり、告白されたりした話、全部だ」
「ぜ、全部? 高校の時からバイトしてるからいちいち全部は覚えてないけど」
「……俺はこんな風になるの、嫌なんだけどな。お前にバイトやめて欲しいなんて一瞬でも思ったの、情けない。恋愛とかあんまり興味なかったし、こんな周りが見えなくて狂ったみたいになっちまうの、なんなんだろうな」
「あー。だからさあ。恋は盲目っていうんじゃない?! 昔の人って上手いこと言うよね」
「お前、俺がこんなんなって、怖くないの?」
「えへへ。ぜんぜーん。一番に愛されるの嬉しいよお。 それに深森は身体が大きいから、がるる、にゃおーんってなるから派手なだけで、オレだってもっとマッチョででかかったら大迫力で深森ビビってると思うよ。ちっちゃいから気にならないだけで、オレだって白兎が深森に馴れ馴れしくしてたのすげームカついてたし、サッカーの練習中に深森の所に沢山女の子寄ってくるのも手紙とか渡されるのもモヤモヤしてたよ。……ほんとは、付き合う前から」
(あ。白状しちゃった)
深森ひくかな、と思ったら逆だった。深森は、照れくさそうにふーんって笑って「そっか、付き合う前からか」なんて独り言をいった。
その後自分も畳にごろりんと卯乃の横に寝て上機嫌そうにしっぽをパタパタ振ったから、卯乃は「やっぱ、お前可愛い」とニコニコ笑顔になって、深森のほっぺたに音を立ててキスをした。
しらばっくれようにもすぐに顔に出る卯乃の気持ちが深森にバレなかったことはほぼない。
「わあっ」
軒下に吊るされた風鈴が網戸越しに目に入る。素早く畳の上に押し倒されたからだ。
「今日、この後出かけたいなら大人しく白状した方が身のためだぞ」
卯乃の頭の上らへんで両手を押さえつけられ、見下ろしてきた深森の顔は少し怖くて、ゾクゾクするほど格好がいい。綺麗なマスカットグリーンの瞳がまた妖しく揺らめいて光る。
卯乃は負けじと両方の踵を深森の腰に引っ掛けてぎゅうっと足だけで抱きついた。
「じゃあ、キスして「ヤキモチ妬きでごめんね」って可愛く言ったら話してあげる」
「はあ? なんだと!」
「だってヤキモチ妬かれる度にオレ、こんなんじゃ身が持たないもん。可愛く謝ってくれたら、いいよ、オレのこと大好きなんだって思えるもん」
(なんちゃって。クールな深森がどうでるかな?)
ニヨニヨしながら様子を伺っていたら深森が「この、悪ウサギ」と吐き捨ててから片眉を釣り上げてセクシーなオーラを醸し出した。
そのまま柔らかい卯乃の首筋に鼻先を押し付け、汗でしっとりした首筋の赤い痕に更に重なるようにキスをする。
片手が外れたかと思ったら身をゆっくりと起こし、タンクトップをめくられて、上下する胸もとを見下ろされる。イタズラな指先が卯乃の胸に着いた赤い痕をするするとなぞり、ふるふると立ち上がって揺れる胸の赤い飾りの当たりを掠めるように触れもどかしい。
「痛い? ヒリヒリする? 沢山つけちゃったな。俺の、痕」
(た、食べられる)
そう直感的に思うような野性味を帯びた表情で深森は卯乃を見下ろしながら、掴んでいた手を引っ張りあげてその甲に目を閉じてキスをひとつ落としてきた。
「ヤキモチ妬きでごめんな」
キザな仕草も少しだけ弱ったような切なげな声も表情もたまらなく良くて、卯乃は思わず声に出して叫んでしまった。
「カッコよすぎだろおおおお!」
するといつものようなトーンに戻った深森がニヤリと笑う。
「俺は正直に謝ったぞ。洗いざらいはけ。あの店でお前が客から誘われたり、告白されたりした話、全部だ」
「ぜ、全部? 高校の時からバイトしてるからいちいち全部は覚えてないけど」
「……俺はこんな風になるの、嫌なんだけどな。お前にバイトやめて欲しいなんて一瞬でも思ったの、情けない。恋愛とかあんまり興味なかったし、こんな周りが見えなくて狂ったみたいになっちまうの、なんなんだろうな」
「あー。だからさあ。恋は盲目っていうんじゃない?! 昔の人って上手いこと言うよね」
「お前、俺がこんなんなって、怖くないの?」
「えへへ。ぜんぜーん。一番に愛されるの嬉しいよお。 それに深森は身体が大きいから、がるる、にゃおーんってなるから派手なだけで、オレだってもっとマッチョででかかったら大迫力で深森ビビってると思うよ。ちっちゃいから気にならないだけで、オレだって白兎が深森に馴れ馴れしくしてたのすげームカついてたし、サッカーの練習中に深森の所に沢山女の子寄ってくるのも手紙とか渡されるのもモヤモヤしてたよ。……ほんとは、付き合う前から」
(あ。白状しちゃった)
深森ひくかな、と思ったら逆だった。深森は、照れくさそうにふーんって笑って「そっか、付き合う前からか」なんて独り言をいった。
その後自分も畳にごろりんと卯乃の横に寝て上機嫌そうにしっぽをパタパタ振ったから、卯乃は「やっぱ、お前可愛い」とニコニコ笑顔になって、深森のほっぺたに音を立ててキスをした。
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