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夏祭りの思い出
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「二人で夜に出歩くなんで久しぶりだね」
「うん……」
柚希を気遣い、和哉は『牛串とじゃがバタ食べない?』など声をかけたが柚希は憂い顔のまま、すっかり疲れた様子でとぼとぼと歩いている。
和哉は鞄のベルトを逆側にかけなおすと、柚希の指輪をした方の手をぎゅっと掴むようにして繋ぎ止めた。
(恥ずかしがるかな……)
子どもたちを両側にしてその手を掴んでいることが多い柚希。和哉が最初に惚れこんだ嫋やかなその手を今日は久しぶりに和哉が独り占めできる。
それだけで和哉は仕事場からこの熱帯夜に文字通り駆けつけてきた気怠さなど吹き飛ぶ思いだった。
しかしすぐに握った手が全体的に少し痩せたように感じる。
「また痩せちゃったな……。柚希、ごめんね」
「そんなことないよ。大丈夫。和哉こそ、疲れてるよね? おかえりなさい」
ドーナツ屋の仕事はとにかく重労働でもあるし、この時期の柚希は普段の時期より痩せがちだ。柚希は頑張り屋なので安易に「大丈夫」を繰り返すから全くあてにできない。が、頑固でもある。
(柚希が喜ぶことしてあげたいけど……)
心のケア、身体のケア。どちらを優先すべきがまよって、その上愛する柚希との二人っきりに慣れたチャンスも逃したくなくて、和哉はその気持ちを全て込めるつもりでこう提案した。
「柚希。たまには二人でデートしない?」
昭和の雰囲気漂う今あるとも限らないような古い商店名が書かれたような提灯の下、柚希は少し潤んだように見える黒目がちな大きな瞳で和哉を捉えて柔らかく微笑んできた。少し甘えているような視線に堪らなく胸を擽られる。
「デート?」
「この後だと、そうだね。桜亭さんでちょっと食事してお酒飲んで帰るとか、そのくらいだけど」
いつも仕事に育児にと忙しい柚希。勿論土日中心に買い出しや作り置き、洗濯に片付づけと和哉も柚希と共に子育てを奮闘しているところだった。先週から和哉が家に帰るのが遅い日が続いていたから、幾ら頑張り屋の柚希でも早朝の仕事からの夜まで元気な息子たちに突き合って出歩いたのは疲れたのだろう。労うつもりでそう提案したつもりだが、なにより和哉自身、たまには柚希と番同士他に水入らずの時間を過ごしたいと思ってしまったのだ。
柚希は少しだけ思索したように眼差しを色っぽく揺らめかせて、だが和哉の手をきゅっと握り返して小首をかしげた。
「うん。いいね……。でも、ちょっと疲れちゃったかも」
「うん……」
柚希を気遣い、和哉は『牛串とじゃがバタ食べない?』など声をかけたが柚希は憂い顔のまま、すっかり疲れた様子でとぼとぼと歩いている。
和哉は鞄のベルトを逆側にかけなおすと、柚希の指輪をした方の手をぎゅっと掴むようにして繋ぎ止めた。
(恥ずかしがるかな……)
子どもたちを両側にしてその手を掴んでいることが多い柚希。和哉が最初に惚れこんだ嫋やかなその手を今日は久しぶりに和哉が独り占めできる。
それだけで和哉は仕事場からこの熱帯夜に文字通り駆けつけてきた気怠さなど吹き飛ぶ思いだった。
しかしすぐに握った手が全体的に少し痩せたように感じる。
「また痩せちゃったな……。柚希、ごめんね」
「そんなことないよ。大丈夫。和哉こそ、疲れてるよね? おかえりなさい」
ドーナツ屋の仕事はとにかく重労働でもあるし、この時期の柚希は普段の時期より痩せがちだ。柚希は頑張り屋なので安易に「大丈夫」を繰り返すから全くあてにできない。が、頑固でもある。
(柚希が喜ぶことしてあげたいけど……)
心のケア、身体のケア。どちらを優先すべきがまよって、その上愛する柚希との二人っきりに慣れたチャンスも逃したくなくて、和哉はその気持ちを全て込めるつもりでこう提案した。
「柚希。たまには二人でデートしない?」
昭和の雰囲気漂う今あるとも限らないような古い商店名が書かれたような提灯の下、柚希は少し潤んだように見える黒目がちな大きな瞳で和哉を捉えて柔らかく微笑んできた。少し甘えているような視線に堪らなく胸を擽られる。
「デート?」
「この後だと、そうだね。桜亭さんでちょっと食事してお酒飲んで帰るとか、そのくらいだけど」
いつも仕事に育児にと忙しい柚希。勿論土日中心に買い出しや作り置き、洗濯に片付づけと和哉も柚希と共に子育てを奮闘しているところだった。先週から和哉が家に帰るのが遅い日が続いていたから、幾ら頑張り屋の柚希でも早朝の仕事からの夜まで元気な息子たちに突き合って出歩いたのは疲れたのだろう。労うつもりでそう提案したつもりだが、なにより和哉自身、たまには柚希と番同士他に水入らずの時間を過ごしたいと思ってしまったのだ。
柚希は少しだけ思索したように眼差しを色っぽく揺らめかせて、だが和哉の手をきゅっと握り返して小首をかしげた。
「うん。いいね……。でも、ちょっと疲れちゃったかも」
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