仔犬のキス 狼の口付け ~遅発性オメガは義弟に執心される~

天埜鳩愛

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夏祭りの思い出

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「あんっ」

(変な声だしちゃった……)

 胸先に走る甘い疼きをと自分でも思いがけぬほど悩まし気な声を上げてしまう。

「ふふっ」
「なにすんだよ」
 
 嬉しそうに笑われたので睨みつけたら、悪戯を咎められたワンコのような甘い目線が柚希を覗きこんできた。その表情はもしも和哉が柚希になぞ興味がなく女と浮名を流しならばとんでもない色事師になったであろうという艶めいたもので、その、端正な美貌の中で琥珀色に光る瞳が柚希を捉えて離さない。

「柚希は綺麗だよ。綺麗というか……。いやらしい身体すぎて、もう誰にも見せたくない。今年も子どもたちのプールは僕が連れていくからね? 柚希はお留守番」
「なに、それ、んっ……」

 再び寄せられた唇は、軽い音を立てて離れていくから物足りなくて、逞しく太い腕を掴むと再び柔やわと口づけられて、再び抵抗する気持ちがゆっくりと薄れていく。離された唇が耳に付くほどの距離で当てられ、ここ数年より深みと低さが増した声で囁かれる。

「柚希はどこもかしこも、触れるとすごく滑らかで気持ちいいよ」

 いいしな、後ろに回された背中から腰、臀部まで大きな掌でいやらしく撫で上げられて、柚希は細い腰をびくんっとしならせた。そのまま片腕で抱き寄せられ、先ほど髪をかき上げ露わになった、額にちゅっと口づけられる。
 
「くすぐったい!」
「子どもの頃から誰にも咎められずにこんなふうに柚希に触れたかったから、今こうしているのが、夢みたいだよ」
 「お前、あの頃はワンちゃんみたいに可愛かったのに……。そんなこと、ああっ、……考えてたの?」

  和哉の硬い指先で胸への刺激を断続的に柔らかく、繰り返されるがもっとも愉悦を生み出す乳首の先へはわざと反らされ、柚希の欲を煽ろうとしてくる。それはそれで辛くて、涙が目の端に溜まって喘いだ。

「それに子どもたちが生まれてから……。ここがさ」
「んっ! やめ……」

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