甘えんぼウサちゃんの一生のお願い

天埜鳩愛

文字の大きさ
上 下
49 / 99
番外編 内緒のバイトとやきもちと

14

しおりを挟む
 (コースターのこと、聞くまで我慢しなきゃ。これ以上深森と触れ合ったらきっとすぐ何も考えられなくなっちゃう)

「うちの風呂狭いんだから一緒は無理だよ」

 反射的に腕を引き浴室から出ようともがいたら、狭い浴室の中、どんっと壁に身体を押し付けられてしまった。音の反響がすごくて驚いてビクッとしてしまう。
 そのままどこかまだ不機嫌そうな顔を寄せられたので、卯乃は反射的に拒んで深森を睨みつけた。

「やだ」
「逃げんな」

 それが逆に深森の狩猟本能に火をつけたようだ。獲物を見つけたように瞳孔が収縮する。野性みを帯びた凄絶な美貌だ。ゾクゾクと背中を駆け上がるのは恐れからかそれとも性的な興奮なのか。
 卯乃には判断がつかなかった。だが狩られる側の本能を揺さぶられ、ムキになって逃れようと顔を背る。

「お前は俺のもんだろ?」

 荒々しく顎を下からぐいっと掴まれ、噛み付くように唇を奪われた。

「んっ、あっ」

 それはとても、自分本位な口付けで、卯乃は立ち上るシャワーの蒸気も手伝い、息苦しくて涙をこぼす。べろりと口内をまさぐられ、縮こまった舌を無理やり絡められる。筋肉質な胸をばしばしと叩くが深森は許してくれない。

(深森、なんか怖いよお)

 普段は卯乃の心を溶かし高めるだけの口付けをくれる、優しい恋人がどこにもいない。逃れても、執拗に追い牙と舌が追いかけてくる。
 卯乃が勝ち機に逞しい腕に抵抗し爪を立てたら、仕返しとばかりにキスの合間にTシャツをまくりあげられる。そのままがばっと両腕ごと頭の上までたくしあげられてしまった。

「ここで、抱く」

 そう言い放ち牙を見せつけ、唇を舐める仕草がセクシーすぎてゾクゾクする。
 卯乃はされるがままほっそりした腰のライン、白い胸、脇までが丸見えのあられもない姿を晒す。もがいて手を引き抜こうにも水に濡れたTシャツは腕にまとわりついて枷のように卯乃の抵抗を阻むのだ。

「だめ、離して」

 涙目で睨みつけるが、深森に「エロい顔、誘ってんのか?」と欲に濡れ掠れた声で煽られた。
 首筋にキスと噛み跡を残しながら、脇腹から胸までを深森の大きな掌がなぞられる。素肌が粟立つ快感に卯乃は身を震わせた。

「やあっ」
「ヤじゃないだろ?」

 雄みの強い低い声でそう囁かれ、指先で乳首の先を転がされ、弾かれた。その刺激で卯乃は艶かしい吐息を漏らしてしまう。

「こっちのがお前よりずっと正直なのな」

 そう鼻で笑われ、恥ずかしくて頬が熱くなる。日焼けをしていない白い胸に桃色の乳首がピンとたっているのが、自分でもわかってしまった。そればかりか、ズボンの下まで兆しかけていることを深森に嗤われたように感じて泣きたくなった。
 まるで無理やり暴かれることに興奮してこうなっているようで恥ずかしいし、思う通りに動かされているのが悔しい。身を捩ろうとしたがダメだった。

 その隙に緩く紐を結んでいただけのカーゴパンツごと下着をとり攫われた。片足を引き抜か膝を曲げた状態で膝を下からすくうように持たれる。
 深森の少し乱れた吐息が首筋を伝い身震いする。逃れることが出来ぬほど強く脚を捕らえられ、深森は身を屈めるともっちりと白い太腿に唇を押し付けてきた。
 
 「痕つけちゃ、ダメっ」

 
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話

タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。 叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……? エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。

異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。 そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。 そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。 あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。 自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。 エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。 お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!? 無自覚両片思いのほっこりBL。 前半~当て馬女の出現 後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話 予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。 サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。 アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。 完結保証! このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。 ※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

婚約破棄された地味姫令嬢は獣人騎士団のブラッシング係に任命される

安眠にどね
恋愛
 社交界で『地味姫』と嘲笑されている主人公、オルテシア・ケルンベルマは、ある日婚約破棄をされたことによって前世の記憶を取り戻す。  婚約破棄をされた直後、王城内で一匹の虎に出会う。婚約破棄と前世の記憶と取り戻すという二つのショックで呆然としていたオルテシアは、虎の求めるままブラッシングをしていた。その虎は、実は獣人が獣の姿になった状態だったのだ。虎の獣人であるアルディ・ザルミールに気に入られて、オルテシアは獣人が多く所属する第二騎士団のブラッシング係として働くことになり――!? 【第16回恋愛小説大賞 奨励賞受賞。ありがとうございました!】  

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

処理中です...