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番外編 内緒のバイトとやきもちと

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「うう、腰痛い」」

 再び目覚めたらすっかり日は高く昇っていた。レトロな扇風機の風をうけ、短冊が白ちゃけた風鈴がチリーンとなる。
 タンクトップに短パンで胡座をかき、ちゃぶ台の向かいに座った深森はすまし顔でソーメンをすする。卯乃は胡座をかいた自分の太ももに無数付けられた真っ赤なキスマークを見て、腰をさすりながら恨めしげに呟いた。

「腰だけじゃなくて色々痛いなあ」
「自業自得だろ。お前が乗っかってきたんだから」
「そりゃそうだけどさ。あんなにした後で、日が昇っても離してくれないとは思わないでしょ」
「嫌だったか?」

 食べる手を止めて深森はふざけもせずに尋ねてきた。ニャニャモ似の瞳に見つめられると弱いのだ。

「嫌じゃ、無いけど、今日は午前中からプール行きたかったなあ。買い物もしたかったし」  

 モゴモゴと呟いてから、卯乃はご馳走様、と呟いて麦茶をごくごくと煽る。

「プールか……」

 夏の予定を立てた時、深森は卯乃をプールや海に行くのを嫌がった。なんでなんで?と詰めよったら卯乃の肌を他の男の前に晒したくないという理由だったから呆れてしまった。
 オレも男なのにと言ったけど「そんなモチモチ美肌を晒されたら、どんな奴がよってくるかわからん」と深森は譲らない。
「深森がずーっと一緒にいて、守ってくれるから大丈夫でしょ?」
 なんて甘えて見せたら、ひざ丈のバミューダパンツには織物のパーカーを身に着けてならOKとようやくお許しが出たのだった。せっかくだからと下は同じスポーツメーカーの鮮やかなブルーの水着をお揃いで買った。

「プール行きたかったなあ。折角水着買ったのになあ。深森が変なとこに沢山キスマつけたから、絶対パーカー脱がないって約束できるのになあ」
 ほらみてよ。と胡坐をかいていた太腿を立てて、タンクトップの裾を捲って腹に沢山無数に散った痕を晒す。朝鏡の前で着替えた時、特に乳輪の周りが執拗で赤面してしまった程のあとだ。唇を尖らせたら、さすがに真っ赤な顔になった深森が頭を下げてきた。

(深森の赤面、レア。可愛い)

「分かった。悪かったって。プール……。確かホテルで夜に営業しているプールがあるって熊田が言ってたな」
「やったあ。ナイトプールじゃん! 楽しそう! 行こう! 深森ありがと」
「じゃあ、あいつにどこがいいか聞いてみるか。素麺ご馳走様でした」
「はーい。熊田くんに聞いて、聞いて! 今日天気がいいから夕焼けがみえる時間から行きたいなあ。あ、デザートの西瓜取ってくる」

 深森がスマホをいじり出したので、卯乃はノリノリで立ちあがる。尻尾ふりふり台所に向かいながら、ふと思い出した。

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