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夏祭りの思い出
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浴室に入った後もすぐにシャワーを浴びるでもなく、情欲混じりの熱い眼差しを向けてくる和哉に、柚希は半起ちの自らを隠したくて長い脚を交差しもじつかせた。だがまた急に情けない気持ちになって、泣いて泣いて落ち着かない時の息子の蜜希ぐらい唇を戦慄かせてぷいっと視線を外す。
和哉はそんな柚希の姿をみて、いますぐどうにかしてやりたいという愛欲と、純粋な愛情の籠った複雑な目線でなお見下ろしてくるが、 柚希の方は二人きりで向かい合ってしまったら、余計に恥ずかしさがましてたまらなくなった。
「そんな、じっとみるな……」
「どうして?」
日暮れ後の路上とは違い、炯炯と互いの素肌が晒される明るいバスルームで、柚希は腕組みして我が身をそっと隠しつつ、欲に流されかけた気持ちが少しだけ我に返った。
「和哉はいいよな……。身体見られたって恥ずかしくないだろ」
和哉は二十代半ばを過ぎてなお、学生時代と同じぐらいに引き締まり、いやそれ以上にがっしりと筋肉の厚みの増した身体は彫刻の様に美しい。真夏の今はビジネスカジュアルで通勤しているがここぞという時の三つ揃いのスーツ姿なぞ、男目線でも見蕩れるほどの美丈夫だ。平日は夜、土日も早朝から起き出して走ったり子供らと積極的に公園に遊びに行ってくれたりしているからかもしれないが、それにしてもその程度でもこの体型をキープできるのは恵まれた体格過ぎると羨ましくなる。
それに引き換え、柚希はバスケ部現役時代の細マッチョはどこへやら。子どもを産んでからΩらしい身体の丸みがでてきてしまって、腰はほっそりしているがなんとなく筋肉がつきにくくお腹の辺りも白く円やかな雰囲気になってしまった。和哉は褒めやして隣に寝ている時など腹を撫ぜてくるが、柚希としてはいたたまれない。本当はジムにでも通いたいが子育てと仕事に追われ日々をこなすことで精一杯。そんな時間がとれるはずもなく、思い描いていたバキバキの腹筋は夢のまた夢といったところだ。
「柚希」
和哉が何か言いかけたというのに、柚希は素早く腕を伸ばすと当てつけのようにシャワーヘッドを手に取ってじゃばじゃばとわざと彼の顔目掛けてお湯をかけてしまう。
「こら、やめろって」
和哉は色気滴る仕草で濡らされた髪をかき上げながらゆっくりと柚希からシャワーヘッドを取り上げた。そのまま子どもたちと風呂に入る時には低い位置で固定してるシャワーヘッドを高々と支柱に固定する。
柚希も頭上から降り注ぐ湯を浴びたあと、両手ですくって顔をごしごしとわざと乱暴に拭って汗を流していたら、胸元を甘い芳香を漂わせる石鹸を纏った大きな掌がぬるり、と正面から掠めていった。
和哉はそんな柚希の姿をみて、いますぐどうにかしてやりたいという愛欲と、純粋な愛情の籠った複雑な目線でなお見下ろしてくるが、 柚希の方は二人きりで向かい合ってしまったら、余計に恥ずかしさがましてたまらなくなった。
「そんな、じっとみるな……」
「どうして?」
日暮れ後の路上とは違い、炯炯と互いの素肌が晒される明るいバスルームで、柚希は腕組みして我が身をそっと隠しつつ、欲に流されかけた気持ちが少しだけ我に返った。
「和哉はいいよな……。身体見られたって恥ずかしくないだろ」
和哉は二十代半ばを過ぎてなお、学生時代と同じぐらいに引き締まり、いやそれ以上にがっしりと筋肉の厚みの増した身体は彫刻の様に美しい。真夏の今はビジネスカジュアルで通勤しているがここぞという時の三つ揃いのスーツ姿なぞ、男目線でも見蕩れるほどの美丈夫だ。平日は夜、土日も早朝から起き出して走ったり子供らと積極的に公園に遊びに行ってくれたりしているからかもしれないが、それにしてもその程度でもこの体型をキープできるのは恵まれた体格過ぎると羨ましくなる。
それに引き換え、柚希はバスケ部現役時代の細マッチョはどこへやら。子どもを産んでからΩらしい身体の丸みがでてきてしまって、腰はほっそりしているがなんとなく筋肉がつきにくくお腹の辺りも白く円やかな雰囲気になってしまった。和哉は褒めやして隣に寝ている時など腹を撫ぜてくるが、柚希としてはいたたまれない。本当はジムにでも通いたいが子育てと仕事に追われ日々をこなすことで精一杯。そんな時間がとれるはずもなく、思い描いていたバキバキの腹筋は夢のまた夢といったところだ。
「柚希」
和哉が何か言いかけたというのに、柚希は素早く腕を伸ばすと当てつけのようにシャワーヘッドを手に取ってじゃばじゃばとわざと彼の顔目掛けてお湯をかけてしまう。
「こら、やめろって」
和哉は色気滴る仕草で濡らされた髪をかき上げながらゆっくりと柚希からシャワーヘッドを取り上げた。そのまま子どもたちと風呂に入る時には低い位置で固定してるシャワーヘッドを高々と支柱に固定する。
柚希も頭上から降り注ぐ湯を浴びたあと、両手ですくって顔をごしごしとわざと乱暴に拭って汗を流していたら、胸元を甘い芳香を漂わせる石鹸を纏った大きな掌がぬるり、と正面から掠めていった。
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