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第一部
7 癒しのオーラ
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驚かせぬようずっと下の位置から、兎獣人特有の癒しの雰囲気を意識して上目遣いにふんわりと笑う。すると暫し卯乃の顔に見惚れた深森の視線が奪えた。
「ね? いいよね?」
駄目押しのように優しい手つきで落ち着かせるように、深森の首の付け根から後頭部に手を差し入れて柔らかくさすってやった。驚いて目をまん丸くした深森が思わず卯乃の逆の手首を離したが、彼は卯乃の手を払いのけることはしなかった。
もしかしたらそんな気力もなかったのかもしれないが、許されている気持ちになり、ひとしきり愛猫が好んでいたような場所を柔らかくさすってやると、しばらくして聞き間違えでなければ『ぐるるっ』っと瞳を瞑った深森の喉が鳴った。
(猫獣人って、おっきな猫ちゃんみたいだな)
自分自身『うさぎのぬいぐるみみたい』と他の獣人からよしよしされたり、抱っこをされかかったりすることがよくある卯乃だ。常々兎は可愛いと思われがちで、軽んじられがちで、思春期真っ盛りの頃は憤っていたころもあった。だが今では『種族の特性』ということで、ここぞという時大事に思う人には、心地よく思える雰囲気をふりまけるならそれも悪くないと思うまでになった。
大学で先輩にしつこくされてから辟易して、色々勘違いされることはやめておこうと思っていたが、それを解禁してでも彼を助けたい。
(深森が警戒心をといてくれるのなら、いくらでもよしよししたい。俺は、身体はこいつより小さいけど、弱っている人を受け入れる心の度量の広さは負けない自信がある。何も恥じ入ることはない。それにしても手触りまでミャニャモに似てるなんて、好みすぎる、この男)
名残惜し気にふわふわと柔らかな髪の感触を楽しんでから卯乃は再び立ち上がった。心なしか、顔を上げた深森の瞳から警戒心が薄れ、縋るような眼差しにとって代わっている気がした。
(綺麗な澄んだ目。そうだよね。身体は大きくたって、この人も俺と同じ。進学したて、成人したて、故郷を離れてここに来たて)
そう思ったら、この偉丈夫が可愛くて仕方なくなった。
「ここで待っててね」
卯乃は自慢の俊足を生かして購買まで経口補水液を買ってくると、深森に強引に飲ませてやった。水分を口に入れたら大分気分がよくなったのか、途端に素直になって深森は謝ってきた。
「すまん……、痛かっただろ。腕に痕が付いてる」
先ほど掴まれた手首が赤くなっていたのを、深森は卯乃の手を下からやんわりと握って僅かにうなだれた。別のペットボトルを握らせてやっていたから、その手は冷たくなっていてひんやりと心地よく決して不快ではなかった。
「ね? いいよね?」
駄目押しのように優しい手つきで落ち着かせるように、深森の首の付け根から後頭部に手を差し入れて柔らかくさすってやった。驚いて目をまん丸くした深森が思わず卯乃の逆の手首を離したが、彼は卯乃の手を払いのけることはしなかった。
もしかしたらそんな気力もなかったのかもしれないが、許されている気持ちになり、ひとしきり愛猫が好んでいたような場所を柔らかくさすってやると、しばらくして聞き間違えでなければ『ぐるるっ』っと瞳を瞑った深森の喉が鳴った。
(猫獣人って、おっきな猫ちゃんみたいだな)
自分自身『うさぎのぬいぐるみみたい』と他の獣人からよしよしされたり、抱っこをされかかったりすることがよくある卯乃だ。常々兎は可愛いと思われがちで、軽んじられがちで、思春期真っ盛りの頃は憤っていたころもあった。だが今では『種族の特性』ということで、ここぞという時大事に思う人には、心地よく思える雰囲気をふりまけるならそれも悪くないと思うまでになった。
大学で先輩にしつこくされてから辟易して、色々勘違いされることはやめておこうと思っていたが、それを解禁してでも彼を助けたい。
(深森が警戒心をといてくれるのなら、いくらでもよしよししたい。俺は、身体はこいつより小さいけど、弱っている人を受け入れる心の度量の広さは負けない自信がある。何も恥じ入ることはない。それにしても手触りまでミャニャモに似てるなんて、好みすぎる、この男)
名残惜し気にふわふわと柔らかな髪の感触を楽しんでから卯乃は再び立ち上がった。心なしか、顔を上げた深森の瞳から警戒心が薄れ、縋るような眼差しにとって代わっている気がした。
(綺麗な澄んだ目。そうだよね。身体は大きくたって、この人も俺と同じ。進学したて、成人したて、故郷を離れてここに来たて)
そう思ったら、この偉丈夫が可愛くて仕方なくなった。
「ここで待っててね」
卯乃は自慢の俊足を生かして購買まで経口補水液を買ってくると、深森に強引に飲ませてやった。水分を口に入れたら大分気分がよくなったのか、途端に素直になって深森は謝ってきた。
「すまん……、痛かっただろ。腕に痕が付いてる」
先ほど掴まれた手首が赤くなっていたのを、深森は卯乃の手を下からやんわりと握って僅かにうなだれた。別のペットボトルを握らせてやっていたから、その手は冷たくなっていてひんやりと心地よく決して不快ではなかった。
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